ビジネスインテリジェンス(BI)に対するニーズの拡大に呼応し、BI製品の多様化が進む。こうした動きが、中堅・中小企業のデータ活用に関する課題をどう解決するかを示す。
さまざまなシステムに蓄積されたデータを抽出、集計/分析し、企業の意思決定に生かそうとする取り組みである「ビジネスインテリジェンス(BI)」。近年になって目立ってきた「ビッグデータ」活用の動きも、BIの発展型の1つといえるだろう。大量のデータを従来よりも迅速かつ緻密に集計/分析することにより、これまで得ることが難しかった深い知見(コンシューマーの細かい嗜好や限られた地域内での気候変動など)を捉えることができる。
もちろん、ビッグデータのように大掛かりな仕組みを必要とする中堅・中小企業は非常に少ない。だが「データを基に適切な意思決定をする」というBIの基本は、規模に関係なく、全ての企業にとって重要であるはずだ。そこで本連載では、BIの最新動向を整理しながら、中堅・中小企業がBI活用に取り組む際の勘所について探っていく。
第1回は、BIが担う新たな役割を整理し、それを受けて多様化するBIの現状と、中堅・中小企業におけるメリットについて取り上げる。
BIという言葉が広く普及し始めたころ、その主な目的は「ERPをはじめとする業務システムのデータを集計/分析し、経営層の意思決定に役立てる」ということだった。業績を測るためのさまざまな指標(KPI:Key Performance Indicator)を定め、経営層はそれらがどう推移したかを「ダッシュボード」や「ビジネスコクピット」と呼ばれる画面を操作して把握する、といった活用例が該当する。
同じ時期には、大手ベンダーによるBI専業ベンダーの買収も相次いだ。独SAPの米Business Objects買収、米IBMの米Cognos買収、米Oracleの米Hyperion Solutions買収などが、その代表例だ。こうして、ERPをはじめとする業務システムとBIは、緊密に連携するようになっていった。
そして現在、多様化するコンシューマーの嗜好や激しく変化する経済環境に対応するため、より迅速な意思決定が企業に求められている。その結果、BIに対しても過去のデータを基にした判断だけでなく、「今、まさに起きていること」(現在)を把握してその場で対策を講じたり、「今後想定される動き」(未来)を予測して計画を立てるといった役割が求められるようになってきている(図1)。
このように、BIに求められる役割は、昨今大きく広がってきている。こうした動きを受けて、BI関連の用語にも「○○BI」といったさまざまな呼称が増えてきた。今後、BI市場を理解しておくために、こうした派生用語を整理しておくことにしよう。
BIが先の図で示した「今後の役割」を果たすためには、集計や分析の時間を大幅に短縮する必要がある。結果を出すまでに時間がかかっていたのでは、その場で対策を講じたり、未来予測を立てている間に、その「未来」がやってきてしまうからだ。このように、集計/分析に要する時間を大幅に短縮する取り組みや、それを実現する製品/サービスを「リアルタイムBI」という。
従来のBIは、定められたKPIに従ってデータを抽出し、然るべきグラフやチャートの形で経営層に提示するのが一般的だった。だが企業がさまざまな変化に対して迅速に対応するには、経営層だけでなく、現場の従業員もデータに基づいた判断を下していく必要がある。そのためには、一般社員が各要件に基づいて自らデータを抽出し、グラフやチャートに表示できなければならない。こうした取り組みやそれを実現する製品/サービスを「セルフサービスBI」という。
企業が素早く動くためには、営業部門や購買部門、製造部門といった各部門がデータに基づいた判断をし、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPCDAサイクルを素早く回していく体制が必要だ。つまり、現場単位でリアルタイムBIとセルフサービスBIを実践していくわけである。こうした取り組みやそれを実現する製品/サービスを「オペレーショナルBI」という(参考:「WebFOCUS」が目指す理想のBI「カスタマーダイレクトBI」とは)。
このように、昨今登場してきたBI関連の派生用語は、いずれも先に述べたBIの役割の広がりに起因したものであることが分かるだろう。
これまでの中堅・中小企業におけるBI活用は、「ERPにおける集計/分析ツール」としての位置付けが強かった。だがBIが果たすべき新しい役割が出てきたことを受け、中堅・中小企業においても新たなBI活用ニーズが生まれつつある。
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