Dellの製品ロードマップに現れたWindows 8搭載タブレット:MicrosoftはWindows 8搭載タブレットをいつ出すのか(後編)
Windows 8搭載タブレットはいつ登場するのか? 業界を飛び交ううわさや臆測の中で、Dellの製品ロードマップがリーク。そこには「Windows 8」という文字列が記述されていた。
前編「先を行くiPadやAndroidにどう対抗? MicrosoftがWindows 8投入を焦らない理由」では、Windows 8のユーザーインタフェースを中心とした、業界のうわさや臆測、見え隠れするMicrosoftの戦略について説明した。
今回は、Dellからリークした製品ロードマップやMicrosoftの従来戦略から、Windows 8およびそれを搭載したタブレットのリリース時期を検討してみる。
iPad 2の登場で高まる圧力
米Appleが2011年3月始めに行ったiPad 2の発表で、Microsoftをはじめ第二のiPad創出を目指す各メーカーに掛かる圧力はさらに高まった。
米Pund-ITの主席アナリスト、チャールズ・キング氏は、AppleのiPadはコンピュータ業界で前代未聞に近い「吸引力」を維持しているとし、「米Microsoftまたは他社がより魅力的な製品を近いうちに開発できなければ、Appleはこの分野の全ての競合相手をのみ込む巨大なブラックホールになるだろう」と話す。
「iPadで非常に興味深い点は、そのコンシューマー向けの性質だ」とITコンサルティング/IT開発会社の米318でテクノロジーディレクターを務めるチャールズ・エッジ氏は言う。「大企業のユーザーが喜ぶものと、小規模企業やコンシューマー層のユーザー(が喜ぶもの)はおおよそ同じだ」と同氏は指摘する。
コンシューマーの場合はFacebookでのビデオチャットを主軸に考えるものの、あらゆる層のユーザーがビデオ会議に便利なiPad 2のデュアルカメラに興味を示している。その一方で、「弊社の顧客は、既存のテレフォニーシステムを利用したビデオ会議機能の統合に最も関心がある」とエッジ氏は明かす。「(ITプロバイダーは)これを適切に実現できるノウハウ構築を競うことになるだろう」
Windows 8タブレットのリリース時期は?
Windows 8タブレットの正確なリリース時期は確定していないが、別の類いの(タイムリミットとの)戦いはMicrosoftで既に始まっている。
2011年2月半ばに米Dellのロードマップがリークしたことで、Windows 8タブレットとみられる2つの製品(コード名:PejuおよびRosemount)がそれぞれ2012年の1月と第2四半期にリリースされるという臆測が強まった。
その後すぐに、ZDNetのコラムニストのメアリー・ジョー・フォリー氏は、リークしたMicrosoftのロードマップを基に、「マイルストーン2」という社内目標を予定通り通過した場合、Windows 8は9月までにβテスト、2012年の中ごろまでに最終リリースの準備が整うと予測している。
しかし、Microsoft MVPのマイク・ハルシー氏をはじめ多くのMicrosoftパートナーは、新しいタブレットのリリースは2012年の、より遅い時期になると考えているようだ。
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さらにアナリストの意見は分かれる。米Enderle Groupの主席アナリスト、ロブ・エンダール氏によると「Windows 8は2011年の末までにβサイクルに入り、Windows 8タブレットは2012年の早期にリリースされると考える向きもある」という。
「Microsoftは、好きにできる時間が限られていることをよく分かっている」(エンダール氏)
だが、米Directions on Microsoftのシニアアナリストであるマイケル・チェリー氏は、Windows 8搭載デバイスのリリースは、既存のアプリケーションのARMベースのハードウェアへの移植や新しいタッチインタフェースの開発に伴う課題のため、予定よりも遅くなる可能性があることを指摘している。
「自分が開発者だったら、最低限の作業で済ませる方法と、アプリケーションをタブレット用に変更する方法のどちらを選択するだろうか」と同氏は問い掛ける。「これまで、Windowsアプリケーションはマウスやスタイラスなど洗練された器具での操作を前提に開発されてきた。しかし、指は優秀な入力器具ではない」
その一方で、Microsoftパートナーのハルシー氏は、多くのビジネスアプリケーション開発者はIntelベースの開発のみにとどまってARMやタッチ操作対応には手を出さないし、Windows 7タブレットを導入している企業では、既存のスタイラス向けUIを維持して余分なコストを掛けないようにするだろうと主張する。
SDKはどうなる?
SDK(ソフトウェア開発キット)のリリースが、開発者がアプリケーションの開発や変更に着手できるほどWindows 8が安定したことを示す目安になるとチェリー氏は考える。
同じくDirections on Microsoftのロブ・サンフィリッポ氏は、Microsoftと密接な関係にある一部のパートナーは、既にSDKのアーリービルドを使用している可能性があるが、SDKの一般公開は2011年の第3四半期に開催されるであろうMicrosoft Professional Developers Conferenceになる公算が大きいと話す。
「Windows 8の開発ツールは、ARM、Intel SoC、x86、x64といった全ての主要なプラットフォームでのアプリケーション実装と開発に対応すると思う」と同氏は語る。
「Windowsを全てのハードウェアの標準OSにすることがMicrosoftの望みであるため、それ以外のSDKやツールを提供して開発者に負担を強いるとは考えにくい。同社の強みの1つはSDKと強力なツールによる開発だから、Windows 8でもこれまでと同様のアプローチを取るはずだ」
同氏は、Windows 8タブレットのリリース時期を「最短で2012年半ば」になるとみている。
Micorosoftはタブレット進出を断念する?
Windows 8タブレットをタイムリーにリリースできなかった場合、Microsoftは対iPad戦を放棄する可能性もあるとハルシー氏は言う。「ビジネスユースではWindows 8が競争力のある製品になることは疑わないが、Microsoftがタブレット市場に割り込めるかどうかは分からない」と同氏はくぎを刺す。
その一方で、サンフィリッポ氏は「Microsoftがタブレット市場でAppleまたはGoogleに負けを認めるとは思わない」と別の見方を示す。
「長年苦戦しながらも検索市場でGoogleに挑み続けているように、現在の、そして今後予想される市場シェアがどうであれ、Microsoftはタブレット市場での戦いにリソースを投入し続けるだろう。Microsoftの究極の狙いはWindowsを全てのコンピューティングデバイスのOSにすることだから、どの市場であれ敗北を認めることはない」
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