企業が注視するタブレット、ソーシャルメディアの潜在力:2011年にIT業界が注目すべき5大トレンド(前編)
タブレットやソーシャルメディアなど、企業が2011年に押さえておくべき5つのITトレンドを紹介する。
2012年の今ごろ、私は多分第2世代のメディアタブレットを使って記事を書いているだろう。その機種は、現在使っている米AppleのiPadの新バージョンか、それともより効率的に仕事を処理できる可能性があるAndroid搭載端末かもしれない。そういったわけで、2011年末までにタブレットおよびスマートフォンを本格的な業務ツールとして利用する企業が増えるというわれわれの予測を2011年のITトレンドリストのトップに持ってきても驚く人はいないだろう。
実際、もしその気になれば、2012年にはITソリューションプロバイダーへのインタビュー動画を含めたモンタージュビデオという形でこの記事を作成することになるかもしれない。ビデオをビジネスツールとして採用する動きが加速しており、この状況はわれわれが追いかけようとしている草の根的トレンドの1つだからだ。だが私自身は、まだこの流れに追い付けていないのが実情だ。
景気が回復し、企業のIT投資が上向き始める中、ソリューションプロバイダーは何を期待できるのだろうか。米市場調査会社Gartnerの見方によると、経済が再び成長に向かい始める中、IT分野におけるイノベーションと投資の動向に大きな影響を与える力は4つ存在する。
- 情報主体型組織:言い換えれば、人々が共同作業と情報共有のために利用するさまざまな手段(ソーシャルメディアやコンシューマー技術など)を理解するということだ
- 資産あるいは責任としての情報:これについては、二酸化炭素排出量情報から患者の医療記録に至るまで、ありとあらゆる情報が対象になる可能性がある。実際、この状況に対応すべく、情報を整理、保護、アーカイブするための新たな方法やプロセスが出現しつつある
- 適応型情報インフラストラクチャ:Gartnerの見解によると、これはデータの集合からコンテキスト(背景情報)と関連性を見つけ出し、そのデータに基づいて行動することを意味する
- 代替デリバリーモデル:新しいアプリケーションや機能を迅速に配備することを可能にするモデル、特にクラウドを通じて配信されるソフトウェアとサービス、およびそれに対応した「アプライアンス」を指す
こういったフレームワークの中で、ソリューションプロバイダーを含めITにかかわる全てのユーザーにとってとりわけ重要な5つのトレンドを以下に示す。
トレンドその1:タブレットとスマートフォンの普及がさらに拡大する
米ソリューションプロバイダーのINXのVocalMash事業部で副社長を務めるデレク・ダウンズ氏によると、ほとんどの企業で携帯端末が定着したことに多くのソリューションプロバイダーが驚いているという。「タブレットと携帯端末は、われわれが予想していた以上に重要性が高まった」とダウンズ氏は語る。
米ソリューションプロバイダーのJenaly Technology Groupで社長兼仮想CTO(最高技術責任者)を務めるM・J・シューアー氏によると、同氏の部門ではiPadなどの端末をデータセンターレベルで本格的にサポートする方法を検討しているという。というのも、同プラットフォーム用として出回っているビジネスサポートツールの多くは、まだ「極めて堅固」といえる状況ではないからだ。
「携帯端末はますます重要になるだろう。現時点で仕事に利用可能であり、われわれの見方では、サポートも十分に可能だ。携帯端末を対象とした適切な管理サービスを開発するだけでいいのだ」とシューアー氏は話す。
ソリューションプロバイダーが注視しているもう1つの現象がある。それは、アプリストアからソフトウェアやウィジェットをダウンロードするという形態だ。これは米AppleがiPhone向けのApp Storeで開拓した手法だ。同社は2011年1月初めから、この方式をMac OSにも持ち込んだ。
「多くのユーザーがオンラインマーケットからアプリケーションをダウンロードするというアイデアを気に入っている」とダウンズ氏は話す。「こういったコンシューマーの行動が活発化するのに伴い、アプリストアというコンセプトは開発手法とアプリケーションの購入形態を変えつつある」
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トレンドその2:顧客向けおよび社内用としてのソーシャルメディア
ソーシャルメディアにどれほど抵抗を感じようとも、それは一部の企業のビジネスにおいては現実となりつつある。TwitterやFacebook、そして「ソーシャルエンタープライズソフトウェア」と呼ばれる新世代のソフトウェアは、コンシューマーとのコミュニケーションの手段として定着しつつあるだけでなく、一部の企業では従業員のコラボレーションの新たな形態として受け入れられている。
「企業は今、ソーシャルメディアに注目する必要がある。新世代の従業員がこれらのツールを仕事に利用しようとしているからだ」とダウンズ氏は語る。
ソーシャルメディアをマーケティングツールとして利用する予定はないという企業であっても、さまざまなソーシャルメディア機能に精通しなければならない重要な理由が1つある。それは、ソーシャルメディアで使われているインタフェースはいずれ、企業向けアプリケーションでも採用される可能性が高いということだ。
「新しいインタフェース原則に関する限り、われわれは自然な訓練を受けているのだ。人々はこれからも効率的なものは使い、そうでないものは脇に追いやるだろう」とダウンズ氏は話す。
続く後編では、ビデオ会議やプライベートクラウドなど、企業にとって重要な3つのトレンドを見ていこう。
本稿筆者のヘザー・クランシー氏はビジネスジャーナリストとして20年以上のキャリアを有し、受賞経験もある。『Entrepreneur』『Fortune Small Business』『International Herald Tribune』『The New York Times』などに寄稿している。ハイテク流通業界のニュースとトレンドを専門に扱うB2B業界紙『Computer Reseller News』の編集者を務めたこともある。ニューヨーク在住。
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