「Tableau」でダッシュボード構築
「市長ホットライン」の電話も分析、BI活用するボストン市の取り組みを見る
ボストン市では、市の運営にデータ分析の手法を取り入れ、行政サービスの改善に取り組んでいる。2014年から現職を務めるウォルシュ市長を中心に進むこのプロジェクトでは、どのような成果が生まれているのだろうか。
ボストン市長のマーティ・ウォルシュ氏は、執務室の机にコンピュータを設置した初めての市長だ。2014年から現職を務めている。
公平に言えば、前市長のトーマス・メニーノ氏は、ボストン市で最も長く市長を務めた人物である。同氏が市長に当選した1993年当時、コンピュータを保有するのはほんの一部の人に限られていた。それはさておき、ウォルシュ氏の変革は市の運営に新たな方法をもたらした。ITの活用を進め、特にデータ分析の手法を取り入れることで、多くの市が直面するさまざまな問題を解決している。
関連記事
データ主導型の経営とは
セルフサービスBIが注目される理由
データサイエンティストの理想と現実
メニーノ氏の政策は、市の運営を支える土台部分を管理するアプローチを基本としていた。それに対して、ウォルシュ氏の政策は、道路整備をはじめ都市運営の細部に至るまでを見渡すアプローチを取っている。また、データを中心とした取り組みによって、行政サービスの効率化も実現した。
ウォルシュ氏のITチームは、BIツール「Tableau」を用いてダッシュボードを構築。公衆安全や犯罪統計、ごみの収集状況などの情報を追跡できるようにした。
「ウォルシュ市長はこうした情報をとても重視している」とボストン市のCIO(最高情報責任者)であるヤッシャ・フランクリンホッジ氏は話す。「いかなる大企業でも見られる光景だ。改善の余地があると分かっていながら、その目的が定まっていなければ改善点を発見することはできないだろう」
だが、ボストン市も大企業と同様に、最新のデータ基盤を構築する上で幾つかの課題に直面した。ウォルシュ氏は市長を引き継いだ際、ボストン市ではデータウェアハウス(DWH)からデータ統合ツール、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールに至るまで、フルスタックのSAPシステム群が稼働していた。
同市のCIO代理を務めるマシュー・メイル氏によると、これらのツールでは、構造化データを用いた静的なリポート生成といった処理が設計通りに動いているという。だが、同市のITシステムには、構造化データに当てはまらないデータが多く存在することが分かった。そうした非構造化データを活用するため、より複雑な最新のデータ分析手法に対応した新たなツールが必要となった。
「ボストン市には、膨大な量のデータが保管されている。構造化データはそのうちのほんの一部を占めているにすぎない。インフラの観点から判断すれば、多種多様なツールが必要だ」(メイル氏)
ITチームは新たなツールの導入を開始した。Tableauでのダッシュボード作成に加え、R言語を用いた分析を行えるデータサイエンティストと迎え入れた。ボストン市はまた、クラウドストレージの導入に向けて、複数のサービスを評価する初期段階にある。
交通量データといった非構造化データの分析にはR言語が有用だとフランクリンホッジしは話す。ボストン市は2015年2月、交通情報アプリを開発するイスラエルのWaze Mobileとデータ共有のパートナー契約を結んだ。その一環として、同市は道路閉鎖などの情報をWazeに提供する。これによりWazeのアプリは、ボストン市の道路状況をより詳細に表示できるようになる。その一方でボストン市には、Wazeが保有する交通情報をリアルタイムに得られるというメリットがある。同市のアナリストは、そうした情報から交通流のパターンを導き出し、信号機が切り替わるタイミングを最適化しようとしている。
最近では、老朽化した高架道路の取り壊しに伴い、最適な迂回路を算出するために活用した。R言語のようなツールは、こうした1回限りのプロジェクトなどでストリームデータを利用するときに柔軟な処理を可能にする。エンタープライズ規模で何かを作り始めるような、長期にわたる製品開発プロセスを経る必要はない。
「われわれは一から新たなツールを作っているわけではない。既に存在するデータを有効利用しようとしているのだ」(フランクリンホッジ氏)
将来的には、より一層多くのソースからデータを収集したいと考えている。メイル氏によると、ボストン市は新たなERPシステムを導入したばかりだという。そこから多くの有益な情報が発信できるかもしれない。そして、コールセンターに蓄積されたデータのマイニングと分析を進めているとした。
例えば、ITチームでは最近、「市長ホットライン」にかかってきた電話の通話履歴を分析した。これは、ボストン市民が近隣問題などの情報を市に提供する電話サービス。特定のサービス要求に至らなかった電話に関する非構造化データを解析した結果、市民からの問い合わせで最も多かったのは、次のごみ収集日がいつなのかという内容であることが分かった。その後、ボストン市では、市民がごみ収集に関する情報を確認できるモバイルアプリの開発に着手した。このアプリは数カ月後にリリースされる予定だ。
われわれは、市民とのあらゆる接点に対して、より迅速に反応できるようになりたい。優れた分析ツールを用いて、人々の要求に沿ったサービスを提供していくつもりだ」(メイル氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 取引先のセキュリティをどう管理する? 「SCS評価制度」対応の勘所を解説 -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] SCS評価制度「★4」取得のカギ 最大の壁を突破する方法とは? -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 2026年度末から運用開始 「SCS評価制度」に備えて製造業がやるべきことは? -
事例
[ネットワンパートナーズ株式会社, アイビーシー株式会社] ハイブリッド環境の一元管理と快適な無線LAN環境、三井ホームはどう実現した? -
市場調査・トレンド
[TD SYNNEX株式会社] 調査で学ぶセキュリティ運用の実態 人を増やさず品質を維持する方法とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
【基本情報技術者試験】そもそもOSは何をしている? 「ジョブ管理」の仕組みを解説
-
5
「SIEMの利用」に関するアンケート
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
OpenAIがコスト半減のGPT-6新モデル投入 Claude猛追とOSS包囲網で激化する価格戦
-
8
【基本情報技術者試験】データを複数ディスクに分散する「RAID」の仕組みと特徴
-
9
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
10
AI自動化が進まない理由の1位は「詳しい人がいない」 従業員300人調査
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
5
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
6
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
7
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
8
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
9
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
-
10
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー