ネットワークエンジニアは目をそらしてはいけない
FacebookとGoogleが導入して話題の「ベアメタルスイッチ」とは?
サーバを皮切りに委託者のブランドで設計・製造する「ODM」製品が市場に登場し始めた。その波はネットワーク業界にも広がり、新しいタイプのスイッチが開発され注目を集めている。
ベアメタルスイッチ(ホワイトボックススイッチと呼ばれることもある)はニッチ市場だと考えられていた。だが、米Dellが突如参入したことで、他の大手ベンダーも近くベアメタルスイッチの市場に参入する可能性がある。ベアメタルスイッチのセットアップには特別なスキルが必要だと考えているかもしれない。だが、早期導入者は恐れおののく必要はないと話している。
平均的なネットワークエンジニアは、ベアメタルスイッチが特殊なテクノロジーだと考えているかもしれない。サードパーティー製ネットワークOSを実行するベアメタルスイッチは、ネットワーク業界に劇的な変化をもたらした一因となっている。特にクラウドサービス/Webコンテンツ/金融サービス市場のデータセンターで働くオペレーターの多くは、ベアメタルスイッチを試すことに意欲的だ。ベアメタルスイッチは、ネットワーク業界に大きな経済的な転換をもたらす可能性を秘めている。また、ネットワークエンジニアは、これまでにない柔軟性とアジリティを手に入れられるかもしれない。
ベアメタルスイッチのメリットを整理
米Ciscoなどの大手OEMが提供する従来の垂直統合型のスイッチと異なり、ベアメタルスイッチでは、ネットワークのハードウェアとソフトウェアを分離することができる。その結果、価格の引き下げと、より柔軟性の高い運用機能/ネットワーク機能が実現される。
ベアメタルスイッチについて、まず注目が集まるのはコストだろう。だが、ベアメタルスイッチを使用し続ける理由は別にある。そう語るのは、パブリッククラウドサービスプロバイダーである米Cloudaptの共同設立者でクラウドアーキテクチャの責任者を務めるマイク・ドーソン氏だ。「今後、当社はホワイトボックススイッチなしで、やって行くことはできないだろう。Ciscoや米Juniper Networksに縛られるようなことは金輪際行うつもりはない。これには先の2社よりオープンな性質の米Arista Networksも含まれる」
だが、ベアメタルスイッチ市場は発展段階にある。市場に参入しているソフトウェアベンダーの大半は新興企業だ。また、ハードウェアベンダーも、北米における流通経路やエンタープライズサポートの体制が限られているか、存在しないODM(Original Design Manufacturer:製品の設計から生産までを行う企業)である。
だが、「Dell Networking」は、この力学に変化をもたらした。その発端は、同社のデータセンターのスイッチにメスを入れて、サードパーティー製ネットワークOSをサポートすることへの同意だ。サポート対象となるのは、新興企業の米Cumulus Networksと米Big Switch NetworksのネットワークOSだ。Dellがスイッチ市場のリーダーでないことは誰の目にも明らかである。だが、Dellにはエンタープライズクラスのサプライチェーンとサポート体制がある。このような特性から、ベアメタルスイッチは、ハードウェアとソフトウェアの縛りを受けたくない企業にとって魅力的な選択肢となるだろう。Dellがベアメタルスイッチ市場に参入して以来、次にどの企業が参入するかが業界の注目の的になっている。
Cumulus Networksに対して早期投資を行ったベンチャー投資企業のBattery Venturesの共同経営者を務めるアレックス・ベニク氏は次のように語る。「私には守秘義務がある。その範囲での発言になるが、Dellに続いて他のOEMがメタルベアスイッチ市場に参入しても不思議はない。Dellの市場参入に対して胸が高鳴っているのは、同社が現代のサーバサプライチェーンを考案しているからだ。新しい現代のネットワークのサプライチェーンを改革する上でDellは理想的なパートナーになるだろう」
ベアメタルスイッチの魅力と課題
