これからのユニファイドコミュニケーションに必要な「業務改善」の視点:“業務改善型”ユニファイドコミュニケーションを導入する【第1回】
その導入効果や適用範囲が分かりにくいといわれるユニファイドコミュニケーション(UC)。本連載はUCをどの業務へ適用したらいいのか、どのように検討・導入を進めていくのかを業務改善の観点から解説する。
「業務改善型UC」とは何か
ユニファイドコミュニケーション(以下、UC)とは、電話や電子メール、プレゼンス、インスタントメッセージ、テレビ会議、Web会議などのさまざまなコミュニケーションツールの統合によりもたらされる、効率的なコミュニケーションのことである。一般にその導入効果は、乱立したコミュニケーションツールを統合し、情報の相互流通を迅速に行い、ユーザーの生産性を向上させることだとされている。しかし、コミュニケーションにかかわる課題は千差万別であり、UCを適用すべき範囲や組織は幅広い。つまり実際のところ、その導入効果を一口で言い表せるわけではない。
真に効果的なUCの導入を目指すのであれば、業務における課題とコミュニケーションのかかわり、ふさわしい適用範囲を正しく見極める必要がある。具体的に、どのような業務シーンでUCを活用すれば改善効果が得られるのか、あるいは、従業員のワークスタイルに合ったコミュニケーション手段やツールをいかに選択・提供すべきか、といった視点が必要だ。
以下に、企業が業務改善を進める手段としてUCを検討する上で、まず知っておくべきポイントを述べよう。
業務を円滑にする工夫や仕組みとしてUCを利用する
UCは現在、業務を円滑にするための工夫や仕組み、業務の悩みや課題を解決するための道具として利用するという現実的なフェーズに入ろうとしている。
その端的な例として、社内の協働作業や社内コミュニケーションの変化に合わせて、インスタントメッセージのようなコミュニケーションツールが活用されている。従来は自席にて業務を遂行することが多かったが、最近は場所を問わず協働して作業するようなワークスタイルが増えてきた。そのため、オフィスにはいるが、ほかのフロアや会議室で仕事をしているといったケースも珍しくない。そうした場合も、インスタントメッセージを利用すれば、自分のチームメンバーなどと相談するのにどこにいるのか探す必要がなくなる(図)。また、相手がどのような状態なのかを確認してから必要な連絡手段を選択できる。
同じ部署に所属しながらも、それぞれの働き方が違ってきている背景から、業務を円滑に進めるツールとしてUCが利用され始めているわけだ。
どの企業も同じ効果を得られるわけではない
現在、大多数の企業はどんな形であれ、グループウェアを利用していると思われる。情報システム部門の管理者なら、グループウェアの導入時には「どのように利活用したら生産性が向上するのか」という点を検討した経験があることだろう。その結果、グループウェアの数ある機能のうち、自社の業務やビジネスプロセスに合ったものを利用しているはずだ。その名の通り、グループで利用されることを前提としたツールであるため、全社員が効果を一律に実感しやすい。
しかしUCにおいては、一様に効果が得られるとは言い切れないケースもある。なぜなら、ある業務課題の解決を狙いビジネスプロセスに組み込まれるという点ではグループウェアと同様でも、UCにはコミュニケーション文化や利用者のワークスタイルに大きくかかわってくる側面があるからである。UCの導入効果を最大限に得るには、自社のビジネススタイルを把握することも重要なのである。
IT戦略の中に組み込まれるコミュニケーション
UC黎明(れいめい)期の2000年前後、特にIP電話が普及した当時、企業の総務部門および情報システム部門の管理者は、企業統合、電話の運用コスト、レガシーシステムから新しい技術トレンドへの移行などを目指して順次導入を進めてきた。これまでは、管理者視点や企業のIT戦略に基づいた導入、またはPBXからのテクノジー移行による導入が多かったわけだ。
しかしながら、UCをIT戦略やビジネス戦略の一部として明確に位置付け、業務に組み込む形へとユーザー意識が変わってきている。筆者は最近、顧客からIT戦略、ビジネス戦略の中でUCを検討したいという相談をよく受ける。これには、2000年以降UC関連の技術革新によりさまざまなデバイスが出現し、その機能が向上してきた事情もある。企業や個人にとって選択できるコミュニケーションツールが多種多様となり、機能も豊富になったためだ。
こうした動きの中で重要な役割を占めるのは、企業や働く人にとって実践的な効果が得られるコミュニケーションツールを検討し設計する「コミュニケーションのデザイン」という考え方である。また、この考え方においては、企業内だけでなくビジネスにかかわる顧客やパートナーにもユーザーメリットが得られることが求められる。
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