知ってるつもり? IP電話AtoZ(3)
スマートデバイスで再注目の「無線LAN+IP電話」内線システム
今回はIP電話の可能性を広げる「FMC」と、iPhoneなどスマートデバイスが企業導入をリードする無線IP電話を解説する。
今回は、携帯電話の新しい使い方であるFMC(Fixed Mobile Convergence)と、IP電話の無線端末である無線IP電話を解説する。
キーワード解説(1) FMC(Fixed Mobile Convergence)
当初、FMCは家庭の電話機と携帯電話の相互運用を指していたが、企業向けにおいては固定回線と携帯間の定額制の利用形態を指すことが多い。この利用形態では、FMC専用の固定回線から携帯への発着信が定額となる。さらに携帯間での簡易的なPBX機能と、固定から携帯そして携帯間の、内線番号での発着信が可能となっている。一般的にFMCでは、携帯ごとに月額費用と追加料金としてFMC利用料金が必要となる。以前は、携帯と無線IP電話を同一端末で使うデュアルフォンが話題に上ることが多かったが、FMCで同様の機能が使えるため今は下火になっている。
業務効果
FMCを導入する場合、携帯と自社の間の通話が多ければ、月額の追加費用に見合うだけのコストメリットが出てくる。また、FMCを導入した後の新しい使い方として、部署の代表電話や固定のダイヤルイン端末のみ固定電話で運用し、個人にはFMCの携帯端末のみ配ることでコストの削減も可能だ。さらに携帯キャリア側の判断にもよるが、携帯から他社への発信をコールバック発信にできれば会社の固定回線からの発信扱いとなるため、他社との通話コストを抑えることが可能だ。FMCは構内PHSの置き換えの候補として挙げられるが、PHSを構内でのみで使用してキャリアへの月額料金を支払ってない場合はコストメリットが見いだせない。
導入と運用
FMCの導入は、呼制御装置と固定回線の接続で実施される。接続方式は、一般的な外線回線方式(PRI/BRI)とIP接続がある。IP接続の場合は、対応するPBXメーカーのIPゲートウェイあるいはIP呼制御装置とキャリアの呼制御装置間の接続となる。
この際、FMCユーザーと相手に発信元の電話番号がどのように見えるのか、注意が必要だ。具体的には、固定電話への着信をFMC配下の携帯に転送する場合に発信元の外線番号が見えるかどうか、また別のケースとして、FMC回線でコールバック発信をする場合は発信先へどの番号を見せたいのかといった検討も必要となる。その他、コールバック発信をする場合には、別途アプリケーションの導入とキャリアの許可が必要となるので、この点も意識しておきたい。
製品選定のポイント
FMCサービスは携帯キャリア各社から選ぶことになる。各社とも提供サービスの基本的な機能は同一だが、料金および上記のような電話番号の透過性の部分で違いがある。
| ウィルコム | NTTドコモ | KDDI | ソフトバンクモバイル | |
|---|---|---|---|---|
| サービス名 | W-VPN | オフィスリンク | ビジネスコールダイレクト | ホワイトオフィス |
| 内線発信方法 | 内線番号(W-VPN端末対応から専用メニューを利用) | ゲートウェイ識別番号+内線番号 (携帯発固定着の場合) |
内線番号 (単一拠点の場合) |
*33+内線番号 |
なお、オフィス経由発信に対応させるためには、呼制御装置とアプリケーションの連携が必要となる。また発信操作もアプリケーションから行うため、どの端末からコールを開始するかを決めて製品を選択するようにするとよい。
| PhoneAppli | 日本アバイア | |
|---|---|---|
| 製品 | PhoneAppli | One-X Mobile |
| 対応呼制御装置ベンダー | シスコシステムズ | 日本アバイア |
| 対応端末 | iPhone、HTMLに対応した携帯 | iPhone、BlackBerry、Windows Mobile |
キーワード解説(2) 無線IP電話(専用端末、スマートフォン/スマートデバイス)
無線LAN上でIP化された音声を通すのが、無線IP電話である。構内の設備となるため、キャリアとの契約は必要ない。内線PHSの置き換えに無線IP電話を使えば、元の環境と一番近いイメージで導入が可能だ。端末としては、専用端末とスマートフォン、タブレット端末などのスマートデバイスがある。
業務効果
無線IP電話は、構内PHSと同様に社内に無線LAN用のAP(アクセスポイント)を立てれば、電波の届く範囲で端末が使用可能となる。このためキャリアに支払う月々の利用料金は必要なく、FMCに比べてランニングコストを低く抑えることができる。スマートフォンが既に展開されている場合は、無線LANのネットワークを構築して、端末にアプリをインストールすれば構内で同じように利用可能だ。
また、無線LANのみ使用可能なスマートデバイス(iPod touchやiPad Wi-Fiモデル)を利用すると、月額の利用料金が必要ない上、コンシューマー向け製品のため、機器調達のコストを抑えることもできる。また、スマートフォン/スマートデバイスには業務アプリなどもインストール可能なので、さらなる生産性向上も期待できる。
導入と運用
音声を無線LAN上で使用する場合は、APの設計に注意が必要だ。無線LANでPCと無線IP電話端末を同時使用すると、両方から同時アクセスするためふくそうが起きてしまう。無線LANでは2.5GHz帯と5GHz帯の両方が利用できるが、一般的に2.5GHz帯はBluetoothなどに使われていたり、外部からの侵入電波があるために電波干渉が多い。だが音声のみ5GHz帯を使用するように設計すれば、ふくそうを防ぐことも可能となる。
また、無線LAN専用端末の場合はさまざまな状況を想定して音質を保つ工夫がされているが、スマートフォン/スマートデバイスの場合はそうではない。そのため、無線LANの設計に制限がある。例えばアップルの製品を利用する場合は、無線LANのSSIDが切り替わる際に通話が中断してしまうことがあり、SSIDが切り替わらないようネットワークを設計する必要がある。また、iPhoneやiPod touchは5GHz帯の無線LANを使用できないため、PCを5GHz帯にして音声で2.5GHzを使うような設計上の工夫も必要だ。
製品選定のポイント
無線専用端末を選択するか、スマートフォン/スマートデバイスを選択するかによってポイントが違ってくる。無線専用端末であれば、各メーカーの専用端末を利用することになる。スマートフォンの場合は携帯キャリアの端末から選択し、スマートデバイスは市場に出ている端末から選択することになる。
今のところiPhone、iPod touch向けの業務用ソフトフォンがリリースされているが、今後はAndroidに対応したソフトフォンも出てくるだろう。しかし、Android端末はさまざまなメーカーが作っているため、各メーカーの無線LAN回りの実装によって、音質が確保できる場合とできない場合とが出てくると予想される。全てのAndroid端末でソフトフォン機能自体は利用可能だが、音質を確保した形で利用できる端末は限られるかもしれない。
| 製品 | シスコシステムズ | NEC |
|---|---|---|
| 無線専用端末 | Cisco Unified Wireless IP Phone CP-792X | UNIVERGE Terminal MH250 |
| スマートフォン | Cisco Mobile | - |
| スマートデバイス | Cisco Mobile | - |
荒牧大樹
ネットワンシステムズ 営業推進本部
2001年よりIP電話機構築にかかわる。国内の大手金融や製造系の大規模なUCネットワーク構築において、先端UC技術をいち早く取り入れてきた。メーカー以外の企業のエンジニアとして、UC技術の最高資格である「CCIE Voice」を国内で初めて取得。現在はネットワンシステムズにてUC製品の先端技術サポートを行っている。
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