数学スキルがあればデータ分析は可能だ――。その考えには一理あるが、それでもスムーズなデータ活用には他の専門知識が不可欠だ。その理由と必要な知識を説明する。
企業がデータ活用を本格化させる場合、IT部門は一般的に、線形代数学、統計学、微積分、場合によっては推計幾何学などの数学スキルを高める必要がある。これらは「データサイエンティスト」が持つ主要なスキルだ。ただし数学スキルがあればデータ活用ができるといった単純な話ではない。
機械学習(ML)をはじめとする人工知能(AI)技術が普及する中、データサイエンティスト以外の従業員でもデータ分析業務を進められる手段が充実し始めている。AI技術を活用してデータ分析を実施する手法「拡張分析」はその代表例だ。とはいえAI技術が機能する仕組みを理解していたり、ITインフラの専門知識があってシステムの性質を理解していたりする人材の重要性は変わらない。
例えば企業がデータ活用を考えたときに、ITシステムをスケールアウトさせる手段は幾つかある。利用量によって費用が決まる、IaaS(Infrastructure as a Service)をはじめとする従量課金型ITインフラサービスなどだ。こうした手段を取り入れるとき、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)のようにストレージ、サーバ、ネットワークの各種リソースを機動的に拡縮できるかどうかを確認することを忘れてはならない。
データ活用を推進する場合、ビジネス分野の専門知識も必要だ。例えば「カスタマージャーニーの把握」というビジネス課題の解決に、AI技術をどのように使うかを考える場面がある。こうした場合、IT部門は製品やサービス、その販売方法を理解する事業部門と協働する必要がある。
企業によっては、AI技術に特化した専門集団(CoE:センターオブエクセレンス)を設けてこれを解決する場合もある。この場合はCoEが組織横断的にAI技術活用のベストプラクティスを集約し、事業部門の業務や基幹業務でのAI技術の活用をCoEのメンバーが支援する。
第3回は、企業がデータ活用を推進する際にIT部門が担う重要な役割を紹介する。
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