2013年04月18日 08時00分 UPDATE
特集/連載

予測分析製品紹介:日本IBM編日本航空も活用、DWHでビッグデータ予測分析も可能な「IBM SPSS Modeler」

日本IBMの「IBM SPSS Modeler」は、簡単な操作でデータマイニングや統計解析ができる予測分析製品だ。DWHと組み合わせることで大量データを利用した予測分析も可能になる。

[富永康信,ロビンソン]

 顧客の嗜好や市場環境の急速な変化は、企業に迅速な意志決定を求める。蓄積された過去のデータに反応するだけのリアクティブな意思決定ではもはや不十分であり、データを基に将来を見越したプロアクティブな意思決定の重要性が高まっている。そこで注目すべきなのが、データマイニング統計解析を利用し、データを基にした将来予測を可能にする「予測分析」製品だ。

 本連際では、予測分析を実現する代表的な製品を紹介していく。1回目となる今回は、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)のデータ分析製品群「IBM SPSS」のうち、データマイニング機能を中心とした予測分析製品「IBM SPSS Modeler」(以下、SPSS Modeler)にスポットを当てる。

連載:予測分析製品紹介


製品の概要:3種の機能で予測分析を支援

写真 「データマイニングで顧客1人ひとりの考え方を的確に理解することが企業の競争力を左右する」と語る、日本IBMの飯島 実氏

 SPSS Modelerは、販売管理生産管理といった業務システムが生み出す大量のデータを分析する機能を持つ。独立変数と従属変数の間の関係を定量的に推計する「回帰分析」、人口知能によるシミュレーション技術である「ニューラルネットワーク」などの手法を利用し、データを将来予測に生かす。「用途はさまざまだが、特に顧客の動向を分析し、今後の行動を予測するためのソフトウェアという位置付けだ」。こう説明するのは、日本IBMソフトウェア事業 ビジネス・アナリティクス事業部 SPSS クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ 部長の飯島 実氏である。

 SPSS Modelerは、予測分析を迅速に実行するためのワークベンチ(作業台)としてデザインされている。分析フローは、各種分析機能とひも付けられたアイコン(ノード)を矢印でつなげることで作成できる(画面1)。

画面 画面1:SPSS Modelerのコンセプトは、予測分析を迅速に実行するためのワークベンチだ。分析機能を持つアイコンを矢印でつなげるだけで分析フローを作成可能《クリックで拡大》

 SPSS Modelerは、主に3つの分析機能を持つ。1つ目はデータに潜むパターンの発見だ。パターンを発見することで、重要な顧客の離反防止や新規顧客へのサービスの追加、新しいヒット商品の開発、運用効率の向上、さらには不正やリスクの最小化がしやすくなる。

 組織内にある構造化データや非構造化データといった複数種類のデータを分析することで、それまで予想し得なかったパターンを発見することができる。例えば、「アソシエーションルール」という手法では、大量データに含まれる膨大な組み合わせから意味のあるパターンを抽出する。

 2つ目は予測である。過去のデータから最適なモデルを算出し将来を推測することで、過去の購入情報を基に顧客のランクアップやランクダウンを行ったり、休眠スコアを求めたりすることができる。ダムや飛行機、設備などの故障予測に活用する例もあるという。「過去のデータから保守パーツの将来的な需要を推定し、適正な在庫を維持することでコスト削減が可能になる」(飯島氏)

 予測モデルの一例として、データの分類や階層関係をツリー状に整理する「決定木」(ディシジョンツリー)がある。数学的なアルゴリズムを利用して最もよくデータを整理するルールを発見。ルールを基にした予測が可能になる。

 3つ目はグループの分類だ。例えば、年間にまとまった購入実績のある顧客は、購入の仕方に応じて幾つかのグループに分類できる。似たような顧客グループや商品グループを把握することで、商品開発やマーケティング施策などに役立てることができる。

 分類手法の一例に「クラスタ分析」がある(画面2)。クラスタ分析は、顧客を購入目的が似ているグループに自動的分類(クラスタリング)し、各グループの特徴を提示。グループごとの人数や単価、休眠率、成長性などを把握して、ビジネスの施策立案の参考にする。

画面 画面2:クラスタ分析の例。購買実績が近いグループに自動的に分類し、各グループの特徴を提示する

「Cognos」とは用途ですみ分け

 日本IBMは、SPSSの他にビジネスインテリジェンス(BI)製品群「IBM Cognos」を提供している(参考:「Cognos 10」に見た、ビジネスアナリティクス(BA)を成長戦略に掲げるIBMの本気度)。一般的なBI製品は、過去から現在までに起きた事象を経営ダッシュボードで可視化したり、スコアカードでリポーティングしたりすることで、最適な重要業績評価指標(KPI)を設定することが主な機能となる。

 一方、SPSS Modelerの統計解析やデータマイニング技術は、既存のデータを基に将来の出来事を予測することに焦点を当てている点で、Cognosとは異なる(図1)。

図 図1:過去のパターンから将来を予測する予測分析のSPSSと、現状・過去を把握するBIのCognosのテリトリーの違い(出典:日本IBMの製品資料)

他社製品に対する特徴:DWHとの組み合わせで大量データ処理を可能に

 SPSS Modelerは、ビッグデータを予測分析に生かす工夫を盛り込む。その代表例が、データウェアハウス(DWH)アプライアンス「IBM Netezza」や「PureData System for Analytics(旧Netezza 1000)」(以下、Netezzaで統一)との組み合わせだ(図2)。Netezzaの処理能力を利用すれば、大量のデータを基にした予測分析の処理時間を短縮できる。

図 図2:SPSS ModelerとNetezzaを組み合わせることでNetezza側にSPSS Modelerの処理を実行させることができる

 NetezzaでSPSS Modelerの処理の一部を実行できることに加え、Netezzaが提供する予測モデルのモデリング機能もSPSS Modelerから実行可能だ。SPSS Modelerは、データ加工やモデリング処理のコマンドをSQLへ変換する「SQL Pushback」機能を持ち、Netezzaに最適化されたクエリを発行できる。飯島氏は、「業務部門が思い立った瞬間から試行錯誤しつつ分析をするなど、人の思考スピードに沿った予測分析が可能になる」と強調する。

導入事例:分析結果を活用しグループ全体の収益拡大に取り組む遠州鉄道

 静岡県西部を中心に鉄道事業を手掛ける遠州鉄道は、SPSS Modelerのユーザー企業の1社だ。グループで百貨店やスーパーマーケットなども展開する同社は、グループ共通のポイントカード「えんてつカード」から得られる年間3000万件の会員データを分析し、データ分析に基づく課題発見や具体的なマーケティング施策立案に活用するためにSPSS Modelerを導入した。

 ユニーク訪問者数約35万人、月間のページ閲覧数2億ページを超えるWebサイトを運営する日本航空も、SPSS Modelerを利用する。Webサイト訪問者の行動を分析してサービス拡充や販売強化を実現すべく、SPSS Modelerを導入した。予測モデルを基にしたレコメンデーションの仕組みをWebサイトに実装し、顧客の個別ニーズに合わせて最適な情報を提供する狙いだ。

 その他、製造業の品質管理部門が製造ロットごとの歩留まりを分析したり、エンドユーザーからの応対履歴を分析したりするのにSPSS Modelerを活用しているケースもあるという。

製品価格

 SPSS Modelerの標準価格は285万円程度から。

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