決して遊んでいるわけではない、モバイルアプリで仕事がはかどった3つの事例:生産性向上のコツは?
企業のIT部門によるモバイルアプリの導入、管理、さらには作成の事例が続々と増加している。適切な戦略を立てれば、モバイルアプリは従業員の生産性を高める手段になる。
モバイルアプリの活用で企業が直接的な成果を上げたり、従業員の生産性を高めたりできる具体例を紹介しよう。
企業のモバイルテクノロジー担当者は、従業員の生産性を向上させる秘策はないかと常に模索しているものだ。IT部門の責任者や経営幹部からは、モバイルアプリの真価は何かと迫られることが多く、そのせいでかえって導入が遅れがちになる。そこで担当者はアナリストやその道の専門家の意見を求め、すぐに導入可能なターンキーソリューションやロードマップを手に入れようとする。だが、残念ながらモバイルに特効薬は存在しない。それでも、他社の成功例を参考にすることはできる。
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まずは、法人向け金融・リースの世界的大手企業の事例を紹介しよう。この企業のディーラーや営業担当者は、さまざまな企業と話をし、リースの要望を聞いて申請を受け付けるが、実際の資金調達までのプロセスに通常30日を要していたという。このプロセスには、見積もりの提示、申請とワークフローの承認など、幾つもの手続きが含まれていた。ところが、タブレットで申請の受理、見積もりの提示、デジタル署名の手続きを行えば、30日間のプロセスを2日に短縮できることが分かった。1万人以上の営業担当者の仕事がそれぞれ28日分も短縮するのだから、これは極めて大きな従業員の生産性向上になった。
次は大手小売チェーンの例だ。この企業では、会計監査、プランニング、売り上げ記録の大部分を「Microsoft Excel」に依存していた。店長や地域責任者が手作業で複数のシステムに情報を入力するために多大な時間を費やすことになり、監査プロセスにも時間を費やしていた。地域責任者による店舗監査をモバイル端末で行えるようにしたところ、改善やフォローアップ項目の実施に要する時間を即座に短縮することができた。その結果、地域責任者と店長は収益増加に専念する時間を増やすことができた。
モバイルの価値は、金額で表されるものばかりとは限らない。いわゆる「ソフト面の価値」をモバイルアプリで従業員に提供する例を最後に紹介する。
大企業では、目的の会議室が見つからずに迷う人が絶えない。これまでたくさんの企業の従業員から話を聞いたが、筆者が「モバイル専門家」だと分かると、「会議室検索アプリがあればいいのに」と皆が口をそろえる。それは名案のはずなのに、企業では、アプリの作成費用や投資回収の話になった途端に壁にぶつかってしまう。「実益はあるのか?」ということが問題になるのだ。
このようなアプリで実現されると考えられる潜在的なコスト削減額を示すのはとても難しい(もっとも、会議室が見つからなくて会議に遅刻する人の数、そのせいで無駄になる時間、それに伴う損失を分析したら興味深いだろう)。だが、ソフト面の価値の観点からみれば、従業員の要望がある限り、会議における彼らの生産性と効率の向上にすぐつながるはずだ。
ここに紹介した3つの例は、企業がモバイルアプリを導入することで実益と生産性の向上をいかにして実現したか、あるいは実現できるかを示している。では、実際にモバイルで成功のチャンスをつかむには、どうすればよいのだろうか。その第1歩は、ユースケースを正確に把握することだ。すなわち、何を実現したいのか、そしてそれは何のためなのかを明確にするのである。
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モバイルを導入するのは、それによって実際の価値を生み出す機会があるからであって、モバイルの利用そのものが目的ではない。いわゆる収穫しやすい果実、つまり、達成しやすい目標から始めてみよう。現行のプロセスの中でモバイル化したらすぐに効果に結び付きそうなユースケースがないかを考えてみる。例えば、承認プロセス、営業支援システム、トレーニングマニュアル、インシデントリポート作成などが考えられる。
ユースケースを選ぶ良い方法の1つは、フィールドサービス担当者など、ある1人の従業員の仕事を1日体験してみることだ。その人が日々どんな仕事をしているのか観察する。モバイル端末を使うことで効率化でき、その従業員の生産性が向上しそうな日常業務はないだろうか? ユースケースを選んだら、モバイルアプリの要件と、成功の条件となる目標を明確に設定する。
ユーザーエクスペリエンス(UX)がカギになることを忘れてはならない。従業員の生産性を高めるには、ユースケースをただモバイル化するだけでは十分ではない。期待されるUXを正確に理解し、直観的で魅力的なワークフローを作成することが必須だ。UXの低いモバイルアプリ、つまり、使い勝手が悪いものや感覚的に操作ができないようなアプリは、従業員の生産性を下げ、不満を募らせる恐れがあり、プロセスのモバイル化に費やすあらゆる時間と労力とコストが逆効果になる。
そして最も重要なのが測定基準だ。アプリが成功したかどうかを何で測るのか? 重要実績評価指標(KPI)を明確に定義し、そのような指標を測定する手段をアプリに組み込んでおく必要がある。出回っている多くのツールにはアプリ内分析機能があり、モバイルアプリの導入においてこれが1つの要となる。このようなツールを利用すれば、使用者のアプリ使用状況や、アプリを使って必要な作業を完了するまでに費やした時間を確認でき、実際に生産性が向上しているかどうか検証することができる。
今はまだそうでないとしても、モビリティは企業文化にしっかりと根付くことになるだろう。目指すのは、モビリティによって実際に価値を生み出し、自社に変化をもたらすことだ。他の企業の実例から学び、幾つかのシンプルなガイドラインを守っていけば、きっと成果を上げることができるだろう。
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