パスワードの使い回しは半数以上
「私のパスワード、2万円なら売ります」――セキュリティ調査で14%が回答
従業員の多くがパスワードの使い回しや共有をしているために、会社が情報流出の危険にさらされている――。こんな実態が、米セキュリティ企業の調査で明らかになった。
従業員によるパスワードの無頓着な使用によって会社のセキュリティが破られるリスクが大幅に高まっている。それを食い止めるための適切なパスワード管理対策も存在しない――。そんな実態が、IDガバナンスを手掛ける米SailPoint Technologiesの調査で明らかになった。
調査は英IT調査会社Vanson Bourneが中堅企業と大企業(従業員3000人以上)に勤務するオフィスワーカー1000人を対象に実施した。パスワード管理について尋ねた結果、56%が私用と業務用のアカウントに同じパスワードを使い回していることが判明。使っているパスワードの平均はわずか3種類だった。さらに、20%はチームメンバーの間でパスワードを共有していると答えた。もしパスワード管理ポリシーが徹底されていなければ、情報が簡単に流出してしまう恐れがある。
「日常生活には数多くのパスワードが氾濫しているので、ユーザーは自分を助けるためにさまざまな手だてを講じる」。SailPoint創業者で社長を務めるケビン・カニンガム氏はこう指摘する。「ありがちな手段として、複数の異なるアカウントで同じパスワードを使うようになる。パスワード保護に対して無頓着になりがちな実態と組み合わさると、真のリスクが顕在化する」(同氏)
それだけではない。従業員の14%は、雇用主への報復目的あるいは単純に金銭目当てで、場合によっては150ドル(約1万8000円)というわずかな額と引き換えにパスワードを第三者に売り渡してもいいと回答した。カニンガム氏によれば、中にはパスワードを犯罪集団に売って不正使用される前にすぐ変えてしまえばいいと考える従業員もいる。こうした従業員は、そのパスワードが他のアカウントでどれほど広く使われているかを認識していない。
パスワード管理を手掛ける米LastPassの共同創業者であるジョー・シーグリスト最高経営責任者(CEO)は、パスワード使い回しの問題は増大しつつあり、意図的なインサイダーの脅威よりも深刻だとの見方を示す。企業は手遅れになるまで従業員のパスワード利用を気に留めないという。
「『パスワードの使い回しはいけない』と注意するだけでは効果がないことを、ほとんどの企業はある日突然気付かされる」とシーグリスト氏は指摘する。「ユーザーは自分のパスワードの使い回しがばれるとは思っていない。ソーシャルネットワークや他のWebサイトから情報が流出し、自分がそこで使っていたパスワードが何者かに再利用されて会社のネットワークが不正侵入されるまでは」(同氏)
だが会社が目を光らせなければならないのは、自社の従業員だけではない。「企業間の交流が活発になっている現代は、企業間で社内のアプリケーションにアクセスする機会も多い。それは従業員やパートナー、さらには顧客の場合もある」と同氏は言う。
幸いなことに、ここ数年で企業も対応に乗り出すようになった。攻撃や不正侵入に対する基本的な備えの他、パスワード流出への対策も講じ始めているという。「ほとんどの企業は何らかの形で2要素認証をユーザーに強制できる対策を講じている。これでハードルは高くなり、パスワードだけではデータにアクセスできなくなる」とシーグリスト氏は指摘する。
カニンガム氏によれば、パスワード管理には複数のプロセスが必要で、企業への導入には数年掛かる。セキュリティ対策には特定の手順と複数の側面が必要だという。
「これは従業員教育の問題だ。従業員に危険を教えなければならない」というのが、カニンガム氏の考えだ。「会社の会計アプリケーションにアクセスする従業員には、『そのパスワードは人生の他の場面において一切使うべからず』と教え込むべきだ」と同氏は語る。
カニンガム氏はこう続ける。「イスラエルCyberArk Softwareの『Enterprise Password Vault』のように、従業員のためにパスワード生成プロセスの自動化を支援するツールもある。従業員がパスワードを知らなくても、Enterprise Password Vaultにログインすれば、ユーザー用のパスワードが生成される」
SailPointの調査では、有名になった情報流出事件の影響を受けたことがあるという回答も20%に上った。この数字は今後も上昇するとカニンガム氏は予想する。ここ数年で情報流出が増え続ける中、企業がパスワード管理を強化して基本的なセキュリティポリシーを導入すべき時が来ている。もし着手しなければ、防止できたはずの情報流出に見舞われるリスクを冒すことになる。
「顧客情報や知的財産、財務情報の流出について大々的に報じられる次の対象になりたいとは誰も思っていない。世界各国の政府も乗り出して、企業に対してこの分野での対策強化を義務付けている。監査の失敗ほど速く注目を浴びるものはない」。カニンガム氏はそう語る。
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