求められるトヨタ的な継続的プロセス改善
Amazon.comに学び始めた小売業、要求されるスキルとは?
オンライン小売業には今後、新しいタイプのアクション志向のビジネスインテリジェンス(BI)が要求される見込みだ。それはつまり、「科学者やアナリストなど知識労働の工業化」であるという。
下着のオンライン通販会社Figleavesの創業者で、eコマース関連のソフトウェア/サービスを提供するeCommeraのチーフサイエンティストであるマイケル・ロス氏によると、オンライン小売業には新しいタイプのアクション志向のビジネスインテリジェンス(BI)が要求されるという。
元McKinseyのコンサルタントで、英ケンブリッジ大学において数学を修めた同氏は、「科学者やアナリストの知識労働を工業化するeコマース(電子商取引)は、今後極限まで拡大する」と主張する。
「産業革命が起こり、職人が工場労働者に替わった200年前とよく似た状況だ。当時、一部の人々はこう考えたに違いない。“職人でもない工場労働者が作ったものなど、一体誰が買うというのだろう?”」と同氏。
eコマースはトヨタ的な継続的プロセス改善
ロス氏は、米Amazon.comの創業者であるジェフ・ベゾス氏を「電子商取引はTesco(世界的にチェーン展開している英国のスーパーマーケット)よりも、むしろトヨタの継続的プロセス改善に負うところが大きい」とする経営哲学の草分け的存在と見る。
「電子商取引と実店舗を展開する小売業を比べた場合、後者はほんの少しのデータ量で経営することができる。いま仮に100店舗あったとしよう。それでも、商品別に在庫を確認すれば、売れ筋の品目をかなり正確に把握できるはずだ」と同氏。
さらにロス氏はこう続ける。
「Tescoのようにデータマイニングに取り組めば大きな可能性があるにしても、それは事業の成功に絶対必要なものではない。実店舗型の小売業の経済構造は、比較的シンプルに全体の状況を把握することができるのだ」
オンラインでは、10人いれば10通りの売れない原因がある
一方、オンラインの世界は事情が少し異なる。経営者は、マーケティングやマーチャンダイジングの最適化を図るために、日常的に膨大な量の意思決定を行わなければならない。さまざまな判断を下すために、大量のデータと格闘する必要がある。
マーケティング、マーチャンダイジング、Webサイト管理の間に相互依存のオンラインが存在する。意思決定の構造はより一層複雑だ。
例えば、実店舗の小売業の場合、商品は売れるか、売れないかのどちらかだ。ところが、オンラインの世界ではどうだろう。もしジーンズが売れなければ、Webサイトの表示方法に問題があるのか、それともサイト階層の問題か? 実際、オンラインで製品が売れない場合、そこに10人いれば10通りの原因が考えられるのだ」
Figleavesの場合、同Webサイトで販売する衣類の並び替えの問題である可能性もある。
ロス氏によると、オンライン小売業は結局、同氏がいうところのコントロール可能な“インプット”が要となる。Amazon.comは「本物のフルフィルメントビジネスだ」と同氏はいう。インプットの例として、同氏はページ加重価格優位性を挙げる。
「トップビューの製品は価格優位性を持ちたい。そのためのアクションは何か。それは値下げだ。同様に、顧客に向けて約束通り出荷しているか? それもまたコントロールできる部分であり、まさに企業努力を傾注すべきところだ」とロス氏。
「電子商取引は、Tescoより、むしろトヨタ的である。データを基盤に置く意思決定の工業化だ。それはデータ分析の専門部隊を持つことではない。そこは自動化できる。実店舗型小売業は非常に視認性が高いが、オンラインは相互接続プロセスが多く、どちらかといえば生産ラインに似ているのだ」
技能職の単純労働化
同氏は、産業革命との類似性について、さらに論を進める。すなわち技能職の単純労働化だ。「この段階は、知識労働者をアルゴリズムに置き換えることに他ならない」と同氏はいう。
ロス氏が現在チーフサイエンティストを務めるeCommeraは、電子商取引関連のソフトウェアとサービスを提供しており、同氏自身も「Decision Intelligence(意思決定インテリジェンス)」というジャーナルを発行する。同社のDynamicAction製品は、ダッシュボード上に400種類のアクションを表示するものだ。
顧客には、Asda Direct、House of Fraser、ロンドン・ジャーミン街のテーラーT.M. Lewinなどが含まれる。
「eコマース企業には非常に多くの微細なアクティビティがあり、それらを意味のあるものにするために膨大な数のリポートが必要となる。だが、それらを管理することは容易ではない。なぜ異なるアプローチが必要なのか。それは、そうした膨大な数のリポートを活用する何らかの方法が必要であるからだ。利益に影響を与える度合いを予測し、リポート/アクションの優先順位を決定する手法が求められている」とロス氏は語る。
「利益からインプットまでドリルダウンして、どのようにすれば上手くいくか経営者が理解できるようにすることも重要だ」
統合化が進む小売業界
また、小売業界においても近年、統合化の期は熟している、とロス氏はいう。「例えば、SportsDirect.comだ。あそこはここ数年、さまざまな企業を買収している。いずれ成功のカギを解読したコングロマリットが台頭してくるだろう。彼らは小売業を規模の経済で、もっと収益性の高い、効率的なビジネスに変えるはずだ。ほとんどの産業において統合化が進んでいるが、小売業界はまだそうなっていない。まだまだ家族経営の“パパママショップ”が多いのが現状だ」
最後にロス氏は、「小売業は今日、非常に厳しい経営環境にある」と指摘している。
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