「Microsoft生まれ」ではないことがネック?
iOS最強ビジネスアプリになりそうな「Outlook for iOS」への期待と不安
米Microsoftはモバイル版「Microsoft Outlook」にセキュリティ機能を幾つか追加した。だが、より大局的な問題の解決には時間がかかりそうだ。その意外な理由とは。
セキュリティの懸念を理由に最近、米Microsoftのメールアプリケーション「Microsoft Outlook」のモバイル版(以下、モバイル版Outlook)を使用禁止にしたIT担当者は、もう一度使用を検討してみるといいかもしれない。
さらにMicrosoftは、「iOS」および「Android」版の「Microsoft Office」(以下、モバイル版Office)に幾つか新しいセキュリティ機能を追加した。「セキュリティ上の欠陥が複数存在する」との批判が上がっていたからだ。さらにMicrosoftはモバイル版Officeのクロスプラットフォーム性を高めるべく、新たなクラウドストレージサービスとの提携も発表した。
Microsoftの公式ブログによると、モバイル版Outlookでは新たに、同期プロトコル「Exchange ActiveSync」を使ったメール同期にパスワード入力を強制できるようにした。この機能を使うと、iOS版Outookの「Outlook for iOS」では、PIN(Personal Identification Number)コードを設定していなければメールにアクセスできないように制御できる。iOS 8.0以降には暗号化機能が組み込まれており、Outlook for iOSはこの機能を使用してデータを暗号化する。
Android版Outlookでは、スクリーンロックのルールの他、パスワードの文字数や複雑さ、端末がワイプされるまでのスクリーンロック解除の試行回数制限などに関するポリシーを強制適用できる。
さらにMicrosoftはリモートワイプの実行を迅速化し、数秒で実行できるようにした。リモートワイプを実行すると、Outlookのメールや予定表、連絡先、ファイルなどのデータが、端末やOutlookのクラウド環境から削除される。リモートワイプの実行はアプリ単位なので、ユーザーの個人的なデータに影響を与えることなくアプリをリセットできる。
Microsoftは今後の計画として、数週間から数カ月後をめどに、モバイルデバイス管理(MDM)ツール「Microsoft Intune」によるモバイル版Outlookの管理を可能にする。またOutlookのクラウドサービスを米Amazon Web Servicesの「Amazon Web Services」(AWS)から「Microsoft Azure」へ移行する計画だという。
こうした改善にもかかわらず、モバイル版Outlookにはまだ、2015年1月末のリリース直後に専門家に指摘されたセキュリティリスクが複数残っている。例えば、ユーザーが複数の端末を使っている場合、その全ての端末でExchange ActiveSyncクライアントのIDが同一になってしまうこと、Microsoftがユーザーのメール認証情報をクラウドへ保存できる状態にしていることなどだ。企業の中には、こうしたリスクを理由にモバイル版Outlookの使用を禁止したところもある。
Microsoftは公式ブログにおいて、端末ごとに異なるクライアントIDを使えるようにする方法を検討中だと説明している。
米調査会社TECHnalysis Researchの創業者で主任アナリストのボブ・オドネル氏は、モバイル版Outlookを企業で使えるアプリにするには、まだ時間と開発が必要だと指摘する。その背景には、モバイル版Outlookが、Microsoftが2014年12月に買収した米Acompliのメールアプリをベースにしていることがある。
「Microsoft製品は非常に多くの大企業で採用されており、同社はこうした企業が対処すべきことには非常に敏感だ。だがモバイル版Outlookは買収によって獲得したアプリである。企業向け市場での経験が少ない新しい担当者たちに対し、Microsoft社内のノウハウの引き継ぎが目下進められているところだ」とオドネル氏は語る。
さらにMicrosoftはモバイル版Outlookの強化を目指し、カレンダーアプリを手掛ける米新興企業Sunriseを買収した。Sunriseの技術を統合すれば、モバイル版Outlookとカレンダーアプリ、その他のアプリの間でより一貫性のあるユーザー体験を提供できるようになるはずだ。
米調査会社Constellation Researchの副社長兼主任アナリスト、アラン・レポフスキー氏によれば、MicrosoftがSunriseとAcompliを買収したのは、Microsoftが個人情報管理(PIM)アプリのユーザー体験の改善に注力していることの表れであり、同社はこうしたアプリをよりIT部門に対してフレンドリーなものにする必要があるという。「こうしたアプリ内で仕事のデータと個人のデータを分けられるようにするというのも、Microsoftが改善できる点の1つだ」と、同氏は語る。
iOS版Officeでは新たなオンラインストレージとの連係を可能に
さらにMicrosoftは、既に発表済みの米Dropboxとの提携に続き、モバイル版Officeに新たなオンラインストレージサービスとの連係機能を追加する。
公式ブログによると、iOS版Officeは既にオンラインストレージとのデータ連係が可能であり、米Boxの「Box」や米Appleの「iCloud」といったオンラインストレージに置かれたファイルを直接Officeから開き、編集や保存ができるようにしている。将来的には、次期OS「Windows 10」で利用可能なユニバーサルアプリ版Officeや、Android版Officeにも同様の機能を追加する計画だという。
Boxは以前から、クラウド版Office「Office 365」との連係でMicrosoftと提携している。だがBoxに保存したファイルには、デスクトップ経由でしかアクセスできなかった。
さらにMicrosoftは、新たにオンラインストレージ事業者向けのパートナープログラム「Cloud Storage Partner Program」を立ち上げた。Webアプリ版Officeの「Office Online」でも、各種オンラインストレージサービスとの連係を可能にするためのプログラムだ。このプログラムでは、各事業者が自社のオンラインストレージとOffice Onlineとを直接連係できるようにする。ユーザーにとっては、各オンラインストレージサービスに保存したファイルをどのWebブラウザからでも開いて編集できるメリットがある。
このプログラムには既にBox、米Citrix Systems、米Salesforce.comの3社が参加しており、今後、参加ベンダーはさらに増える見通しだという。
「ソフトウェアパッケージは、ベンダー1社から提供される方が顧客にとって理にかなっている場合もある。とはいえMicrosoftが、開発者やユーザーが異なるプラットフォームをもっと容易に統合できるように取り組んでいるのは素晴らしいことだ」と、Constellation Researchのレポフスキー氏は指摘する。
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