企業がウェアラブルデバイスを安心して使える日はいつ来る?:モバイル管理アプリベンダーCTOが語る
ウェアラブル端末やIoT(モノのインターネット)など、ネットワークにアクセスする新しいモバイル技術が次々と出現する中、企業はどのように対処すべきだろうか。EMMベンダーの幹部に市場のこれからを聞いた。
モバイル技術の進化は絶え間なく、IT技術に強い企業でさえもついていくのが難しいのが実情だ。
スマートフォンとタブレット、またそうしたデバイス向けのアプリケーションは企業に大きな恩恵を与えているが、IoT(モノのインターネット)などの新しいモバイル技術は、管理とセキュリティの面で次々と困難な課題をもたらしている。ウェアラブル端末やIoTデバイスの新製品が市場に続々と登場する中、これらの技術に対する議論は一段と過熱しそうだ。
エンタープライズモビリティ管理(EMM)ベンダーである米Good Technologyの最高技術責任者(CTO)であるニッコー・バン・サマラン氏は、EMMの今後を展望するとともに、社内ネットワークにアクセスする新しいモバイル技術が次々と出現するという状況に企業はどう対処すべきかについて語った。
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――あなたにとって「モダンモビリティ」(最新のモビリティ)は何を意味しますか?
サマラン氏 いつでもどこでも仕事ができるようになるということです。具体的には、会議の情報にアクセスする、携帯電話からメールをやりとりする、大規模なビジネスプロセスワークフローをタブレット上で管理する、状況に応じた情報をウェアラブル端末上で取得するといったことです。
――モビリティ関連で最も重要なトレンドは何ですか?
サマラン氏 比較的小さな画面、あるいはやや窮屈なユーザーインタフェース上で効果的なワークフローを構築するというのが1つ。もう1つは、状況に対応した情報を提供し、ユーザーに過度の負担を強いることのないようにすることです。
人々の生産性を向上させるには、ユーザーの負担にならないように必要な情報だけを提供できるようにすることが不可欠です。ですが情報を状況に対応させようとすると、さまざまなセキュリティ問題が絡んできます。これは一般に、ビッグデータをベースとした機械学習システムを使って関連性の高いデータを判断する際に生じる問題です。こうした処理は社外のサーバを利用するのが最も効果的ですが、これにはセキュリティ面で大きな懸念が伴います。つまりセキュリティと利便性は切り離せない関係にあるのです。
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――企業にとってIoTデバイスをめぐる最大の懸念は何ですか?
サマラン氏 仮に、私の家の冷蔵庫にLinuxコンピュータが組み込まれていて、そのコンピュータは、冷蔵庫の設計は得意だけれどもセキュリティは詳しくない人が設計したとしましょう。この冷蔵庫がハッカーに侵入されたら、どうなるでしょうか。これと似たような多くの問題が既に現れ始めています。
IoTというのは少し曖昧な言葉です。ウェアラブルやセンサー、アクチュエーター(作動装置)など広範なデバイスや機器が含まれるように思えるからです。この用語の意味がもう少し厳密になってからでないと、IoTについて市場で深い議論を始められないのではないでしょうか。
――EMMは今後どこへ向かうと思いますか?
サマラン氏 モバイル活用の推進には、まだ複雑な問題がたくさん残されています。こうした問題が解決されなければ、企業でのモバイルの普及は20〜30パーセント程度にとどまり、技術レベルの高い企業だけがモバイルを活用するという状態が続くのではないかと思います。われわれが目指しているのは、規模の大小を問わず、あらゆる分野の全ての企業がモバイル活用のメリットを享受できるようにすることです。
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