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世界で「IT部門に不信感」が57% シャドーITが招く日本企業の“思考停止”Z世代の離職を招く「デジタルフリクション」

従業員の過半数がIT部門を信頼していない――。TeamViewerの調査で、使いにくいITツールが「シャドーIT」の温床となり、収益減や若手の離職を招いていることが分かった。「デジタルフリクション」の深刻な実態とは。

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IT部門 | 運用管理 | 業務効率


 オフィスのPCが動かなくなる、業務システムにつながらない――。こうした日常的なITツールの使いにくさが、企業の競争力を削いでいる。リモートアクセスツールベンダーTeamViewerは2025年8〜9月、日本を含む世界9カ国の従業員4200人を対象として、業務で使用するPCやアプリケーションの不調が業務を妨げる「デジタルフリクション」(デジタル摩擦)に関する調査を実施した。その結果、IT機器やシステムのトラブルによって、従業員1人当たり月平均1.3日の業務時間が失われていることが分かった。

 この問題は単なる時間の浪費だけではなく、企業が無視できない「深刻な実害」と「日本特有のリスク」をはらんでいる。

「IT部門に相談しても無駄」という本音

 影響は時間的損失にとどまらない。世界全体では、調査対象者の48%が「重要なプロジェクトや業務が遅延した」、42%が「自社の収益が減少した」と回答している。単なるツールの不便さが、経営数値に直結するリスク要因となっているのだ。

 日本の回答者を見ると、収益損失を報告した企業は24%、損失時間は1カ月当たり0.79日と世界平均より低い水準だった。しかし、これは職場が良好であることを意味しない。日本の調査対象者の46%が「自社はデジタルフリクションの解消に何も取り組んでいない」と回答しており、その割合は全体平均(23%)の2倍近い。75%は「最新のAIツールが提供されていない」と感じており、現場の「諦め」や「停滞」が、低い損失時間の裏に隠れている可能性がある。

 IT部門が良かれと思って導入したセキュリティ対策でも、従業員にとってはデジタルフリクションになり得る。その結果、現場では「抜け道」が横行している。調査では、会社支給のITツールの使いにくさを回避するために、世界全体で調査対象者の40%が未承認の個人デバイスやアプリケーションを使用する「シャドーIT」を経験している実態が浮き彫りになった。

 この背景には、IT部門への根深い不信感がある。世界全体で見ると、調査対象者の57%が「IT部門は問題を迅速かつ効果的に解決してくれるとは信頼していない」と回答している。従業員は「相談しても無駄だ」と諦め、自衛策としてシャドーITに走っている構図が浮かび上がる。これはIT担当者にとって、ツール導入だけでは防ぐことが難しい深刻な事態だ。

 特に、1990年代半ばから2010年ごろに生まれた「Z世代」などの若手層ほど、IT機器やシステムの不具合に対する耐性が低く、離職を検討する傾向が強い。企業はセキュリティリスクと従業員体験のバランスを再考する必要に迫られている。

 解決策として期待されるのがAI(人工知能)ツールだ。調査対象者の50%が、トラブルシューティングなどの定型業務をAIツールに任せることに前向きな姿勢を示している。しかし日本では、従業員の75%が「自社は最新のAIツールを提供していない」と感じており、IT部門に対する信頼不足が露呈した。

 TeamViewerは、IT部門が現場の課題を可視化し、AIツールを活用して能動的にシステム障害を解消することが、生産性と従業員エンゲージメントを高める鍵だと提言している。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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