業務デジタル化を阻む現場の不安
それでもExcelを捨てられない DXを阻む現場の”心理的ハードル”の正体
NEXERとTSSソフトウェアが実施した調査によると、働く人の54.3%が「自社の業務のデジタル化は進んでいない」と回答。紙やExcelによる管理が残る職場は76.8%に上った。DX推進の障壁となっているのは何か。
「紙と手作業の業務から“脱Excel”したい」「決裁ははんこ、情報共有はメール」――。こうした“デジタル化の停滞感”を抱える職場は少なくないようだ。
コンサルティング企業NEXERとITベンダーTSSソフトウェアが実施した調査によると、働く人の54.3%が、自社の業務のシステム化・デジタル化について「あまり進んでいない」「まったく進んでいない」と回答した。人手不足や働き方改革を背景にDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる一方、現場では依然としてアナログ業務が色濃く残っている実態が浮き彫りになった。
入力や転記に時間がかかる。でもDXが進まない理由
調査は、事前調査で「現在働いている」と回答した全国の男女400人を対象に、2026年5月1日~11日にインターネットで実施したものだ。
職場のデジタル化について、「とても進んでいる」と回答した人は7.8%、「ある程度進んでいる」は38.0%だった。一方、「あまり進んでいない」は31.8%、「まったく進んでいない」は22.5%となり、過半数が“自社のデジタル化は遅れている”と感じていることになる。
デジタル化が進んでいると回答した人にその理由を尋ねた結果、「FAXがなくなり電子署名になった」「AIツールを積極導入している」「Slackで情報共有している」といった声が挙がった。
一方、進んでいないと感じる理由としては、「決裁書類が全て紙」「経営陣が本気で取り組んでいない」「デジタルに詳しい人が限られている」といった回答があった。
これらの回答からは、ツールを導入するかどうかだけではなく、経営層の理解や、現場で使いこなせる人材の有無が、デジタル化の進展を左右している可能性が示唆される。
「紙・Excel管理」が今も7割超の職場に残存
調査では、紙や手作業、Excelによる管理がどの程度残っているかも聞いている。
その結果、「多く残っている」が38.5%、「一部残っている」が38.3%となり、合計76.8%が、現在も何らかのアナログ管理を続けていると回答した。
こうした運用によって感じている不便として最も多かったのは、「入力や転記に時間がかかる」(47.2%)だった。続いて、「ミスが起きやすい」(40.7%)、「探すのに時間がかかる」(26.1%)、「情報共有しにくい」(20.8%)が続いた。
つまり現場では、「探す」「写す」「打ち直す」といった作業に、多くの時間が割かれている状況が続いていることになる。
さらに、属人化や引き継ぎの難しさも課題として浮上している。Excelや紙中心の運用は、一見すると柔軟性が高い一方で、担当者依存になりやすく、情報共有や品質管理の面で問題を抱えやすい。
「費用が高そう」で導入を断念? DXを阻む“心理的ハードル”
では、こうした課題を解決するために、外部のシステム開発会社へ相談することについて、企業はどのように感じているのか。
調査によると、「システム開発会社に業務改善を依頼することにハードルを感じる」と回答した人は54.3%だった。
その理由として最も多かったのが、「費用が高そう」(72.4%)である。次いで、「何を依頼すればよいか分からない」(24.0%)、「導入まで時間がかかりそう」(23.5%)、「社内で使いこなせるか不安」(22.6%)が続いた。
この結果から見えてくるのは、“デジタル化したい気持ちはあるが、進め方が分からない”という現場の実態だ。
「もっと早く導入すればよかった」の声も
一方で、実際にシステムやツールを導入・刷新した経験がある人のうち、約4割が「もっと早く導入すればよかった」と感じている点は興味深い。
具体的には、「患者情報の検索や修正が速くなった」「生成AIで業務時間を短縮できた」「情報共有が楽になった」など、導入後に業務効率化を実感したという声が多かった。
調査結果からは、デジタル化の必要性は認識されているものの、「費用」「進め方」「運用への不安」が障壁となり、導入を先送りしている企業が少なくない状況が見えてくる。
調査結果についてNEXERは、「業務のデジタル化は、費用や進め方への不安から、つい先送りされがちだ。しかし、現場に残る小さな非効率を放置すると、長期的には大きな機会損失につながる可能性もある」と指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
6
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の機能とスペックを徹底比較
-
7
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
8
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
9
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
10
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー