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Webサービスを使ったCRMアプリケーションの統合EAIからWebサービスへ

CRMインテグレーションはどんな規模の組織にとっても大きな課題だ。本稿は、CRMとほかのシステムを統合するためのベストプラクティスについて解説する。

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 エンタープライズアプリケーション統合(EAI)ベンダーは近年、独自のアダプターやインテグレーションサーバの提供を通じ、統合における課題に対応しようとしてきた。EAIソリューションは効率的ではあるが、ハードとソフトと研修に相当の初期投資が必要になる。もっとコスト効率のよい選択肢となるのがWebサービス、つまりさまざまなITプロセスとシステム間の相互運用を実現する新興標準の利用だ。

 Gartnerのアナリスト、ダリル・C・プラマー氏によると、Webサービスとは標準的なインターネット技術を通じて配信される疎結合ソフトウェアコンポーネントを指す。Webサービスは、プラットフォームやベンダーを問わないプロトコルで、時間をかけてカスタム版のコードを作成しなくても、共通のXMLフォーマットを使って提供元の異なる別々のアプリケーション間の相互通信を実現できる。Webサービスを使えばIT組織は、プロプライエタリな技術でなく標準をベースとしたアプリケーションインフラの構築に重点を置くことが可能になる。これは機敏に動けるエンタープライズ構築のための重要な基盤となる。

 Webサービスを使ってCRMアプリケーションを統合すれば、さまざまな点で組織にメリットをもたらせる。全般的には、統合のためにWebサービスを使っている組織は効率が高まり、市場の変化や競争圧力に対応しやすくなる。Webサービスではコンポーネントの再利用によってシステム相互運用にまつわる課題の解決を支援することもでき、これはアプリケーション統合コストの削減にもつながる。Webサービスでは情報とデータ共有の共通フォーマットも確立されるため、企業はシステムの相互運用問題を克服でき、ユーザーの採用促進にもつなげることができる。

 Webサービスは、オンデマンドセルフサービスアプリケーションとIVR(自動音声応答)システムを、中核となるCRMアプリケーションにコスト効率的かつ効果的に統合する一助にもなる。これにより、長く複雑な統合プロセスを経ることなく、セルフサービスツールとモジュールとCRMアプリケーション間のデータと情報のシームレスな交換が実現できる。

 Webサービスでは効率的な統合の仕組みが提供されるが、難点も幾つかある。ユーザーインタフェースは柔軟性が低く、相互依存性が高いため簡単にはカスタマイズできない。まだ比較的新しい技術であるため標準と仕様は発展途上だ。HTTPベースのプロトコルであるWebサービスにはセキュリティ上のリスクも存在するため、認証メカニズムとSSL対応暗号を使って実装する必要がある。

WebサービスとCRMアプリケーションの統合

 Webサービスを使って2つのアプリケーションを統合するにはどんな場合でも、SOA(サービス指向アーキテクチャ)が必要になる。SOAはアプリケーションサーバ環境によって提供されるサービスを結び付ける。Webサーバはサービスに接続するためのHTTPネットワークという伝送手段を提供し、アプリケーションサーバはSOAP(Simple Object Access Protocol)インタフェースをホスティングする。Webサービスはまた、サービスを構成するオブジェクトコンポーネントも提供し、オブジェクトコンポーネントはアプリケーション上層のビジネスサービスレイヤーを提供する。その結果、アプリケーションの基盤を成すWebサービスにより、優れたビジネスプロセスを支援する際立ったサービスが提供される。

 以下にWebサービスを使ってCRMアプリケーションを統合するための標準的な手順を紹介する。実装にかかる時間や期間は、統合の対象となる事業体の数と、開発しなければならないWebサービスの数に左右されるため、アプリケーションによって異なる。同様に、2つのアプリケーションを統合する場合の手順もまちまちだが、データ処理に使われる要素と技術に変わりはない。

  • データ処理はXML(eXtensible Markup Language)で行わなければならない。XMLはデータと情報提示のための標準的な手法を提供する言語
  • アプリケーションのリストアップと検索にはUDDI(Universal Description, Discovery, and Integration)を利用する。UDDIは「ディレクトリ標準」であり、アプリケーションツールの中には統合の際に使う組み込みサービスとしてこれを提供しているものもある
  • データを送信/取得する必要のあるサードパーティーアプリケーションからWSDL(Web Services Description Language)ファイルを入手しなければならない。WSDLは、アプリケーションが自分のインタフェースと相互運用規則をほかのアプリケーション向けに記述するのに使う「記述子標準」となる。WSDL文書はXMLで書かれ、この文書がWebサービスを記述する。これにより、サービスの場所と、サービスで露呈されるオペレーション(またはメソッド)を指定する。WSDL文書には、拡張要素やサービス要素といったほかの要素を盛り込むこともでき、例えば複数のWebサービスの定義を1つのWSDL文書にまとめることも可能だ
  • 各アプリケーション用に提供されたプロプライエタリなツールの助けを借りてWSDLを活用し、そのデータ構造に合わせるために必要なXMLメッセージを作成する
  • XMLデータは次にSOAPを使って伝送される。SOAPは情報交換のための軽量プロトコル。これはXMLベースのプロトコルで、3つの部品、すなわちメッセージの内容と処理方法を記述するためのフレームワークを定義したエンベロープ、アプリケーションに定義されたデータの種類のインスタンスを表現するエンコーディングルールのセット、リモートプロシージャコール/レスポンス描写のためのコンベンションで構成される
  • SOAPはHTTPやHTTP拡張フレームワークなどのプロトコルで利用できる。HTTP通信プロトコルは、前述のXMLデータを使ってサードパーティーアプリケーションの特定や検出を行う一助ともなる

Webサービスを使ったCRM統合を始めるには

 CRMプロジェクトの一環としてWebサービスの利用を検討しているのなら、まず既存のアプリケーションサーバ、アプリケーション開発環境を分析し、Webサービスを使ってこれらを拡張できる可能性について分析することだ。

 次に、Webサービスを使った統合プロジェクトに取り掛かる前に、複数の顧客管理システムのデータ分析と評価を行う。

 こうした手順を済ませれば、Webサービスを使ったCRMアプリケーションの統合に着手する準備は整った。Webサービス技術はまだ成熟の途上にあるが、ほとんどのCRMアプリケーション統合で成功が実証されている。

本稿筆者のバスカー・バンダカビ氏はCognizantのCRM担当首席コンサルタント。コンピュータアプリケーションの修士を持つ。IT分野で10年以上の経験を持ち、銀行、セキュリティ、保険、医療、自動車、通信といった複数業界にわたる大規模CRMプログラムの管理の経験が豊富。CRMアプリケーション実装に関するさまざまな管理職・技術職を歴任し、米国、アジア、欧州に顧客を持つ。

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