「現場の暴走」とIT部門の限界
「公式AI」より「勝手AI」の導入が速い “管理不全”を防ぐには
業務効率化に向けたAIツールの利用が加速している一方、従業員の自発的なAI利用が、組織の公式な導入スピードを上回る問題が顕在化している。この脅威に組織はどう立ち向かうべきか。
AIツールが急速に業務に浸透する中、従業員の自発的なAI利用に対して組織の管理やガバナンス体制が追い付いていない実態が浮き彫りになった。デジタル従業員エクスペリエンス(DEX)管理ソフトウェアを提供するNexthinkの協賛の下、調査研究組織Harvard Business Review Analytic Servicesが実施した調査によると、従業員が主導するAI利用の拡大ペースは組織主導の公式な導入を大きく上回る。
過半数の組織は、従業員によるAI利用の拡大にIT部門の監視体制が追い付いていないと回答した。経営陣がAI導入を推進する一方で、現場のIT部門は従業員が日常業務でどのAIツールをどのように利用しているかを十分に把握できないまま、セキュリティリスクや管理責任に対処することを余儀なくされている状況だ。
水面下で広がる非公式なAI利用のリスクと、組織が抱えるインフラ面の構造的な課題について、調査レポートの詳細なデータから読み解く。
現場のAI導入スピードとIT部門の管理体制のギャップ
本調査は、Harvard Business Reviewのグローバル読者パネルのうち、AIツールを利用中の組織に所属する意思決定者259人を対象に、2026年2月から3月にかけて実施された。
調査から明らかになったのは、組織が主導する公式なAI導入よりも、従業員個人の判断による非公式なAI利用の方が速いペースで拡大している事実だ。従業員主導のAI利用の導入ペースについて、回答者の57%が「非常に速い」または「やや速い」と答えた。これに対して、組織が決定した公式なAI利用の導入ペースを速いと感じる割合は39%にとどまる。
経営陣はビジネス競争力維持のためにAI導入を後押ししている。回答者の71%が上級経営陣からAI導入の奨励を受けており、66%が迅速なAI導入を組織の優先事項に挙げた。しかし、AI導入のスピードが組織の理解を上回っていると考える回答者も57%に達する。
この急速な普及を受けて、IT部門は厳しい状況にある。回答者の58%が、従業員によるAI利用の拡大に対して「IT部門の監視やガバナンス体制が追い付いていない」と回答した。45%は「IT部門がAIツールの利用状況を十分に把握できないまま管理を求められている」と答えた。従業員は組織が明確なAI戦略や方針を策定する前に、日常業務にAIツールを取り入れ始めているのが実態だ。
水面下で広がる「シャドーAI」の実態とリスク
従業員主導の非公式なAI利用は業務を効率化する可能性がある一方で、深刻なリスクを引き起こす要因になる。調査対象者に、非公式なAI利用に伴う懸念事項を尋ねたところ、79%が「セキュリティおよびデータの露出」を挙げた。次いで「規制および法務上の問題」が53%だった。これに対して、顧客体験や財務への影響を懸念する声はそれぞれ9%と低く、組織が非公式なAI利用を主に情報漏えいやコンプライアンス違反のリスクとして捉えていることが分かる。
こうした懸念の背景にあるのが、実態を把握するための可視性の欠如だ。組織が正式に導入したAIについては、46%が利用状況を十分に把握できていると答えている。対照的に、従業員主導の非公式なAI利用を十分に把握できているとした回答者は27%にすぎない。全体の63%が、従業員による非公式なAI利用に関して可視性を改善する必要があると認識している。
業務で利用されるデータには、機密情報や顧客データが含まれることが多い。従業員が悪意なくAIツールに機密データを入力した場合でも、それが学習モデルに利用されたり外部に漏えいしたりするリスクが生じる。利用状況を監視できない状態では、IT部門はこうした情報漏えいを未然に防ぐことが困難となる。実際、回答者の過半数となる53%が、AIが自社にとってのシャドーIT問題を引き起こしていると回答した。
監視を阻む最大の障壁
AIの利用状況を把握し、適切な管理体制を構築する上での障壁は何か。AI活動を監視する取り組みにおける課題として最も多く挙げられたのは「既存のデータおよびテクノロジーインフラがAI監視に対応していない」ことであり、42%を占めた。次いで「必要なスキルや人材の不足」が37%、「リーダーシップがAI監視を優先していない」が34%となっている。多くの組織で、新しい技術の動向を追跡し管理するための基本的なシステムが整っていないことが明白となった。
組織は今後12カ月間でどのような対策を検討しているのか。回答結果を見ると、人的なアプローチやルール作りに偏っていることがうかがえる。75%が「従業員向けのAI教育・トレーニング」を、67%が「AI利用に関する社内ルールやガバナンス方針の整備・強化」を挙げた。
しかし、技術的な解決策による根本的なインフラ整備には遅れが見られる。「可視化ソフトウェアの導入・強化」を見込む組織は19%にとどまり、「DEX戦略の導入」も17%にとどまる。
教育やガイドラインの策定は重要だが、ソフトウェア使用状況を可視化する技術的な仕組みが伴わなければ、ルールが順守されているかどうかは確認できない。AIツールの導入と活用を持続可能なものにするためには、従業員の利便性を損なうことなく、IT部門が実際の利用状況を的確に把握できるインフラの整備が不可欠となる。企業は今後、運用ルールとシステム管理の両輪でガバナンスを構築する必要がある。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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