現場と情シスの深刻な認識ギャップ
6割が「管理できている」と誤認? AI利用ログを約9割が未把握という深刻な実態
AIツールの業務利用が進む一方、導入企業の約7割がAIツール関連費用を正確に把握できず、約9割が利用ログを追跡できていない。このブラックボックス化した状態から抜け出すためには。
企業におけるAIツールの業務利用は、実証実験の段階を終え、本格的な普及期に突入している。文章作成や調査、ソフトウェア開発など用途は多岐にわたり、業務の生産性は飛躍的に向上した。
一方で新たな課題が浮上している。個人や部門単位での手軽な導入が進んだ結果、情報システム部門が全社的な利用状況を把握しきれない「シャドーAI」の問題だ。
ソフトウェアの品質保証を支援するSHIFTは、2026年4月22日から6月12日にかけて、企業の経営部門、DX推進部門、情報システム部門など、AI利用や管理に関わる担当者170人を対象に「AI利用・管理実態調査」を実施した。調査結果からは、多くの企業がAI管理の実態を見誤っている厳しい現実が見えてきた。過半数の担当者が適切に管理できていると認識しつつも、実際には利用費用やログの可視化が追い付いていないことが判明したのだ。
なぜ、企業のAIツール管理はブラックボックス化してしまうのか。調査結果から、企業が直面しているAIツール統制の壁と、あるべき管理体制の姿を読み解く。
ブラックボックス化する利用費用と「休眠アカウント」のリスク
調査からは、AIツールを導入している企業の68.8%が、AIツールの毎月の支払総額を正確に集計できていないことが明らかになった。回答の内訳を見ると、「把握できていない」が50.0%、「手間がかかっている、あるいは把握し切れていない」との回答が18.8%を占める。利用実態のない休眠アカウントへの課金が継続していることについて、「懸念している」と答えた割合は56.4%に達した。
一般的なAIツールは月額課金型のサービスであり、個人や部門のアカウント単位で契約されるケースが散見される。中央集権的なIT資産管理の網から漏れやすく、利用状況を把握できないまま無駄な費用だけが積み上がるリスクをはらんでいる。特筆すべき点は、経営層や役員層に限った場合、「把握できていない」とする割合が60.0%に跳ね上がることだ。意思決定を担う経営層ほど、AIツール関連費用の全体像を把握しきれていないという事態が浮き彫りになっている。
ガイドラインだけでは防げない情報漏えいリスク
AIツールの利用ログについても、極めて脆弱(ぜいじゃく)な管理体制が露呈した。89.4%もの企業が、利用ログを十分に追跡できていない状態にあるという。内訳は、「ガイドラインはあるが、ログは追えていない」企業が55.9%、「ガイドラインもログ管理もできていない」企業が33.5%だった。
AIツールの業務利用における最大の懸念は、従業員が機密情報や個人情報を安易に入力してしまうことによる情報漏えいリスクだ。企業は利用ルールを定めたガイドラインの策定を急いでいる。しかし、ルールの周知徹底だけでは十分なコンプライアンス統制には至らない。従業員がどのツールにどのような情報を入力しているのかを把握するための、利用ログを可視化して継続的に監査する仕組みの欠如が、企業を大きなリスクにさらしている。
まん延するシャドーAIと管理推進を阻む4つの壁
未承認のまま業務で利用される、いわゆるシャドーAIの可能性があるツールとして、最も多く名前が挙がったのは「ChatGPT」で57.1%だった。次いで「Google Gemini」が49.4%、「Claude」が37.6%と続く。「どんなAIが使われているか全く把握できていない」とする回答も14.7%に上る。
無料プランや個人向けのアカウントで容易に利用開始できるAIツールは、現場主導のボトムアップで導入が進みやすい。利便性が高い半面、企業がセキュリティ水準を確認していない外部AIツールへ重要な業務情報が流出する危険性を秘めている。
AIツール管理を進める上での課題を尋ねたところ、「リテラシー、教育」(69.4%)や「セキュリティ、規約」(66.5%)、「統制、ガバナンス」(55.9%)、「費用、管理」(52.4%)が上位に並んだ。企業におけるAI管理は、単なるソフトウェアのライセンス管理という枠組みを超え、人材育成やセキュリティ対策、ルール整備、費用最適化を包含する複合的な経営課題へと発展していると言える。
脱ブラックボックス化に必要な一元管理システム
このような複合的な課題を解決する手段として、51.2%の担当者がAIツールの管理システムについて「導入を検討したい」と回答している。期待する機能として最も需要が高かったのは、「全社AIツール利用ログの集約保存、セキュリティ監査」(61.8%)だった。これに「シャドーAI対策と利用傾向の可視化」(54.7%)、「複数AIツールのアカウント一元管理」(46.5%)、「各AIツール利用料の一括請求、費用可視化」(44.7%)が続く。
企業はすでに、AIツールの業務活用を禁止するという選択肢を捨てつつある。重要なのは、現場の業務効率を損なうことなく、いかに安全かつ効率的にAIツールを活用できる体制を整備するかだ。
分散したAIツールの利用状況や利用費用、アカウント情報、入力ログを全社規模で一元的に可視化するシステムの導入は急務だ。情報システム部門には、従来のインフラ保守やクラウドサービス管理に加え、AIツール利用を含めた一元的なガバナンスを構築し、経営層の適切な意思決定を支援する新たな役割が期待されている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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