ディザスタリカバリ導入事例:FalconStor CDP
アルプス電気が遠隔ディスクバックアップの新潮流「CDP」に挑んだ訳
国内屈指の大手電子部品メーカー、アルプス電気。最近、社内システムの一部で「CDP」(継続的データ保護)の技術を活用したバックアップシステムを稼働開始したという。その背景と導入効果について詳しく聞いた。
サーバ集約に伴いバックアップも全面見直し
国内外に多数の拠点を持ち、グループ全体で約3万7000人の従業員を抱える大手電子部品メーカーのアルプス電気。同社の国内拠点の多くは宮城県仙台市の近郊にあり、その中の1つに仙台開発センターがある。ここでは主に製品の設計・開発業務が行われているが、かねてよりITシステムの運用に課題を抱えていた。
電子部品の設計・開発業務ではCADやシミュレーションなどのシステムが使われるため、容量の大きい電子データが日々発生する。これらの大容量データを保管するために順次ファイルサーバを追加導入してきた結果、小規模なファイルサーバが社内に乱立し、その運用管理が煩雑になっていた。特にその中でも、バックアップに要する工数がかさんでいた。同社 技術本部 管理グループの佐藤綾郁氏は、当時の状況を次のように振り返る。
「個々のファイルサーバにLTO2のテープ装置を搭載してテープバックアップを行っていたが、運用が煩雑なだけでなく、バックアップメディアの信頼性にも問題があった。さらに、サーバの保守期間が切れるタイミングだったこともあり、ファイルサーバの集約と、それに伴う新たなバックアップソリューションの構築が急務だった」
そこで、アルプス電気のグループ会社であるアルプス システム インテグレーション(以下、ALSI)にファイルサーバのリプレースおよび集約のソリューションを依頼するとともに、独自に新たなバックアップソリューションを模索することとなった。しかし、複数のベンダーに提案を依頼したものの、どれもコスト面でのメリットを見いだすことが困難だったという。
「ストレージ装置の筐体間コピーによる遠隔レプリケーションなどの提案を受けたが、どれも高いコストがネックになった。それまで仙台開発センターではテープの遠隔地保管によるバックアップ/リカバリの運用を行ってきたため、サーバ本体より高価なバックアップ/リカバリの仕組みを一気に導入するのは、社内の理解も得にくかった」(佐藤氏)
「初物」のCDPに果敢にチャレンジ
こうした状況を踏まえてALSIが提案したのが、ファルコンストアの「FalconStor CDP」を使ったバックアップ/リカバリソリューションだ。同製品は、CDP(継続的データ保護)と呼ばれる技術を採用したバックアップ/リカバリソフトウェア。CDPとは、初めにデータのミラーリングを行った後は、データ更新の内容を逐一保管しておくことにより、任意の時点の内容に迅速にデータを復旧することができる技術である。比較的新しい技術で、特にファルコンストアの製品はデータ更新の内容をファイル単位ではなくブロック単位で保管するため、差分データの容量を小さくできる。そのため、ディザスタリカバリのためにネットワーク経由で遠隔地に差分データを転送し、データのコピーを作成する際にメリットがあるという。
ALSIは、仙台開発センターから20~30キロほど離れた場所にあるアルプス電気古川工場の敷地内で、データセンター(古川データセンター)を運営している。仙台開発センターと古川データセンターの間は、100Mbpsの専用線で接続されている。そこで、古川データセンター内にFalconStor CDPのサーバを設置し、仙台開発センターのファイルサーバにFalconStor CDPのエージェントソフトウェアを導入。ファイルデータをCDPの仕組みを使って古川データセンターのサーバに転送して遠隔地レプリケーションを実現しようというのだ。ストレージ筐体間コピーやD2D2Tによるシステム構成に比べ、コストが大幅に安く済むことからも、ユーザーのニーズに合致すると判断した。
このバックアップ/リカバリシステムの設計・構築を手掛けたALSI 製造流通ソリューション事業部 ITサービス部 長野太星氏は、FalconStor CDPの導入経緯について次のように語る。
「ALSIが手掛けるソリューションでFalconStor CDPを採用するのはまったく初めてだった。また、CDPは当時まだ新しい技術で、導入事例も周りに存在しなかった。そこで、ユーザーからの強い要望もあり、事前に徹底的に動作検証を行った」
本番環境を使った事前検証を徹底
まずは、ALSI社内で同製品の評価・検証を行った。検証用のソフトウェアとハードウェアは、ファルコンストアと同社製品の販売代理店である菱洋エレクトロが提供した。ALSIの社内環境を使ってFalconStor CDPの基本機能を徹底的に検証した結果、ユーザーの本番環境での運用にも十分堪え得ると判断、アルプス電気もGOサインを出した。
しかし、事前検証はこれだけでは終わらない。2008年6月にバックアップシステムの構築プロジェクトが正式にスタートした後、まずは仙台開発センターと古川データセンターの本番環境を使った動作検証が徹底的に行われた。本番データの差分の転送にどれぐらいの時間がかかるのか、回線の帯域幅はどれぐらい占有されるのか、設定によってどの程度チューニングが可能なのか……。さらには、わざとシステムドライブを破損させて遠隔リカバリのテストを行ったり、ファイルサーバのHDDが全損したことを想定して、データセンターにあるCDPサーバを仙台開発センターのサーバルームに移動した後、ファイルサーバのデータをリカバリしつつ他拠点のサーバの遠隔バックアップを並行して行えるか試すなど、これでもかというほどのテストを行ったという。
