PostgreSQLの全面採用で脱Oracleを推進する英気象庁:MySQLはOracleだから不可
英国内の気象サービスを監督する英気象庁は、オープンソーステクノロジーの導入を拡大する政策に従って、米OracleのOracle DatabaseからPostgreSQLへの移行に着手した。
「長い間、われわれはデータベース管理システムとしてOracleを利用してきた。この独占状態を崩すのは非常に困難だった」
英気象庁でデータサービスポートフォリオの技術責任者を務めるジェームズ・トムキンス氏はこう語る。
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年間のサポート費用と保守費用の負担が大きいため、英気象庁はOracleへの依存度を低下させることを狙って、広範囲に影響する施策でオープンソースのソフトウェアを組織全体で導入した。
英国政府発行の「政府サービス設計マニュアル」は、次のように勧告している。「差し支えのない限り、政府はオープンソースのソリューションを調達する。使用が義務付けられているオープンスタンダードと組み合わせて使用することで、オープンソースのソリューションの可能性は設計とソリューション同士の相互作用という点で大きく広がる」
このマニュアルにはまた、「プロプライエタリな(ある目的に特化した、従来の商用)ソフトウェアは、『特殊な問題』を解決する場合にのみ利用するべきだ」とも記されている。
「まれに起こる問題や特定のドメイン限定で起こる問題に対しては、SaaSを利用するか、プロプライエタリなソフトウェアをインストールするのが最善の解決策だろう。ただしその場合は、インタフェース部分にオープンスタンダードを採用できるものを選択して、特定のサプライヤーの製品に依存せざるを得なくなる、ベンダーロックインのリスクを軽減することに留意しなければならない」(「政府サービス設計マニュアル」より)
Oracleからの脱却は、英気象庁が2012年にオープンソース計画でRed Hat Enterprise LinuxとPHPスクリプトを採用することを決定したところから始まった。英気象庁の当時の技術責任者、グレアム・マリン氏は、「英気象庁は、所有するスーパーコンピュータで米IBMのプロプライエタリなOSのAIXを使用しているが、(オープンソースのプログラム言語である)Pythonを利用しているし、IBMのメインフレーム上でRed Hat Enterprise Linuxも稼働させている」と語っていた。同庁では500人がRed Hatユーザー、1300人がWindowsユーザーだった。
オープンソースのリレーショナルデータベースの中で最も普及しているのはMySQLだが、英気象庁はこの製品に対しては慎重な見方を示していた。MySQLは米Oracleが所有していたからだ。トムキンス氏によると、(MySQLを採用しないのは)MySQLのソースコードには複数のバージョンが存在し、単一のバージョンしか存在しない場合に比べて管理が困難になるからだという。英気象庁がMySQLではなくPostgreSQLを採用したのは、こうした理由からだった。
PostgreSQLの実装
Oracleのリプレースに当たって、英気象庁はビッグバンアプローチを試みるのではなく、2つの移行パイロットプロジェクトを実行した。
この2つのパイロットプロジェクトは、2014年4月から実環境での運用を開始した。英気象庁の拠点管理データベース(Strabo)とLIDAR(ライダー、各種の測量や測定に使われるシステム)のデータ取得システムがPostgreSQLとPostGISでそれぞれ再実装された。
トムキンス氏は次の通りコメントしている。「ビッグバンアプローチも検討したが、投資の規模を考えると、法外な金額と複雑さが要求されることが分かった(ので断念した)」
負荷を減らして将来への可能性を広げるために、英気象庁はPostgreSQLをまず小規模なシステムに展開し、このテクノロジーのスキルを少しずつ蓄積することにした。
トムキンス氏は、OracleからPostgreSQLへの移行は、技術的には容易だったと話す一方、「Oracleにはブラックボックスの部分が多かったが、PostgreSQLではドキュメントに記述されていない機能も利用することができた」とも語る。
PostgreSQLはオープンソースなので、従来のようにエンタープライズライセンスを購入する必要はなく、英気象庁はシステムのサポート契約を外部の業者と交わすだけとなった。コードのダウンロードは無料だ。
そして英気象庁は、保守サポートとコンサルティングを提供してもらう業者として英2ndQuadrantを選択した。
これについては、トムキンス氏は次のように語る。「これまでは、Oracleのスキルを持つスタッフに対して重点的に多額の投資をしてきたが、現在はPostgreSQLの開発者と運用担当者のためにスキルアップのプログラムを検討中だ。当初は2ndQuadrantが気象庁の職員に対して基礎的なトレーニングを提供してくれた。その研修を受けて、職員がPostgreSQL移行の2つのパイロットプロジェクトを本番稼働までやり遂げた。われわれはPostgreSQLの導入を拡大したいと考えている。ただし現時点では(PostgreSQLの)スキルのレベルは、これまでOracleで積み上げてきたものにはまだ及ばない。これからPostgreSQLのスキルをもっと高めて、自信を持ってシステム運用を進められるようにならなければならない」
ライセンス料の管理
トムキンス氏は続けてこんな話もしてくれた。「PostgreSQLに移行することの大きな利点の1つは、サポートの費用がハードウェアの性能に比例しなくなることだ」
続きはComputer Weekly日本語版 7月16日号にて
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