ビッグデータを活用する組織の作り方【第1回】
今すぐ調べたい「BI成熟度」 ビッグデータ活用の体制は整っているか?
企業内におけるビッグデータ活用を促進するには、まずBIが定着している必要がある。今回はその「BI成熟度モデル」の概要を紹介する。
ビッグデータ活用基盤が企業に導入され効果を挙げるためには、それを活用する取り組みとIT、方法論であるビジネスインテリジェンス(BI)が企業に定着している必要があります。
本稿では、まずビッグデータ活用による変革を成功に導く鍵となる「BI成熟度モデル」の概要を紹介します。
さらに連載の2回目では、今後注目が集まると思われる「情報活用組織の進化」について取り上げます。ビッグデータを活用し、業務に定着させるためには、「組織」面の進化も求められるからです。
BI成熟度モデル
BIとは、企業の内外に存在する多種多様なデータを分析し、経営の意思決定に役立てるための取り組みとIT、方法論を総称する概念であり、ビッグデータ活用の要となるものです。
BIが自社でどの程度活用されているかを評価できるのが、「BI成熟度モデル」というフレームワークで、NTTデータが開発しました。企業はこのBI成熟度モデルを用いることで、以下の3点を実現できます。
- 自社でBIがどの程度活用されているかの評価
- 自社が実現したい変革レベルに応じた、到達すべきBI成熟度(あるべき姿)
- 設定したあるべき姿と現状とのギャップを明らかにしたうえでの、打ち手の方向性
以下ではBI成熟度の具体的な内容を紹介していきます。
BI成熟度を示す5つのステージ
図1はBI成熟度モデルのイメージです。5つのステージに分かれていますので、ここではまずそれぞれのステージがどのような状態を指すのかを見ていきましょう。
ステージ1
ステージ1は個別の組織内での計画と実績の管理や、問題事象の検知ができている状態を指します。例えば、営業部門であれば、部署、担当、担当者ごと、エリアごとの成績を月次、週次、日次などで管理する必要があるでしょう。それを計画に対する予実を含め定量的に管理しているとすれば、その組織はステージ1に相当するといえます。
このステージ1では、個別組織のレベルでKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に基づくパフォーマンス管理が実現されている点が特徴です。
ステージ2
ステージ2は個別の組織内で、定量的な根拠に基づき、具体的なアクションを行っている状態を指します。先の営業部門の例でも、問題(成績低下など)を定量的に把握したとしても、その対策を定性的に決めているのでは、ステージ2のレベルだとはいえません。例えば、見込み成約率という定量的な物差しを用いて顧客を順位付けして絞込み、ターゲティングすることで成約率の向上が見込めるでしょう。
このようにステージ2では、パフォーマンス管理で把握した問題点に対し、定量的な根拠を基に意思決定を行えるレベルが必要とされます。いまだ個別組織の範囲ではありますが、現状、ここまでくれば、実は立派な情報活用企業だと思います。
ステージ3
ステージ3は経営レベルの課題について、機動的かつ合理的な意思決定が行われている状態を指します。先の例でいえば、営業部門の枠を超え、調達部門と協調し、販売計画に基づいて商品の仕入れ交渉を行い、ボリュームディスカウントを獲得するよう動くことなどが考えられます。このような活動を行うことができれば、部門だけでなく全社利益の拡大に貢献できるでしょう。
このようにステージ3では、個別組織の枠を超え、全社横断的な視点でパフォーマンス管理を行えている点が特徴です。
ステージ4
ステージ4は、BIを用いて全く新しい業務方式をデザインし、価値創造の仕組みを再構築している状態、さらに新しい仕組みを業務として継続的に維持・強化している状態を指します。ステージ3までは、自社の「調達」部門にとどまっていた連携先が、調達先の「製造」企業にまで及ぶイメージです。販売企業側は「適正な在庫管理による欠品ロス、過剰在庫の低減」が、製造企業側は「需要変動への早期対応」が実現できるようになります。この方式はCPFR(Collaborative Planning,Forecasting, and Replenishment)と呼ばれており、日本でも幾つかの企業群で実現されています。
このようにステージ4では、利害関係者の範囲が社内組織だけにとどまらず、取引先など社外にまで広がることが特徴です。
ステージ5
ステージ5は、BIを活用して知的サービスを提供している状態を指します。例えば、書籍ECサイトなどで行われているレコメンド(お勧め)サービスや、金融機関などで導入されているマネーロンダリング(資金洗浄)対策サービスなどを提供している企業が該当すると考えられます。
ステージ5では、BIがビジネスの付加価値ではなく根幹技術となっている点が特徴ですが、現状ではこのステージに到達している企業はほとんどないでしょう。ただ、大企業になれば事業内容も多岐にわたり、必ずしも全ての部門の根幹技術がBIとなる訳ではないため、適切なステージを目標に据える必要があるでしょう。
BI成熟度を捉える視点
次に、BI成熟度を捉えるための視点を紹介します。
「業務」でBIを活用し、実際に意思決定を行うのは社員、つまり「人」であり「組織」です。またそれを支える「システム」が整備されていなければ、効果が限定的になってしまうでしょう。これを踏まえ、BI成熟度では「業務」「システム」「人/組織」という3つの視点から成熟のレベルを定義しています。ここでは視点ごとに概要と測定のポイントを紹介します。
業務