こうした数々のテストをクリアした後、2009年2月に新バックアップシステムは本格稼働を開始した。現在、仙台開発センターではファイルサーバのバックアップを3段階に分けて実施している。まずは、Windows Server 2003のVSS(ボリュームシャドーコピーサービス)機能を使ってデータのスナップショットを1日2回取得し、1週間分をローカルHDDに保管しておく。誤って破損してしまったファイルをすぐ直近の状態に戻したい、などといったユーザーニーズには、これで対応できる。次に、FalconStor CDPを使って1日1回、スナップショットを古川データセンターにあるサーバ上に作成し、30日間分保管する。さらに、週次でテープバックアップを行い、HDDの障害に備えている。
バックアップにまつわる煩雑さがすべて解消
この新しいバックアップ/リカバリシステムの使い勝手について、佐藤氏は次のように語る。
「とにかくバックアップ作業が楽になった。これまで使っていたテープデバイスは信頼性に不安があり、管理工数も掛かっていたが、それらがすべて解消された。テープを保管するためのスペースも不要になった。また、ファルコンストアの製品は、遠隔地にあるコピーデータからも簡単にファイル単位でデータを復旧できるのが便利。ツールのGUIも非常に直感的で使いやすい」
ディザスタリカバリの面でも大きな進展があった。たとえ仙台開発センターが被災しても、別の拠点にサーバを配置し、古川データセンターにあるバックアップデータからシステムドライブをリカバリできれば、古川データセンターのCDPサーバ上にあるコピーデータをマウントしてすぐ使えるようになるという。長時間を要するテープからのリストアと比較すれば、格段の進歩である。
ほかの拠点でも同様の仕組みを導入
このように大きな効果を挙げた仙台開発センターの新バックアップシステムは、早速アルプス電気のほかの拠点でも導入されることになった。真っ先に導入したのは、仙台近郊の大崎市にある北原工場だ。アルプス電気 MMP事業本部 情報システム課長の遠藤康生氏は、その経緯について次のように説明する。
「2008年から2009年にかけて、それまで北原工場内でバラバラに散らばっていたファイルサーバを、ブレードサーバとVMwareのサーバ仮想化ソフトウェアを導入して集約した。その後、集約したサーバのバックアップを効率的に行う手段を模索していたところ、仙台開発センターの事例を聞き、同じ仕組みを導入することにした」
ファイルサーバを集約した当初は、バックアップシステムを構築するために多大なコストを見積もっていたという。しかし仙台開発センターと同じく、FalconStor CDPを活用して古川データセンターに遠隔バックアップを取る仕組みを、サービスとしてALSIから購入することにより、非常に安価に遠隔バックアップ体制を構築できたという。「ハードウェア/ソフトウェアを自社で購入する必要がなかったため、コスト効果には非常に満足している」(遠藤氏)
さらに現在では、古川工場の敷地内にあるALSIの社内ファイルサーバのバックアップ/リカバリシステムも、同様の仕組みを採用している。現時点(2009年9月)でのシステム構成は、以下のようになっている(図1)。
古川データセンターを運営するALSIでは、今回構築したバックアップ/リカバリの仕組みを、サービスビジネスとしてさらに横展開していくプランもあるという。「アルプス電気の各拠点およびグループ企業のシステムは、すべて広域イーサネットで互いに接続されている。そのため、ほかの拠点・グループ企業でも、今回FalconStor CDPを使って確立したこのバックアップ/リストアの仕組みを導入することができる。ALSIでは今後、そうした拠点・企業に対しても、この仕組みをサービスとして提供していければと考えている」(長野氏)
本格的なディザスタリカバリ体制に向けたモデルケースに
現在、アルプス電気では遠藤氏の下、それまで拠点ごとに独自に行っていたIT業務を全社で統一して行う体制に移行している。まずは、各拠点でばらばらに運用していたサーバを、全社レベルで集約するプロジェクトが進行中だ。それがひと段落した後には、全社レベルでの本格的なディザスタリカバリのシステム構築に着手する予定だという。
「新潟県中越沖地震で被災したメーカーの例があってから、一段と災害対策に対する意識は高まった。特に宮城地方は、いつ大地震があってもおかしくないといわれているだけになおさらだ。当然、ITの災害対策は必要不可欠だが、遠隔地レプリケーションのためのネットワーク整備をはじめ、これから検討しなくてはいけないことはまだ多い。しかし、FalconStor CDPを活用した仙台開発センターと北原工場の今回の事例は、将来の全社レベルの災害対策を考える上で非常にいいモデルケースになったと思っている」(遠藤氏)
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