市場シェアが語る「AWS」「Azure」「SoftLayer」のガチンコ対決模様:競合の攻勢でAWSの成長率は停滞?
クラウド市場のシェアを算出するのは容易ではない。だが、ある会社がデータを組み合わせてこの難題を解き、米Amazon Web Services(AWS)が優勢である状況をはっきりと示した。
クラウド市場シェアの算出はつかみどころがない作業で、米Amazonが「Amazon Web Services」(AWS)の収益を公表するまではっきりしたことは分からない。だが、ある調査会社は、決定的な数字をつかんだと主張している。
AWSの収益の詳細が明らかになるのは、次の四半期だ。そのとき、AmazonはAWS単独の収益を財務報告で初めて公開する。
AWSの収益が分からない中で、米ネバダ州レノにあるSynergy Research Group(SRG)は、クラウドプロバイダーの収益に関するデータを収集して市場シェアを特定した。SRGで主任アナリスト兼マネージングディレクターを務めるジョン・ディンスデール氏によると、データの収集の対象となったのは、四半期調査の結果、公開されている既存の財務情報と収益情報、各社アナリストによる報告、投資家のデータ、製品データ、二次情報源から入手したものだという。
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Microsoft、IBMとの争いに疲れ、成長率は低迷?
SRGのリポート「Microsoft and IBM Chase Amazon while Google Falls Off the Pace」(Amazonを追うMicrosoftとIBM、ペースを落とすGoogle)によると、2014年第2四半期のAWSの成長率は、米Microsoftおよび米IBMとの競争により低迷している。規模の点でAWSの右に出るものは依然としていないが、その後を追う競合4社の合計シェアがAWSのシェアに勝るようになったことが示されている。同四半期のAWSの成長率は、前年比で49%ダウンしている。
SRGによると、2014年第1四半期は前年比67%の成長率が予想されていたが、予想と大きく異なる結果となった。同四半期におけるAWSの市場シェアは28%だった。だが第3四半期には持ち直し、第2四半期で26%に落ち込んでいた市場シェアは27%まで回復した。また、第4四半期には前年比51%の成長率を達成している。SRGでは、AWSの市場シェアが過去5年で最高の30%になると見ている。
AWSは2014年第4四半期に幾つかの新製品をリリースしている。例えば、データベースの「Aurora」、Infrastructure as Code製品の「Lambda」の他、「AWS Key Management Service」「AWS Config」などだ。また、2015年1月から新しいハイエンドC4インスタンスが一般に提供されている。
第3四半期には、Microsoftのクラウド収益が前年比136%増となり、大手クラウドサービスプロバイダーの中で最大の成長率を記録した。その結果、同社は市場シェアの10%以上を獲得した(SRG調べ)。第4四半期の成長率は鈍化して96%にとどまったが、Microsoftは市場シェアの10%強を占め、AWSに次ぐ市場シェア第2位の地位を堅持している。
SRGが算出した市場シェアの第3位と第4位は、IBMと米Googleだ。第4四半期、IBMの推定市場シェアは7%で第3位にランクインした。一方、Googleの推定市場シェアは5%で4位に付けている。Googleは、2014年第2四半期の前年比成長率は47%だったが、第3四半期には80%強となり、第4四半期には81%に達した。なお、ランキング最下位となったのは推定市場シェア3%の米Rackspaceだ。
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議論の余地があるAWSのクラウド市場シェア
市場調査会社の中には、SRGの示す数値が、通常は異なるカテゴリとして扱われるIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)をまとめたものであることを問題視する声も上がっている。
例えば、米Salesforce.comは推定市場シェア4%でRackspaceより上位にランクインしている。だが、この2社が提供するサービスは大きく異なる。これに対して、ディンスデール氏は「この推定値を算出する際に考慮したのはSalesforce.comのPaaSの数値だけで、その他の収益の大半は除外している」と説明する。
また、AWSの収益が約30億ドルであるのに対して、Rackspaceの収益が約4億5000万ドルであるのは、市場シェアの調査結果に比例していないと指摘するアナリストもいる。この指摘に対し、ディンスデール氏は次のように反論している。「調査結果に含まれるのはクラウドインフラサービス関連の収益のみだ。“クラウド”と名前が付くだけで本質は異なるマネージドホスティングサービスなどの収益は除外している」
SRGでは、クラウドインフラサービスの四半期の収益が50億ドルに迫る勢いで、直近の12カ月の収益は160億ドルを超えると見込んでいる。これにはIaaS、PaaS、プライベート/ハイブリッドクラウドが含まれるが、SaaSは含まれない。
クラウド市場のシェアを別調査でも見てみる
クラウド市場のシェアを把握するもう1つの手掛かりとなるのが、米マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くForrester Researchが2014年に開発者を対象に実施した調査だ。この調査では427人のIT担当者に、現在使用頻度が最も高いクラウドプロバイダーを挙げてもらっているが、全般的なランキングはSRGと同じような結果となっている。第1位はAWSで、回答者の24%が名前を挙げている。第2位はMicrosoftで15%、第3位はIBMで12%、第4位はGoogleで11%だった。なお、同社でアナリストを務めるジェームズ・スタテン氏によると、回答者の多くは複数のプラットフォームを利用しているとのことだ。
米マサチューセッツ州マルボロに拠点を置くWikibon.orgでも、現四半期に行った調査結果を発表した。この調査は、クラウドサービスを使用しているか、使用を検討している約300人のIT担当者に対して行われたものだ。メールやビジネスインテリジェンス(BI)などのアプリケーションごとに主要ベンダーを答えてもらっている。
AWSは、テストと開発の用途で人気があり、24%の回答者から支持されている。一方、メールにはGoogleを使用しているという回答が29%あった。ただし、全てのアプリケーションで総合的に最も高い支持を得ていたのはMicrosoftだった。マインドシェアの平均は29%、テストと開発では27%の回答者の支持を得ており、わずかだがAWSに勝る結果となっている。
Wikibon.orgでアナリストを務めるステュー・ミニマン氏は次のように述べる。「Microsoft Azureは急ピッチでエンタープライズ市場に進出している。この成長率が続けば、今後12〜18カ月の間にAzureクラウドの収益はAWSに追い付くことも考えられる」
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