IT、製品、マーケの3本柱でサービスを改善
話題のカーシェアZipcarが明かす「全ての決定の裏にデータあり」
カーシェアリングの草分けとして知られる米Zipcar。同社のマーケティング部門は、あらゆる経営判断にデータを生かそうと知恵を絞る。
米国ではカーシェアリングが一種の流行になっているが、その背景にはZipcarという米企業の存在がある。2000年にスタートした同社のカーシェアリングサービスでは、1年契約の会員になれば車を短期間レンタルできる。このシステムを考案したのは同社ではない(この種のサービスはヨーロッパで始まった)が、同社はカーシェアリングをデジタル時代に適応させた。そして今、同社は再び変革の先頭に立とうとしている。
さまざまな物を一時的に所有するという“コラボレーション型消費”のトレンドは、マサチューセッツ州ボストンを拠点とする風変わりな新興企業にすぎなかったZipcarが、伝統的なレンタカー会社にとっても無視できないビジネスモデルを生み出す原動力となった。
大手レンタカー会社の米Avis Budget Groupは2013年1月、Zipcarを5億ドルで買収した。これによりAvisとZipcarは、米Hertzなどのライバル企業との競争で優位に立てるようになった(Hertzは2011年に自社サービスを拡張し、ブランド名も変更した)。AvisとZipcarは、所有者の車を貸し出すシェアリング方式のレンタルサービスを提供する新規参入組と戦うための力も手に入れた。
だが“Zipster(ジップスター)”とも呼ばれるZipcarユーザーの間には不安も広がっている。「買収の結果、自分たちが契約しているサービス独自の魅力が失われるのではないか」という懸念だ。
こうした懸念に対処する上で重要な役割を果たそうとしているのが、2013年2月にZipcarに入社したブライアン・ハリントン氏である。最高マーケティング責任者(CMO)という立場でZipcarのブランド管理を担当する同氏は、同社のビジョンに合致する新たなパートナーを探すとともに、同社の会員を維持・拡大するという任務を背負っている。
ハリントン氏は上記の任務を果たすべく、時代を一歩先取りし、さらにきめ細かくパーソナライズされたサービスを会員に提供する手段を模索している。この手段として同氏が期待しているのが、データ主導型マーケティングの導入だ。「そのためには、IT部門と緊密な協力関係が必要になる」と同氏は語る。
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「会員に素晴らしいエクスペリエンスを提供するという目標を達成できるかどうかは、データをいかに収集し、そのデータをいかに解釈するかに懸かっている」とハリントン氏は話す。「成功は、ITと製品とマーケティングの3つの要素の産物であるという考え方が重要だ」
データ主導型マーケティング
ハリントン氏によると、Zipcarのマーケティング部門では、どのような決定に際しても必ず最初にデータを確認するようにしているという。同社は、どの地域に新たな支店を展開するかというマクロな経営判断にデータを活用。その一方で、全ての顧客に「自分は特別扱いされている」と感じてもらうための施策などのミクロな判断に際しても、データをどう活用すべきかについて同氏は思案している。
「当社の成功には、会員との強いつながりと、そのつながりのパーソナライズが欠かせない」とハリントン氏は説明する。「どんなビジネスでもそうだが、会員を獲得するのには多額の費用が掛かる。言い換えれば、会員の獲得のためよりも会員をつなぎ止めるためにお金を使う方がずっと効果的ということだ」
幸いにも、Zipcarとユーザーとの間では、多数の接点でデータが生成される仕組みになっている。オンラインでの車の予約(最近はスマートフォンでの予約が増えている)だけでなく、車のロックを解除するためにRFID(無線ICタグ)対応の会員カードを読み取る際にもデータを収集する。さらに、GPSなどの位置情報技術のおかげで、車を運転するときにも走行時間や位置情報といったデータが生成される。後は、こうしたデータソースから新しいビジネスチャンスにつながる可能性のあるパターンを引き出すだけだ。
「ある特定の走行パターンが、近い将来に海外旅行をする可能性が高いことを示しているとしたらどうだろう」とハリントン氏は問う。「それが分かれば、当社がまだ生かせていないマーケティングのチャンスが開ける可能性がある。さらにもう一歩進んで、当社のデータを製品化して顧客に提供するというのはどうだろうかと考えている」
Zipcarは、同社のビジネスで毎年どのくらいの二酸化炭素(CO2)を排出しているかを把握しており、「こうしたデータをパーソナル化し、顧客にとって有意義な情報にする」というアイデアにも同氏は関心を抱いている。開発の初期段階にあるコンセプトの1つが、顧客が環境に与える影響を定期的に顧客に報告するというものだ。
「こうしたデータを、他の交通手段(自転車シェアリングプログラムや公共交通手段など)から得られる外部データと組み合わせれば、ユーザーのカーボンフットプリント(CO2排出量)がどの程度かを知らせることも可能だ」と同氏は話す。
先ごろ開催された「都市のスマート化」をテーマとしたイベントで、ハリントン氏はこう語った。「『何がベストか』という視点に立てば、新たな可能性が見えてくる。交通渋滞が激しい都市環境で、目的地に到達するまでの最後の数キロにおいて『何が最善の手段なのか』と問い掛けることだ。Zipcarは一部の人々にとって素晴らしいサービスだが、他にもモデルは存在する。これらの点と点をつなぎ合わせる方法を考え始めなくてはならない」
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