2012年に設立されたCloudaptが当時所有していたのは、一連のサーバラックと米Pica8を通じて入手した5台のベアメタルスイッチ(各48ポート)で構成されたネットワークだった。Pica8はアジア圏のODMからベアメタルハードウェアを購入するためのサポートを提供するSDN(Software Defined Networking)ソフトウェアの新興企業だ。
「当社はオープンソースを使用することを厭わない。ストレージ、OS、アプリケーションもオープンソースを使用している。問題が発生したときには、エンジニアに直接コンタクトできる状況が当たり前になっている。Pica8と連携することで、ネットワークにも同じモデルを適用できた。これは当社にとって初めてのことだった。Ciscoのエンジニアと電話で話をするには、まずCiscoのスイッチを購入する必要がある。オープンソースコミュニティーにルーツがあり、密接につながっている小さな企業と連携することは新鮮な体験だった」(ドーソン氏)
ベアメタルスイッチの革新は速い速度で進んでいる。そのため、新しい機能を使用するために新しいハードウェアを購入する必要があるとは限らないとドーソン氏はいう。
「例えば、Pica8と連携を始めた当時、当社ではBGPをサポートしていなかった。だが、今では完全に実装されている。また、コードの修正も何度か行っている。今でも同じASICとスイッチハードウェアを運用している。Pica8にとって、これは純粋なソフトウェアの変更だ。新しいバージョンの米Google『Nexus』が完成するよりも早くベアメタルスイッチの導入を実現することができた」とドーソン氏は振り返る。
とは言うものの、ベアメタルスイッチは、多くのネットワークエンジニアにとって未知の領域だ。また、ネットワークエンジニアはリスクを嫌う生き物である。ネットワークエンジニアは、何十年にも渡って垂直統合型のスイッチを使用してネットワークを構築してきた。ハードウェアとソフトウェアを分離することは新たなリスクをもたらす。具体的には、「全てのものは問題なく機能するのか」「エンタープライズレベルの技術サポートは受けられるのか」「代替スイッチはすぐ入手できるのか」「連携する新興企業は3年後も存在しているのだろうか」という問題が浮上する。
「多くのネットワークエンジニアが利用者から感謝されるのは、革新ではなく、ネットワークが利用できることに対してだ」と米Gartnerでリサーチディレクターを務めるアンドリュー・ラーナー氏はいう。「ネットワークがダウンしたら、ネットワークエンジニアは職を失うことになる。ネットワークエンジニアにとってネットワークがダウンすることは、サーバエンジニアがサーバをダウンさせることより事態が10倍も深刻なのだ」
米ワシントン州にあるジョージワシントン大学でシニア情報システムエンジニアを務めるアンドリュー・ガロ氏は次のように語る。「ベアメタルスイッチ市場の現状から、同校の環境では、ベアメタルスイッチが成功を収める可能性は低いと考えている」
「個人的にベアメタルスイッチの導入を検討したいのはやまやまだが、同校は非常にリスクを嫌っている。そのため、同校でベアメタルスイッチを導入するとは思えない。有名ブランドとの関係を維持することに価値があると考えている。CIO(最高情報責任者)は『無名ブランドのサービスに重要なリソースを配置するのか』というだろう。この件に関してCIOを説き伏せるのは容易なことではない」(ガロ氏)
だが、リスクを嫌うエンジニアでも、Dellに追随するOEMが出てくれば、ベアメタルスイッチを導入する準備を始めるだろう。
「市場と収益の観点では、ベアメタルスイッチを導入しているベンダーの割合は3%と決して高くない。突然、米Extreme Networksがベアメタルスイッチ市場に参入し、米HPだけでなくCiscoまでもが参入したらどうだろうか。そのような状況になれば、ベアメタルスイッチは一般に認められたメインストリームテクノロジーになるだろう」とGartnerのラーナー氏はいう。
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