AIは従業員の「敵」ではない ──組織再編でCIOが求める人材の絶対条件とは?
AIが人間の仕事を奪うという言説が広がる中、JPモルガンなどのCIOたちは「AIは代替ではなく増幅器」だと一蹴する。大手テックの解雇はAI置換のためではなく、AI投資の予算捻出という側面が強い。将来的に必要なのはAIに置き換わる人材ではなく、AIを使いこなし高付加価値を生む人材であると説く。
AIは仕事の進め方を変えるかもしれないが、大半のCIO(最高情報責任者)は「AIは従業員に取って代わるものではない」と口をそろえる。
あらゆる業界の企業が、生産性の向上や定型業務の自動化、競争優位性の獲得を目指してAIの導入を急いでいる。一方で、注目を集める大手企業のレイオフや「AIがナレッジワーカーを置き換える」といった主張が、雇用への影響に対する懸念をあおっている。CIOにとっての論点は、AIが従業員の代わりになるのか、それとも既存のチームがより多くの成果を出すための道具になるのかという点だ。
TechTargetは4人のCIOと業界アナリストに、自社で従業員を解雇してAIに置き換えた事実があるかどうかを尋ねた。回答から浮かび上がったのは、大半の企業がAIを「人員削減の手段」ではなく、「従業員の能力を拡張し、効率を高め、業務の在り方を再定義するための手段」と見なしている現状だ。
本記事では、それぞれの見解を紹介する。
エグゼクティブサマリー
AIが組織内で従業員に取って代わったかどうかについて、CIO(最高情報責任者)やアナリストは次のように述べている。
- AIは従業員を置き換えるのではなく、その能力を拡張するものである
- 大半の企業は、生産性の向上や定型業務の自動化のためにAIを活用している
- 大手テック企業のレイオフ(一時解雇)は、大多数の業界の実態を反映したものではない
- 企業はAIによって人員を削減しているのではなく、AI投資の資金を捻出するためにコスト削減を行っている可能性がある
- CIOは職務やチーム構造の変化を予測しているが、AIを使いこなせる人材が必要であることに変わりはない
AIに従業員を置き換えるためにレイオフを実施したか
「AI時代に求められる人材像」に関連する編集部お薦め記事
スティーブ・ブロンソン氏(米酒類卸売り最大手のサザン・グレーザーズ・ワイン・アンド・スピリッツCIO)
「いいえ、AIに置き換えるために誰かを解雇したことはありませんし、今後その予定もありません。私たちはAIをそのようなものとは考えていません。AIは私たちの能力を拡張し、今いる人材の力を何倍にも引き出す存在だと捉えています。
AIを正しい方法で活用することは重要です。しかし、従業員を置き換えることは私たちの計画には含まれていません」
クリス・キャンベル氏(米デブライ大学CIO)
「私が身を置く高等教育の世界では、この問いは二つの側面で興味深いものです。私たちは技術教育を施す立場にあります。
昨今の言説は、現実の実態と一致していません。『これらの企業は皆、AIのせいでレイオフをしている』という話は、正確ではありません。企業が人員を整理しているのは、AIへの投資資金を確保するために、経費項目に余裕を作ろうとしているからです。
また、求人数や募集広告の数に減少は見られません。『Claudeがコードを書くから、開発者はもう不要だ』と言う人もいるでしょう。しかし、実際には開発者の求人は山ほどあります。決算説明会で何を語っていようと、市場の現実は世間の言説とは一致していないのです。
はっきり言えば、私たちの正解はAIの資金調達のために人員を削減することではありません。私たちは、AIを使って生産性を高め、人々の働きを倍増させ、付加価値の低い業務を自動化することに注力しています。これにより、チームは顧客へのより質の高いケアに時間を割けるようになります。
私たちはAIを活用して効率化を推進していますが、それはあくまで道具箱の中の1つの道具にすぎません。例を挙げましょう。当大学は7年間にわたって授業料を据え置いています。学生のために授業料を上げないことは、私たちのDNAの根幹です。これは当然、経費を圧迫します。組織が成長すれば、アドバイザー1人が担当するポートフォリオの規模も大きくなります。私たちはそれを実行可能かつ効果的なものにする方法を見つけなければならず、AIはそのための道具の1つなのです」
ショーン・サフィエ氏(SedgwickのCIO)
「私たちは、AIをアジャスター(損害調査員)や審査官の効率を高めるための競争優位性と捉えています。必要な情報を即座に引き出し、請求処理のスピードを上げることができます。
私たちが目指しているのは、効率の向上や担当者の習熟時間の短縮だけではありません。処理が迅速化され、必要な道具が提供されることで、クライアントや請求者はより良い体験を得られるようになります」
ブライアン・ジャクソン氏(Info-Tech Research Groupプリンシパル・リサーチ・ディレクター)
