コスト増と誤回答のわなを回避せよ Oracleが目指す経済的なAIの最適解:情シスのガバナンスと現場の生産性を両立
OracleがAI Agent Studioを刷新し、ノーコードからプロコードまでを統合した。LLMの不確実性を排除し、企業のワークフローに信頼性と経済性をもたらす。現場と開発者の分断を解消する処方箋に迫る。
米Oracleは2026年7月14日(現地時間)、AIエージェント開発を一元化するため、Fusionアプリケーション向け「AI Agent Studio」を更新。新たにAIネイティブビルダー機能の追加を発表した。
同ツールは、ノーコード、ローコード、プロコードの各ツールを組み合わせている。ビジネス部門のユーザーによる単純なタスク用エージェントの作成から、開発者によるGitベースのワークフローや「Claude Code」を用いた複雑なエージェント構築まで幅広く対応する。開発者はサンドボックスや使い慣れたテストツールも利用可能だ。
また同社は「Fusion Agentic Applications」をリリースした。これは、CX(顧客体験)、人事、ERP(統合基幹業務システム)、サプライチェーンにわたるFusionクラウドアプリ内で、Oracle製やサードパーティー製のAIエージェントおよびAI自動化を管理するネイティブな実行アプリだ。AIネイティブビルダー機能により、Fusionクラウドアプリ内でFusion Agentic Applicationsをネイティブに作成および実行できるようになる。
既存のアプリをAI時代に合わせて更新
「AI時代におけるOracleの動向」に関連する編集部お薦め記事
Constellation Researchのアナリストであるホルガー・ミュラー氏は、これらの新しいツールやアプリが、同社の以前からの「エージェントスウォーム(複数の自律型エージェントの連携)」オーケストレーションに基づいていると述べる。Fusion AI Appsは、既存のアプリをAI時代に合わせて更新するものだという。
ミュラー氏は「既存のFusionアプリにエージェントを追加して使うのではない。エージェントが得意なことを実行するための新しいアプリを構築し、人間がやるべきことを切り分けるのだ」と話す。
PegasystemsやAdobe、GenesysなどCX分野のクラウド企業は、決定論的なワークフローと確率論的なワークフローを組み合わせたり、AIエージェントの月額コストに上限を設けたりすることで、LLM(大規模言語モデル)の呼び出しを制限しようとしている。
ミュラー氏によれば、2025年の同時期と比較して、企業はもはやLLMで全てを解決しようとは考えていない。むしろ、ワークフローで論理的・経済的に合理的な場所にのみAIを適用したいと考えている。
「エージェントが売上数値を返すか返さないか、そこに確率論的な要素はない」(ミュラー氏)
Fusion Appsは単なるAIの器ではない。債権回収の向上、人員の最適化、サービスへの問い合わせ削減といった具体的な成果を目的としたビジネスアプリケーションである。一方で、Fusion環境内のセキュリティやガバナンスルールなど共通の機能を活用しているとOracleのエージェントプラットフォーム部門責任者であるカウシャル・クラパティ氏は説明する。
クラパティ氏は「LLMによるAI支援の推論と、決定論的な実行を組み合わせている。これにより、LLMの柔軟性とパワー、そしてエンタープライズワークフローに必要な予測可能性、信頼性、一貫性、スピードを両立できる」と語る。
開発モードを統合するStudio
Fusion Applications向けAI Agent Studioは、自然言語によるコーディングツールと、アプリケーションのライフサイクル管理、ローカル検証、デバッグ、CI/CDワークフローを含むプロコード環境を統合している。
クラパティ氏によれば、これにより、ワークフローのボトルネックを把握している現場の担当者が開発者と協力し、新しいアプリで課題を解決できるようになるという。開発者ではないユーザーがエージェントの動作を記述し、必要に応じて開発者が企業のテストデプロイ手法を適用するといった連携が可能だ。
プロの開発者は、AI Agent Studioと連携する「OpenAI Codex」やAnthropicの「Claude Code」といった一般的なAIコーディングツールを使用して、AIエージェントやAIスキル、Fusion Agentic Applicationsを構築することもできる。
「ビジネスユーザーが自然言語インタフェースを使いこなせるなら自分で構築できる。また、迅速にプロトタイプを作成して開発者に見せ、『これをCodexで、あらゆるガードレールやテストケースを組み込んで堅牢(けんろう)化してほしい』と依頼することも可能だ」とクラパティ氏は話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Oracleが主力製品を「9割引き」で放出してまで守りたかったもの
AIエージェントの普及は利便性を高める一方、新たなセキュリティホールを生むリスクをはらんでいる。Oracleはこの脅威に対抗すべく、主要なデータベース保護機能を2027年まで無償化。従来の境界防御を捨て、データ層に直接セキュリティを配置する「データ起点」の防御戦略へとかじを切る。
「AIで代替」は建前? Oracle“3万人削減”から読み解くリストラの真実
好業績をうたうOracleで、推計3万人に及ぶ解雇が進行している。同社は「AIツールによる業務代替」を推し進めると主張するが、専門家はその裏にある“焦り”を指摘する。AI技術に対する幻想を打ち砕く事実とは。
「Oracle AI Data Platform」登場も漂う“後発感” 顧客流出を防ぐ戦略とは?
OracleはAIアプリケーション開発を効率化する「Oracle AI Data Platform」を始動させた。競合他社が類似サービスを提供する中、OCIやOracle Databaseの機能を集約した新サービスで、Oracleが目指すものとは。
“後発”Oracleも「MCP」採用 Oracle Databaseはどう便利になる?
Oracleは同社RDBMS製品「Oracle Database」において、AIエージェントとの外部接続用プロトコル「MCP」を利用できるようにした。ユーザー企業にとってどのような利点があるのか。
なぜOracleは「自社クラウドへの誘導」を捨ててAWSと手を組んだのか
Oracleは自社のクラウドコンピューティングサービスであるOCIへの移行を推進してきたが、AWS社との提携を発表し、「AWSでOracleデータベースを稼働させる」サービスを打ち出した。その狙いとは。
Oracle Databaseはいまどうなっているのか? Google Cloud連携とAI対応の行方
マルチクラウド戦略に注力しているOracleは、同社データベースと「Google Cloud」の連携を強化している。AI機能や新リージョンの追加など、「Oracle Database@Google Cloud」の主な機能強化の内容を説明する。