業務の視点とは、現状の業務がどの程度、BIを活用できる状態になっているかということを測るものであり、「業務プロセス」「KPI」「分析」の3つの要素から見ることができます。要素ごとのポイントは以下の通りです。
- 業務プロセス:どの程度定義・標準化されているか、定義されている組織範囲と一貫性、整合性が取れているか
- KPI:予実管理ができているか、経営と現場のKPIに一貫性があるか、KPIが関係組織で共有されているか
- 分析:集計・可視化されたKPIが活用されているか、改善のサイクルが回っているか、分析結果の活用方法が事前に計画できているか
システム
システムの視点とは、BIを支えるシステムがどの程度整備されているかを測るものであり、その要素としては「データ基盤」「システム運用」「機能」の3つの要素から見ることができます。要素ごとのポイントは以下の通りです。
- データ基盤:データウェアハウス(DWH)に必要な情報が収集されているか、データ品質が保たれているか、データの定義に一貫性があるか
- システム運用:KPIの集計や分析がタイムリーに出るか、要件の変更にスムーズに追従できるか
- 機能:分析基盤としてBIツールが導入されているか、定期的なリポートが自動化できているか、利用者の成長に応じてBIシステムが進化できているか
人・組織
人・組織の視点とは、個人および組織のレベルで実際にBIを活用する能力を有しているかを測るものです。このとき着目すべき要素は、「文化」「BIリテラシー」「体制」の3つであり、要素ごとのポイントは以下の通りです。
- 文化:事実データを見る、事実データから合理的に意思決定する、トップが率先して事実データを要求する文化が根づいているか
- BIリテラシー:KPIのリポートを理解し、意思決定できるか、業務課題から仮説を構築し検証できるか、情報分析・活用のレベルに応じてBIツールを利用できるか
- 体制:情報システム部門にBIのエンジニアを確保できているか、ユーザー部門にBIを組み込めるような全社支援体制があるか、会社全体としてマスターデータ管理を実現できる体制があるか
BI成熟度活用のポイント
ここまで、BI成熟度のステージごとの概要と評価ポイントを見てきました。それでは自社が目標とするBI成熟度に到達するためにはどこに注意すればよいでしょうか。ポイントをステージごとに見ていきましょう。
ステージ1:個別組織内でBIツールを利用し、計画値と実績値の「見える化」ができている状態
- 業務:業務のさまざまな面にKPIによるパフォーマンス管理を取り込むよう、プロセスやルールを見直す
- システム:DWHやBIツールを導入し、必要な水準にデータ品質を保つ
- 人・組織:トップが率先して「事実」で語る文化を根付かせる
ステージ2:定量的な根拠に基づき効果的なアクションを行っている状態
- 業務:BIを活用した仮説検証プロセスを確立し、業務の中に組み込む
- システム:個別組織あるいは個別業務の範囲内でマスターデータ管理を実現する
- 人・組織:BIを活用した仮説検証を行い、事実データを基に意思決定を下す文化を定着させる
ステージ3:経営レベルの課題に対して、機動的かつ合理的な意思決定をしている状態
- 業務:経営レベルのKPIと現場レベルのKPIを連動させる
- システム:全社レベルでマスターデータが整備され、それを用いたデータ統合を実現する
- 人・組織:経営レベルの課題に対処する業務支援組織のBI機能を強化する
ステージ4:BIによって価値創造の仕組みを再構築し、その仕組みを業務として継続的に維持・強化している状態
- 業務:社外の利害関係者と協業して業務方式の見直しを行い、価値システムの全体最適化を図る
- システム:取引先などの社外の利害関係者も含めた情報連携が行われており、互いの情報を共有できるデータ基盤を整える
- 人・組織:業務改革を定着させるための支援組織を整備し、その組織のBI機能を強化する
ステージ5:BIにより知的なサービスを提供している状態
- 業務:BIを活用したサービス・モデルを構築・維持すること
- システム:取引先だけでなく顧客も含めた情報連携が行われており、互いの情報を共有できるデータ基盤を整える
- 人・組織:サービス推進担当者がBIを深く理解している
なお、目標とするBI成熟度に到達するためのポイントを、図2にまとめていますので、参考にしていただければ幸いです。また今回は概要の紹介にとどまっておりますので、ご興味のある方は、記事末尾の参考文献もご一読いただければ幸いです。
おわりに
今回はビッグデータ活用の鍵となるBI成熟度の概要を紹介しました。「業務」「システム」「人・組織」の観点はどれも重要ですが、ビッグデータ活用の現状から考えると、今後注目が集まると思われるのは「人・組織」の側面です。次回はそこに着目し、いま起きようとしている「情報活用組織の進化」について取り上げる予定です。
参考文献:BI革命 NTTデータ技術開発本部ビジネスインテリジェンス推進センタ(著) ISBN-13: 978-4757122468
野村 哲郎(のむら てつろう)
株式会社NTTデータ ビッグデータビジネス推進室。NTTデータにおける、ビッグデータ/ビジネスアナリティクス専門チームに所属。データ分析方法論「BICLAVIS」や、情報活用コンサルティングの中心人物として携わる。
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ビッグデータを活用する組織の作り方
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