「さまざまな業界のCIOと話をしていますが、大量の人員を解雇してAIに置き換える計画があるという話は聞いたことがありません。一部のテック企業がそのような発表をしているのを読むと、そこには広報的な意図があるのではないかと感じます。レイオフを行う際、『事業の焦点が変わった』とか『収益目標に届かなかった』と言うよりも、『AIによってプロセスを最適化した結果だ』と言う方が聞こえが良いからです。時には行間を読む必要があります」
ギル・ハウス氏(米JPモルガン・チェースCIO)
「『AIが人に取って代わるか』という問いではありません。将来生き残るのは『AIを使いこなす人』であり、それはさまざまな形で現れるでしょう。第一に、組織の在り方が少し変わるかもしれません。第二に、AIによってより多くのことがこなせるようになり、自分がやりたいことに集中できるため、生活の質が向上するかもしれません。一部の役割は変化したり消滅したりするでしょうが、私たちは人々を訓練し、別の役割を担えるようにしていきます。
しかし、この道のりはまだ始まったばかりです。技術は新しく、私たちはそれがどう機能し、どのような運用が適切なのかを学んでいる段階です。世界は変わり、チーム構造も進化するでしょう。しかし、過去から変わらない以下のような課題があります。
- 技術の使い手となる人材がいるか
- 追求すべき適切なアイデアがあるか
- それを支えるブランドがあるか
将来重要になるのは、この3点です。AIを使いこなし、アイデアと判断力を持った人材が必要になります。ブランドは既にあります。正確に何が起こるかを予測するのは時期尚早ですが、変化は確実に訪れます。そして、この技術は将来、あらゆる業務の一部となっていくでしょう」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社ビザスク] 製造業の新事業創出 成功の鍵は「タラレバ問題克服」と「3つの判断ポイント」 -
製品資料
[日本シーゲイト株式会社] 実験のやり直しを防止 研究データ基盤に求められる高可用性ストレージとは -
製品資料
[株式会社Leaner Technologies] もっと安く買えるのに…… 間接材購買で“コスト削減機会”を逃さないためには -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] フィールドサービスの熟練技術者が「AIエージェント」を求めている理由 -
製品資料
[株式会社グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタンス] 基礎から分かる「就労ビザ」 アメリカ進出を目指すなら知っておきたい取得戦略
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
2
仮想化環境の死角を“未知の脅威”が狙う時代――新たな敵をどう見破るか?
-
3
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
4
高額GPUを買っても成果ゼロ? 「プライベートAI」の落とし穴
-
5
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
6
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
7
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
8
AppleのMシリーズチップからSafariの閲覧履歴を暴く「TIDE」攻撃とは?
-
9
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
10
Claude Opus 5.5は20%値下げでも割安とは限らない 情シスが測るべき5指標
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
登録セキスぺが語る「SCS評価制度」の舞台裏 星を取得すべき理由と対応のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
OSSでは困難 100超のサービスを持つマネーフォワードが実践した統合監視術
-
4
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
5
月1000枚の紙を削減 9年動けなかった組織が、業務改革のその先に得たもの
-
6
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
7
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
8
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
-
9
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー