モバイルやICカードも活用――ここまで来たSaaSの適用範囲:SMBのためのSaaS利用術【最終回】
SaaS活用の範囲は業務システムだけとは限らない。モバイル環境や既存資産を生かせば訪問介護、入退室管理といった「社外活用」への道もおのずと開けてくるだろう。
ネットワークやデバイスの進化がSaaS活用の場面を広げる
本連載では5回にわたり、「業務システム特性」という観点から各業務分野におけるSaaS(Software as a Service)活用のポイントについて詳しく述べてきた。最終回となる今回は視点を少し広げ、社内で利用する業務システム以外でのSaaS活用の可能性について考えてみる。
国内ブロードバンド普及率は、従業員20人未満の小規模企業で約80%、従業員20人〜300人の中小企業で約90%以上に達している。また、携帯電話の世帯普及率も高い水準(2008年度で90%以上)にあり、Suicaなどの電子マネーも多くの一般消費者が所持している。整備されたネットワークインフラと広く普及したデバイスを活用すれば、社内で利用する業務システムだけでなく、これまでアナログ的に処理されていたさまざまな業務においてもITを活用する道が開けてくる。
具体例としては、
- 訪問介護やビル警備などにおける携帯GPSを活用した業務の管理・支援
- ICカードを使ったオフィスビルの入退出セキュリティの強化
- おサイフケータイやICカードによる交通費精算業務の効率化
といったものが挙げられる。
上記いずれの例も、業務効率改善やセキュリティ強化の面で効果が期待できる施策である。だが、ユーザー企業がこれらを導入するためには、ネットワークインフラだけでなく、サーバやアプリケーションといった多くのIT投資が必要となっていた。その結果、中堅・中小企業にとっては得られる効果と掛かるコストのバランスが取りづらく、なかなか導入に踏み込めない状況が続いていたのである。
そこで登場するのがSaaSだ。ネットワークインフラとデバイスにSaaSを組み合わせることによって、社内に閉じた業務システムだけでは実現が難しかった業務効率改善やセキュリティ強化を、多額のIT投資を伴わずに実施できるようになってきている。先に挙げた3つの例を基に、こうした「社内業務システムにとどまらないSaaS」の具体例を以下で紹介しよう。
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