「AIに仕事を奪われた」は本当か
IT業界で相次ぐ人員削減の“隠された理由”
2026年、IT企業で12万7000人超が人員削減の対象となり、9万7000人以上がAI関連という調査結果がある。一方、人員削減を正当化する理由としてAIが使われているという指摘がある。では、本当の理由は何か。
AIの普及に伴い、「AIに仕事を奪われるのではないか」という不安が広がっている。実際、企業が人員削減を発表する際に、AIへの投資やAIによる業務自動化を理由として挙げるケースもある。
IT業界のレイオフに関する情報を集約し、データベースを公開しているLayoffs.fyiによると、2026年には、IT企業で12万7000人を超える人員削減が発生した。そのうち9万7000人以上は、AI投資のための資金確保、人間からAIへの置き換え、AIによる市場環境の変化などと関連付けられているという。
しかし、「AIが人間を置き換えた」は、こうした人員削減の本当の理由なのだろうか。
AIを導入しても「人を解雇する」とは限らない
TechTargetは2026年夏、CIOやアナリストを集めて座談会を開催した。その際、「AIに置き換えるために従業員を解雇したか」と質問したところ、圧倒的多数の回答は「ノー」だったという。
AIが従業員の業務を代替しても、その従業員を解雇するとは限らない。再教育を施し、別の職務に配置する企業もある。その一例がServiceNowだ。同社ではサービスデスク業務の90%をAIエージェントが担う一方、AIエージェントによって従来の役割を置き換えられた従業員の85%について、スキル向上や再教育を実施し、別の職務に配置転換したという。
つまり、AIエージェントが従業員の担当業務を代替しても、その人を解雇するとは限らない。再教育を施し、別の職務に配置する選択肢もある。
TechTargetのIT Strategyチームでシニアマネージングエディターを務めるサラ・アムスラー氏は、「AIはまだ人間を全面的に置き換えられるほど成熟していない」と指摘する。生成AIが一般に広く知られるようになったのは、OpenAIが2022年11月に「ChatGPT」を公開してからであり、本格的な普及が進んだのは2023年以降だ。AIには依然として誤りがあり、人間による監督も必要だ。
人員削減の裏にある「3つの事情」
では、企業が「AI」を人員削減の理由として挙げる場合、その背景には何があるのか。
アムスラー氏は、「既に決まっていた経営判断を説明するための便利な道具としてAIが使われる場合がある」と指摘する。具体的には、主に3つの場合がある。
1つ目は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期に増やした人員の調整だ。パンデミック期に従業員を積極的に採用した企業が、その反動として現在、人員規模を縮小しているケースがある。
2つ目は、AIインフラへの投資資金の確保だ。AIを運用するためのデータセンターなどには巨額の投資が必要になる。そのため、人件費を含む既存の支出を削減し、AI関連の設備やサービスへ資金を振り向ける経営判断が考えられる。
3つ目は、株式市場や投資家を意識した経営判断だ。AIを早期に導入する企業が市場で評価されることがあるほか、人員削減によるコスト削減自体も投資家に好意的に受け止められる可能性がある。
この場合、AIが直接人間の仕事を代替したから人員を削減したのではなく、「AIへの投資を増やすために別の費用を減らした」という構図になる。
「AIに置き換えた」と説明することのリスク
人員削減の本当の理由を明らかにせず、「AIに仕事を置き換えられた」と説明することにはリスクもある。
「従業員に本当の理由を説明しなければ、社内で経営陣への不信感が高まり、優秀な人材の離職につながる恐れがある」。アムスラー氏はこう警告する。企業ブランドだけでなく、テクノロジー戦略を担うCIO自身の信頼性を損ない、将来的な人材採用を難しくする恐れもある。ではどうすればいいのか。
アムスラー氏は、パンデミック期に過剰に採用した従業員数を是正するのであれば、その通り説明すべきだと説明する。成長予測を達成できなかったことによる組織再編も、AIインフラや別の事業へ経営資源の移管であっても、その事実を説明するように企業に薦める。
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