無料で“AI搭載Slack”提供、Salesforceが狙う「脱・画面切り替え」の劇的効果:追加費用なしで利用可能に
業務システムとコミュニケーションツールの分断は、情報過多や連絡漏れを招く。Salesforceのユーザー企業は、顧客データやAI機能があらかじめ組み込まれたSlackを無料で利用可能になった。その詳細は。
企業において、営業やサービス担当者が複数の業務システムを切り替える際に時間や文脈を失うという課題がある。CRM(顧客関係管理)サービス「Salesforce」を提供するセールスフォース・ジャパンは2026年5月12日、この課題を解決するため、全ての新規顧客に追加費用なしでチャットツール「Slack」を標準提供すると発表した。
2026年5月15日から、新規のSalesforceユーザーには無料のSlackワークスペース(共有作業を実施するメンバーが集まるスペース)が自動的に提供される。2026年夏以降には、新しいSalesforceインスタンスの作成と同時にワークスペースが自動生成される仕組みになる見込みだ。すでにSalesforceを利用している企業の場合は、管理設定からSlackを接続する操作を実行することで利用を開始できる。
これによって、セットアップ不要でSlackから顧客データの閲覧や更新が可能になる。この状態のSlackを導入したSalesforce社での実績では、サービスケース(顧客からの問い合わせ)の解決速度が2倍に向上し、営業担当者の応答速度が21%改善した。タブ切り替えなどの非効率を削減することで、週当たり最大20時間の業務時間を節約し、ユーザー満足度は96%に達したという。手作業によるデータ入力を不要にし、営業活動を劇的に効率化する独自のAI機能とは何か。
AIとデータが融合する新型Slack
併せて読みたいお薦め記事
さまざまな業務効率化
標準提供されるSlackのワークスペース内では、AIチームメイトとして機能する「Slackbot」が中核的な役割を果たす。ユーザーは作業画面を離れることなく、自然な会話を通じてSalesforceのレコードを呼び出し、業務を進められる。2026年5月中旬からは、音声メモによる通話記録の作成、商談の更新、会議前のアカウント調査、サービスケースの自動割り当てといったCRM連携アクションが順次展開される。
複数システムにまたがる複雑な操作を自動化し、再利用可能な形で構築・共有できるワークフロー機能「Slackbot Skills」(スキル)も導入される。営業の商談要約、マーケティングキャンペーンの概要作成、法務の契約確認など、導入初日から利用可能な標準スキルが用意されており、スケジュール設定による自律的な動作も可能だ。
新機能「Today」ビューは、接続された各種アプリケーションから優先事項やカレンダー、緊急度の高いタスクを集約し、毎日のブリーフィングとして提示する。これによってエンドユーザーは複数のタブを行き来することなく、重要な業務に集中できる。すでに同機能を先行導入しているXeroやWayfairなどのユーザー企業における初期結果では、AI機能が提案するアクションは97%の精度を達成し、重要として提示されたメッセージの88%が有効であることを確認済みだ。
新設される「Activity」タブは、従来の返信やメンション中心のフィードを進化させ、自分に関連する全ての情報を1カ所で確認できる機能だ。顧客データや商談ごとにひも付いた専用の連絡スペースである「Salesforceチャンネル」に絞り込むことで、アカウントや商談、顧客に関する会話を素早く把握できるようにする。
再設計された「Thinking Steps」(思考ステップ)ビューは、AI機能の推論過程や判断根拠をリアルタイムで追跡可能だ。大容量のPDFファイルや複雑な表、画像を含むドキュメントを読み込んだり、契約書の要約や価格条件を自動で抽出したりすることも可能だ。
Salesforce社のSlack担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネジャーを務めるロブ・シーマン氏は、今回の連携によって、AI機能の効果をユーザー企業の従業員が日常業務で享受できるようになるとの見解を示した。日常的なチャットツールであるSlackを窓口にすることで、SalesforceのAI機能やデータシステムが広く活用され、業務効率化を支援するという。
Slackの無料プラン(フリー)および有料の「プロ」プラン向けには、2026年5月12日以降数週間にわたって上記のAI機能の試用版が提供される。フル機能を利用するには「Business+」または「Enterprise+」プランへのアップグレードが必要だ。
Salesforce社は今後、Slackbotと外部ツールやAIエージェントとの接続を順次拡大し、広範な業務を一元的に処理できるシステムへの拡張を計画している。日常的な会話ツール上で業務データとAI機能が連携することにより、分断されていた複数システムの利用を集約し、さらなる業務効率化を進める狙いだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。