“予算優先”のノートPC選びは危険? 「処理が重い」の真犯人:失敗しないノートPCの選び方【前編】
ノートPCを調達する際、重視すべき基準はハードウェアのスペックではなくソフトウェアだ。裏で動くツールやWebアプリケーションが、システムに深刻な負荷をかけている可能性がある。快適な稼働に必要な条件とは。
PCの調達に際して、「もっと安いモデルで十分だろう」という経営層の圧力に屈して最低スペックのPCを導入すれば、いずれ「Web会議が落ちる」「動作が重い」といった現場からのクレーム対応に追われることになる。
業務用のノートPCを選ぶ際は、処理性能、セキュリティ、将来必要になるソフトウェア、予算の制約をてんびんにかける必要がある。大半の企業にとって、ノートPC調達の指針となる最も重要な要素はソフトウェアだ。ハードウェアが満たすべき性能やセキュリティの要件は、企業が使用するアプリケーションによって決まる。
なぜソフトウェアがハードウェアの選択を左右するのか。それは、たいていのアプリケーションがCPUやGPU(グラフィックス処理装置)、メモリ、ストレージ、ネットワーク機能といった各コンポーネントに負荷をかけるからだ。
経営層の根拠のない予算削減要求を論理的に跳ねのけ、実務に耐え得るPCを確保するには、「何にどれだけのコンピューティングリソースを奪われているか」を可視化することが欠かせない。本稿は、自社が導入しているツール群が要求するシステム負荷を客観的に導き出すための要件と検討事項を紹介する。
予算よりも優先すべき4つの要件
現代のアプリケーションは、一昔前のソフトウェアとは全く異なる性能をハードウェアに要求する。PCなどのエンドポイントとクラウドサービスにまたがってタスクを処理することは一般的だ。AI(人工知能)技術を搭載したツールに至っては、デバイスでのローカル処理とリモートのコンピューティング性能の両方に依存するようになりつつある。
ノートPCの選択を左右するソフトウェア要件を以下に挙げる。
1.最小要件
一部の業務アプリケーションは、効果的に機能するために満たさなければならない最小要件を課している。例としては以下の通りだ。
- 専門的な設計/開発ツールや分析ツールは、強力なCPUまたはGPUと十分なメモリを必要とする
- 1台のPC上で複数のOSを同時に動かす仮想マシン(VM)は、大量のコンピューティングリソースを消費する
- デバイスで実行するAI関連処理は、NPU(ニューラル処理ユニット)やGPUなどのプロセッサを必要とする
2.セキュリティツールとエージェントソフトウェア
EDR(エンドポイント脅威検知・対処)ツールやディスク暗号化ツールといったセキュリティツールは、エンドユーザーの目に見えないバックグラウンドで動作する。エンドユーザーが気付かないうちにメモリやCPUを消費し、システムの負荷を増大させることは珍しくない。
3.クラウドサービスとコラボレーションツール
業務を支えるSaaS(Software as a Service)やWeb会議ツールなどのクラウドサービスツールは、かつてないほど普及している。
- 「Zoom Workplace」「Microsoft Teams」「Cisco Webex」などのWeb会議ツールやコラボレーションツール、クラウド型オフィススイートは、CPU、メモリ、ネットワークの各コンポーネントに負荷をかける
- Web会議ツールは特にテレワーカーには不可欠なものであり、これらを遅延なく安定して動作させる処理能力が重要になる
- Webブラウザで稼働するアプリケーションは、メモリやネットワーク帯域幅(通信路容量)を消費する。複数のタブを開いていると処理性能に著しい影響を与え、音声や動画の品質を低下させる恐れがある
4.自社開発/カスタムアプリケーション
自社開発したアプリケーションやカスタムアプリケーションは、さらなる課題をもたらす可能性がある。特定のハードウェア向けに最適化されていない場合がある上に、ハードウェア最小要件を定義することは難しい。
ノートPC調達の検討事項
現代のアプリケーションの進化は目覚ましい。クラウド型の業務アプリケーションだけではなく、自動化エージェントやセキュリティエージェントなどのバックグラウンドで常駐するツールの普及によって、企業向けハードウェアに求められる要件は格段に高まっている。デバイスがローカルで処理するAI関連処理に関して言えば、今後ハードウェアに求められる要求スペックはさらに跳ね上がっていくだろう。
以下の検討事項を、ノートPCの選定と導入の指針として役立ててほしい。
- 運用上の検討事項
- 社内の運用ポリシーや規定
- 利用中のツール
- リモートアクセスの有無
- 技術要件
- SaaSを快適に利用するための処理性能
- コラボレーションツールを安定稼働させるための処理性能
- 業務アプリケーションの指定要件
- 複数のVMを同時に実行するための処理性能
- AI関連処理の実行に必要な性能
- インフラの検討事項
- ハードウェアのライフサイクル
- セキュリティおよびコンプライアンス要件
その他の検討事項
ほとんどの企業は、保守やアップデート、トラブルシューティングを簡素化するために、全社で利用するシステム構成を標準化している。こうした選択は、特殊なハードウェアを動かすためのドライバの有無や自動アップデートの仕組み、MDM(モバイルデバイス管理)やUEM(統合エンドポイント管理)ツールとの互換性に大きく左右される。停止すると企業活動に致命的な影響を及ぼすミッションクリティカルなアプリケーションは、特定のプロセッサやシステムでのみ動作が公式に保証されているケースがある。関連するハードウェアを選ぶ際はこうした指定要件を必ず満たさなければならない。
大半のITハードウェア刷新ポリシーでは、ノートPCのライフサイクルを3〜5年と規定している。このスケジュールは通常、保証期間や関連するソフトウェアの保守期間と一致する。4年目前後でノートPCをリプレースすれば、無駄な費用を抑えつつ、機器の故障リスクや保守の手間を最小化しやすい。セキュリティ、プロセッサ、ネットワーク機能に関するハードウェアの技術革新も、このタイミングでの買い替えを促す強力な動機になる。
使用中のOSも要件に関わる。企業は管理の都合上、従業員に支給するPCのOSを特定のものに絞り込んでいる。「Windows」が圧倒的に普及しているが、開発者やエンジニアにとっては、「Ubuntu」「Rocky Linux」といった「Linux」のディストリビューションや、Googleが提供する「ChromeOS」も重要だ。Appleの「macOS」も独自の市場シェアを保っており、一部の利用者から根強い支持を集めている。
次回は、業務に応じたノートPCの条件を、要件ごとに解説する。
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