勘と経験でデータに基づく決定に横やり
データ活用を阻む社内の「HiPPO(影響力を持つ高給取り)」とうまく付き合う方法
企業がデータの分析結果を重視してデータ駆動型の組織へと進化することを妨げているものは何だろうか。実際には何の関連もないが、水中を好む大型哺乳類と同じ名前というのがヒントだ。
米マサチューセッツ工科 大学(MIT)の主任科学研究員を務めるアンドリュー・マカフィー氏は、ブログ「SAS Premier Business Leadership Series」の最近の記事で「組織内で影響力を持つ高給取り」(HiPPO:Highest-Paid Person's Opinions)が不動の巨獣のように立ちはだかり、効果的なデータ駆動型の意思決定を阻んでいると述べている。
同氏は、データの分析結果を重視している多くの企業でよく見られる例を挙げた。このような企業では、データチームが最適な戦略または行動指針を策定するためにデータ分析を行うことが多い。だが、社長や経営幹部レベルの役員などのHiPPOは、自分たちの本能的な直感や知識など、他の要素を加味してデータを検討する。その結果、データの効果は最小限になり、組織による意思決定の全プロセスがデータ主導ではなくなる。
同氏によると、HiPPOと見なされる企業幹部の多くは、自らの直感や経験を加味するプロセスに価値があると考えている。結局のところ、彼らは自分たちの長年の経験と深い専門知識を周囲に誇示したいのだ。だが、いわゆる専門家が本能的な直感で下す意思決定は、データ駆動型の意思決定よりも、悪い結果をもたらす可能性が高いことを示す、さまざまな証拠が挙がっているとマカフィー氏は話す。その1つとして、同氏は米ニューヨークタイムズでブログを持っていたネイト・シルバー氏の功績を例に挙げた。シルバー氏は、統計分析に基づき2012年の米大統領選挙で全米50州の勝敗を見事に的中させた。
また、マカフィー氏は、米ミネソタ大学で行われた研究「Clinical Versus Mechanical Predictions: A Meta-Analysis」(臨床的予測と機械的予測:メタ分析)を紹介した。この研究では、専門家の意見よりもデータモデルに基づいた方が、はるかに正確に人間の行動を予測できると報告している。企業に居座る専門家の影響力を抑えるには、「新しい意思決定プロセスの方向性を見いだす必要がある」と同氏は話す。
「データ駆動型の意思決定が適切なプロセスであることは間違いない。だが、HiPPOの発言力を完全に抑えることはできないため、データ駆動型への方向転換は一筋縄では行かないだろう」(マカフィー氏)
一方、マカフィー氏は、データは万能ではないため、高給取りの企業幹部は意思決定プロセスの一翼を担うべきだとも指摘する。
例えば、小売業者がデータ駆動型の意思決定を行うと、常連客や売り上げの増加に効果的な広告の種類を特定できる。だが、データ駆動型の意思決定では、売り上げの増加を見込める客層や競合他社との比較順位を判断することはできない。このような場合には企業幹部による判断が求められる。つまり、企業幹部の意見は、意思決定プロセスの終盤ではなく、問いかけの内容が一般的な序盤に取り入れる必要があるとマカフィー氏は話す。
英小売企業Tescoの元CEO、テリー・リーヒー氏は、ビジネスが最大の成功を収めるのは顧客の声に耳を傾けたときだと述べている。顧客の声に耳を傾ける最も効果的な方法は、販売キャンペーンの企画や取り扱う製品を決定するときにデータを使用して意思決定を行うことだ。
「データは顧客の声だ。組織の中心に据える必要がある。最終的には、顧客の声はCEOの意向よりも優先されるべきである」とリーヒー氏は話す。
だが、リーヒー氏は、現代の企業文化においてこのような意思決定プロセスを優先することの難しさも認識している。現在、多くのCEOはデータに基づいて意思決定を行うことを拒んでいる。また、データに重要な役割を与えることに抵抗を示す可能性もある。
データ駆動型の意思決定プロセスの導入に難色を示す上層幹部を納得させるには、データの分析結果を提示するときに、「データがどのように顧客の動向を示しているのか」をアナリストが説明することを、リーヒー氏は推奨している。アナリストは統計に基づいて報告することが多い。このような報告では、幹部は混乱するか、退屈な内容だと判断し、データ駆動型の意思決定プロセスの価値を認めてもらうのが難しくなる。だが、データが示す顧客のライフスタイルや好みなど、顧客の動向についての内容であれば理解できるだろうとリーヒー氏は話す。
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