テレワークに懐疑的な意見を持つ人は少なからずいる。こうした意見が、もし偏った心理傾向によってもたらされているとすれば、テレワークを認めるかどうかといった単純な話では済まなくなる。どういうことなのか。
テレワーカーやハイブリッドワーカー(オフィスワークとテレワークを組み合わせて働く従業員)は「昇進や昇給を見送られるリスクがある」と、コンサルティング会社Global Workplace Analyticsのプレジデント、ケート・リスター氏は語る。背景にあるのは「近接性バイアス」だ。
近接性バイアスは、物理的に距離が近くて対面の機会が頻繁にあったり、対面の時間が長かったりする相手に好意を持ちやすく、優遇してしまう心理傾向を指す。「近接性バイアスは強い」とリスター氏は強調する。管理職は概して、毎日顔を合わせるオフィスワーカーの方がテレワーカーよりも生産性が高いと考えがちだと同氏は説明。「テレワーカーは辞めやすい傾向もある」とも指摘する。
リスター氏によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の前後でテレワークを希望する人の割合は変わっていない。ただし従業員がテレワークの実施に関する主導権を握るようになったという。テレワークとオフィスワークを組み合わせた勤務形態「ハイブリッドワーク」や、完全テレワークの導入が進んだ背景に「労働者や専門人材の不足がある」と同氏は考えている。
米国の労働市場は売り手市場だ。米国労働省が2022年6月1日(米国時間、以下同じ)に発表した2022年4月の雇用動態調査(JOLTS)によると、非農業部門の求人件数は1140万件だった。2022年3月の求人件数からは減少したが、レイオフ(一時解雇)や解雇件数は低い水準となり、労働市場が依然として逼迫(ひっぱく)していることが分かる。
労働省の2022年6月3日の発表によると、2022年5月の非農業部門雇用者数は前月から39万人増加した。だが金利上昇、ロシアによるウクライナ侵略、エネルギーコストの上昇、インフレを背景に、景気後退の懸念が浮上している。「景気後退期に入れば、経営者優位の力関係に戻ると考えられる」とリスター氏は指摘する。そうなれば、テレワークやハイブリッドワークに懐疑的な経営者は、従業員のオフィスへの出社を義務付けるようになる可能性がある。
「経営者は安易にテレワークを中止すべきではない」との声がある。第3回はその理由を紹介する。
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