ERPシステムのスムーズな運用開始のために
ERP導入を成功させる従業員トレーニングのポイント
ERPの導入は従業員の仕事のやり方の大幅な変更を伴うため、効果的で実践的なトレーニング方法を入念に計画することが重要だ。
ERPの導入を成功させるには、従業員のトレーニングが不可欠だ。ERPの導入は従業員の仕事のやり方の大幅な変更を伴うため、大規模なシステム導入の一環として従業員のトレーニングを位置付けなければならない。
しかし現実には、企業でのERPのトレーニングは必ずしも効果を上げていない。エンタープライズシステムのトレーニングの取り組みでは、操作方法の習得に主眼を置いたものが多いが、これは誤りだ。また、ERPトレーニングコースの多くは「変更内容を従業員が理解しやすい状況に関連付ける」「時間をかけて徐々に変更を適用する」「さまざまな学習スタイルに応じて複数のトレーニング方式を提供する」といった重要な目標を達成できていない。
ERP導入トレーニングの取り組みには、以下の6つの重要なポイントを盛り込む必要がある。
1. システムの操作ではなく、ビジネスプロセスに主眼を置く
ERPソフトウェアメーカーは一般に、システム上で処理を実行する方法を説明するマニュアルを作成したり、ユーザーをトレーニングしたりするのは得意だ。しかし業務の処理は、システム上で処理を実行すればそれで終わりというわけでは決してない。ERPのトレーニングコースでは、システムで新たな処理を実行する方法を教えるだけではなく、従業員が日常業務を処理する状況に即した知識を提供しなければならない。
2. 新たなビジネスプロセスを既存の環境に関連付ける
新しいERP環境への移行に当たっては、現行のビジネスプロセスをお払い箱にしたいという誘惑に駆られる。しかし、従業員は従来の業務手法に関連付けて理解しようとするため、新しいプロセスと現行のプロセスとの対応を示すことが、従業員が新たな環境に移行する手助けとなる。また、現行プロセスとの関連付けは、従業員に関係する重要な変更部分を明確化することにもなる。
3. 各種のERPトレーニングツールを活用する
学習方法は人によって異なり、従業員の認識と行動を変えるには、反復学習と複数の学習手段が必要になることも多い。米Panorama Consulting Groupの調査によれば、大抵のERP導入事例では授業形式のトレーニングが採用されているが、新しいERPシステムを導入する企業の多くは、チートシート(トラの巻)、ユーザーマニュアル、Webベースのチュートリアル、体験型シミュレーションといった効果的な学習ツールを活用していない。変更を確実に定着させるには、正式なトレーニング以外にもさまざまなトレーニング手段を活用する必要がある。
4. 社内のトレーナーがERPのエンドユーザーを訓練する
プロジェクトの初期の段階では、プロのトレーナーがコアチームのトレーニングを行うのが効果的な場合もあるが、スーパーユーザーや各業務分野の専門家に広範なエンドユーザートレーニングを担当させることが非常に重要だ。こういった社内の人材は、自社のビジネスプロセスについては外部のコンサルタントよりもはるかに豊富な知識を持っており、システムの変更を従業員の業務にうまく関連付けることができる。また社内のトレーナーは、ERPの導入期間中および導入後に機能面でのサポートを提供することもできる。
5. ERP導入トレーニングには十分な時間を割り当てる
ERPの導入は、会社がこれまで経験したことのないような困難なITプロジェクトとなる可能性があり、手に負えないと感じることもあるかもしれない。効果的なトレーニングが導入を成功させる上で最も重要な要素であるのは明らかだが、多くの企業はプロジェクトのスケジュールというプレッシャーのためにトレーニングを急いで済まそうとする。
授業形式の正式なトレーニングの後も、ほかの学習機会(例えばテスト環境でのプロセスシミュレーションなど)に参加するための十分な時間を従業員に与える必要がある。あまり早い時期にトレーニングを実施すると、従業員が学んだことを運用開始時点で忘れている恐れもあるが、遅くともカットオーバーの60日前にはトレーニングを開始すべきだ。
6. 全社的な業務改革活動を通じてトレーニングの成果を定着させる
この作業は見過ごされがちだが、本稿で紹介した6つのポイントの中で最も重要だといえるかもしれない。業務手法の変更に関する話し合いは、エンドユーザーのトレーニングの前に開始しなければならない。新しいビジネスプロセスと変更内容が明確になったら、従業員も話し合いに参加させる必要がある。正式なトレーニングあるいはERPの運用開始時点で従業員が混乱することがないようにするためだ。業務改革に関するこういった話し合いは、部門内のコミュニケーション、責任分担の明確化、そのほかの重要な組織改編の取り組み促進が狙いであり、ERPプロジェクトの成功に不可欠だ。
運用開始時に従業員が混乱したり対処できなかったりすることがないように効果的なトレーニングを実施することが、ERPのスムーズな導入という目標の達成につながるのだ。
本稿筆者のエリック・キンバーリング氏は、国際的なERPビジネスで15年以上の経験を持つ。グローバル企業にERPコンサルティングサービスを提供する米コンサルティング会社Panorama Consulting Groupの創業者で、同社の社長を務める。同社はERPソフトウェアの選定、ERPの導入、組織改編の管理、成果の実現などの分野で顧客企業を支援している。
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