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AIが書いた「意図しないコード」が生むデバッグ地獄 今すぐ実践できる防衛策7割が不満を抱えるAIコーディングの現実

AIコーディングツールを利用するエンジニアの約9割が生産性向上を実感している一方で、約7割が「意図しないコード生成」などの課題を抱えている。技術的負債を回避し、AIを“飼いならす”ための戦略を探る。

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 開発現場において、AI(人工知能)技術による業務効率化は避けて通れないテーマだ。AIツールの活用でコーディングの自動化が進む中、エンジニアはただ恩恵を受けているだけではない。

 IT人材事業を展開するキッカケクリエイションは、2025年11月14日から11月17日にかけて、業務でAIコーディングアシスタントツールを利用しているITエンジニア437人を対象に、利用実態調査を実施した。

 調査では、対象者全体の約9割に当たるエンジニアがツールの利用によって業務の生産性が向上したと回答した。一方で、手放しで喜べる状況ではないことも浮き彫りになった。生産性の向上を実感する裏で、回答者の約7割がツールの使用に対して何らかの課題や不満を感じている実態が明らかになった。

 導入すれば即座に効果が出る「魔法のつえ」とは言い切れないAIコーディングツール。現場のエンジニアは、具体的にどのような壁にぶつかり、それをどう乗り越えようとしているのか。本稿は、調査データから見えてきたリアルな課題と、エンジニアが実践する独自の工夫を深掘りする。

AIが生み出す新たな技術的負債「意図しないコード」

 調査によると、業務でAIコーディングアシスタントツールを「1種類のみ」利用しているエンジニアは29.7%にとどまる。最も多いのは「2種類」を併用する層で39.8%を占め、3種類以上のツールを利用する回答者を含めると、6割以上のエンジニアが複数のツールを業務に取り入れていることが分かった。

 業務で最も利用されているツールは「GitHub Copilot」が44.2%で首位となり、次いで「Codex」が26.5%、「Gemini CLI」(「Gemini Code Assist」を含む)が23.8%と続く。ツールを選定する際に重視する要素としては、「ソースコードの補完、生成の精度」が46.2%で最も多く、「処理速度、レスポンスの速さ」(39.1%)、「思考整理やアーキテクチャ設計の支援力」(31.8%)が上位に並んだ。

 ツールを導入したことで業務の生産性が向上したかどうかという問いに対しては、回答者の33.4%が「非常にそう思う」、52.6%が「ややそう思う」と答え、合計86.0%が生産性の向上を実感している。具体的な恩恵としては、「コーディング時間が短縮された」(56.6%)、「デバッグ作業が効率化された」(43.9%)、「定型的なソースコード記述の手間が減った」(34.8%)といった業務プロセスの改善が挙げられた。

 しかし、これらの恩恵の裏には無視できない課題が存在する。ツールの使用上で課題や不満を「非常に感じる」(20.4%)、「やや感じる」(46.7%)と回答した割合は合計で67.1%に上る。

 不満を感じるエンジニアが直面している最も大きな問題は、「意図しないソースコードが生成されることがある」(54.9%)ことだ。「ソースコードの提案精度が低いことがある」(37.2%)、「セキュリティやライセンスの懸念がある」(34.1%)といった不満も顕在化している。AIコーディングアシスタントツールが生成するソースコードの質やコンテキストの理解不足が、かえってエンジニアの手間を増やす要因になっていることがうかがえる。

 こうした課題に対し、現場のエンジニアは「ツールの使い分け」で対処している。複数のツールを利用している回答者のうち、86.8%がタスクや状況に応じてツールを使い分けていると回答した(「明確に使い分けている」26.1%、「ある程度使い分けている」60.7%の合計)。

 使い分けの基準として最も多いのは「言語やフレームワークで使い分ける」が52.1%で、「複雑な実装か単純な実装かで使い分ける」(39.4%)、「ソースコードの補完か生成かで使い分ける」(34.3%)と続く。実装の難易度や目的によって、各ツールの得意分野を引き出す工夫がなされている。

 自由回答では、現場の具体的な試行錯誤が語られている。「モジュール1つが長くなるとAIの答えの精査も面倒になる。それを避けるために、自分もなるべくモジュールを最小化する工夫をしている」など、AIコーディングアシスタントツールが処理しやすいように、人がタスクを細分化するアプローチが見られる。

 「ツールAで思うようなソースコードがなかなか出力されずに時間がかかるときに、セカンドオピニオンとしてツールBを使うとスムーズに進められることがある」という意見もある。単一のツールに依存せず、複数の出力結果を比較検討することで、精度の低さや意図しないソースコード生成といった弱点を補っている。

 AIコーディングアシスタントツールは、開発の生産性を飛躍的に高める強力な武器であることは間違いない。しかし、一見万能に見えるツールも、現段階では人の意図を完全にくみ取れるわけではない。単にツールを導入するだけでは、低品質なソースコードの修正や意図しない動作のデバッグに追われ、期待したほどの効果を得られない可能性がある。

 今後は、AIコーディングアシスタントツールが出力するコードの良しあしを見極めるプログラミングスキルはもちろん、各ツールの特性を理解し、場面に応じて最適なツールを選択、あるいは組み合わせて利用する能力がエンジニアに求められる。AIツールを「頼れるアシスタント」として使いこなすためのリテラシー向上こそが、開発現場を救う原動力になるはずだ。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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