情シスの9割が直面する経理との摩擦 DXを阻む「Excel至上主義」の実態:新システムへの移行はなぜ進まないのか
企業のDX推進において、情報システム部門の約9割が経理部門との連携に難しさを感じている。新ツールの導入を阻む背景には、現場の「Excel至上主義」や強い抵抗感が存在するという。この障壁を乗り越えるには。
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、部門間の連携は避けては通れない。中でも、ITインフラの構築と運用を担う情報システム部門と、企業の実績や資金の流れを正確に管理する経理部門の協働は、バックオフィス業務全体の効率化において重要な意味を持つ。しかし、システム導入を進める現場においては、両者の間に見えない「壁」が存在しているのが実情だ。
経理担当者向けメディア「請求ABC」を運営するインボイスは、企業の情報システム部門の視点から見た経理部門の実態や課題を整理した調査レポートを発表した。本調査は、企業に勤務する情報システム部門やバックオフィスなどの担当者221人を対象に、2026年1月23日から1月26日にかけて実施された。
同調査によると、経理部門と連携してプロジェクトを進める中で「壁」や「やりづらさ」を感じたことがあるかという問いに対し、「よくある」と「時々ある」を合わせて約9割の担当者が、何らかの難しさを感じていると回答した。全社的なシステム導入や業務プロセスの刷新を主導する情報システム部門にとって、経理部門との円滑なコミュニケーションの構築が、DX推進における最初の大きな関門となっている実態が浮き彫りになった。
情報システム部門は経理部門のどのような点に具体的なやりづらさを感じているのか。こうした障壁を乗り越え、部門間連携を進めやすい業務領域はどこに存在するのか。
情シスと経理の間に横たわる“深い溝”
情報システム部門は新しい技術やツールの導入によって業務効率を最大化しようとする一方で、経理部門は既存の正確なプロセスを維持し、リスクを最小限に抑えることを重視する。この役割の違いが、連携時の摩擦を生む背景にあると考えられる。
経理部門との連携における具体的な障壁として、情報システム部門の担当者から最も多く挙げられたのは、「新システムへの理解、習熟に時間がかかる」(55.4%)点だ。経理業務は、法規制への適合や1円単位の正確性が求められる特性上、新しいツールへの移行に対して現場が慎重になる傾向が強い。システム導入直後は一時的に業務負荷が増大するため、現場の理解を得るハードルは高い。
やりづらさを感じる点として「『Microsoft Excel』至上主義で進化しづらい」(35.6%)や「セキュリティや権限に対する慎重さ」(34.7%)といった声も上位に並んだ。使い慣れた表計算ソフトウェアへの依存は、企業のバックオフィスに共通する課題だ。情報システム部門が新たな業務ツールを導入しようとしても、現場の既存の運用ルールや属人的なデータ管理手法との間に摩擦が生じやすく、これが全社的なシステムの定着を阻害する大きな要因になっていることが読み取れる。データの機密性を守るための権限管理に対する厳格な姿勢も、システム要件を複雑にし、導入のスピードを鈍らせる一因になっている。
一方で、協働が進めやすい領域も明確になった。情報システム部門が経理とのプロジェクトで「進めやすい」と感じた業務の上位は、「請求書処理」(51.7%)、「給与計算」(36.2%)、「経費精算」(30.2%)だった。これらの業務はプロセスが比較的定型化されており、ルールの標準化や自動化による効果が数字として明確に表れやすい。
情報システム部門がDXを成功に導くためには、いきなり高度なデータ活用や経営の意思決定を伴う非定型業務のシステム化に着手するのではなく、まずは請求書処理のような定型業務からシステム化を進めることが有効だ。手作業で実施していたデータ入力の自動化など、定型領域での業務改善を通じて経理部門にシステム導入の恩恵を直接実感してもらうことで、新たなツールに対する現場の抵抗感を和らげることができる。
今後は、単なるツールの導入にとどまらず、情報システム部門と経理部門が互いの業務特性を深く理解し合うことが求められる。定型業務の効率化によって創出された時間を、経理部門本来の付加価値の高い業務に振り向ける。そうした成功体験を共有しながら、段階的にシステム化の領域を広げることが、全社的なDX推進のハードルを根本から下げる鍵になる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。