「仕事ならやはりMicrosoft製品」が本音?
「Microsoft Office」がiOS、Androidに完全対応で無料オフィス市場に地殻変動
米Microsoftの全ての主要な業務アプリが、全ての主要OSで利用できるようになった。ただし、モバイルデバイス管理(MDM)機能を搭載しないなどの問題が採用を妨げる可能性もある。
企業のモバイルユーザーはようやく、米Microsoftの業務アプリ一式を全て使えるようになった。ただし、まだ課題は残っている。
2015年1月末、Microsoftは米AppleのiOSと米GoogleのAndroidを搭載するデバイス向けのモバイルアプリ「Microsoft Outlook」を公開し、Androidタブレット向けのOfficeアプリ「Microsoft Office for Android」をプレビュー版から正式版にアップデートした。これで、同社のエンドユーザー向け主要アプリである「Word」「Excel」「PowerPoint」「Outlook」は初めてWindows、iOS、Androidの3つの主要OSで利用できるようになった。
「もはやWindowsやWindowsデバイスだけをサポートしているのではない」と、米調査会社J. Gold Associatesの主任アナリスト、ジャック・ゴールド氏は語る。
ただし、依然として改善点が残っており、企業には注意点が幾つかある。
モバイル向けOutlookはMDM機能を非搭載
iOSおよびAndroid版のMicrosoft Outlookに決定的に欠けているのは、モバイルデバイス管理(MDM)機能の統合だ。「企業のメールシステム上には常にビジネスに不可欠な機密データが行き交っている。Outlookを使ってそうした企業データのセキュリティを確保できないのであれば、この新しいモバイルアプリの成功は見込めない。ユーザーに実行してほしいこと、実行してもらいたくないことを管理するためのポリシーは、自分自身でコントロールできなければならない」と、独立系モバイルコンサルタントのブライアン・バリンジャー氏は指摘する。
Microsoftの公式ブログによると、同社は今後のバージョンでMDM機能を追加する方針だという。
ルック&フィールや機能の点では、この新しいアプリはデスクトップ版のOutlookにほとんど似ていない。実際、このアプリはMicrosoftが2014年12月に買収した米Acompliのメールアプリ「Acompli」の名前を変えて新たにリリースされたものだ。
「Microsoft Exchange」や「Google Apps」も含め、MicrosoftやGoogle、Apple、米Yahoo!のメールサービス利用者は、Outlookアプリから各アカウントにアクセスできる。Outlookアプリはカレンダー機能も搭載する。「集束受信トレイ」(Focused Inbox)機能を使えば、受信メールを自動的に振り分け、重要度の低いメールが最前面に表示されないようにもできる。Microsoftの「OneDrive」、米Dropboxの「Dropbox」、Googleの「Googleドライブ」などのクラウドストレージと連係し、こうしたクラウドからのファイル添付も可能だ。
マイナス面としては、Android版のOutlookはまだプレビュー版だという点だ。フォローアップ用のフラグはデスクトップ版のOutlookユーザーの多くが重宝している機能だが、iOS版とAndroid版ではメッセージにフラグを付けることはできても特定の日付を設定できないなど、設定の細かさが格段に劣る。
それでも、“Outlook”という名称はiOSユーザーやAndroidユーザーを引き付けるのには十分だと、ゴールド氏は指摘する。「細かな機能がどうのこうのは重要ではない。Microsoftが戦略を変えたということが重要だ」
ただし企業は通常、Microsoft製品をリリース後すぐには採用しない。バリンジャー氏によれば、恐らく今回もそうなる見込みという。「企業としては待つほかない。バージョン1が、企業にとって十分なレベルに達していることは決してない」と、同氏は語る。
Androidタブレット向けOfficeはサポートに制限
iPad向けアプリ「Office for iPad」のリリースに遅れること約10カ月で、Androidタブレット向けの「Office for Android」が正式版にアップデートされた。iOS版と同様、Android版のWord、Excel、PowerPointについても、文書の閲覧、編集、作成など、基本的な機能を個人で利用する場合は無料だ。ただし画面サイズが10.1インチ以上のタブレットで利用するには、「Office 365」のサブスクリプションが必要となる。
商用利用の場合も、文書の編集と作成を行うには適切なOffice 365サブスクリプションが必要となる。もっとも、ゴールド氏によれば、大半の企業は既にOfficeのオンプレミスライセンスを購入しているので、この条件が導入に影響することはないという。
それよりも問題となりそうなのは、Microsoftによるサポートの制限だ。Office for Androidをインストールできるシステム要件は、ARMベースのプロセッサ、1Gバイト以上のRAM、Android 4.4(KitKat)を搭載するAndroidタブレットとなっている。Android 5.0(Lollipop)を搭載するタブレットでも動作するが、現時点ではサポートの対象外だ。同社は公式ブログにおいて、今後のアップデートでLollipopやIntelベースのタブレットのサポートを追加する方針だと説明している。
今後Microsoftによるサポートが強化されれば、Office for Androidは企業にAndroidデバイス全般の採用を促すことになりそうだ。ゴールド氏によれば、iOSデバイス向けにはこれまでも「Pages」「Numbers」「Keynote」など、まずまずの代替アプリが提供されてきたが、Androidユーザーにはそうした選択肢が欠けていたという。
「このアプリの登場で、Androidの企業利用に弾みが付くのは間違いない」と、同氏は指摘する。
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