TeslaのCEOイーロン・マスク氏は従業員に対して、今後はテレワークを認めない方針を示した。自社Webサイトのキャリアページに掲載していたテレワーク求人も現在はなくなっている。決断の影響は。
電気自動車(EV)メーカーのTesla(テスラ)は、CEOのイーロン・マスク氏が2022年5月末にテレワーク終了を宣言するまで、自社Webサイトのキャリアページに数十件のテレワーク求人を掲載していた。だが2022年6月1日(米国時間、以下同じ)には、テレワーク求人は検索しても見つからなくなった。これらの求人の一部は、勤務地がテキサス州オースティン(Teslaの本社所在地)に変更された。
マスク氏は従業員に対して、オフィスに戻るよう要求している。リークされた同氏の社内メールの件名には「テレワークはもはや受け入れられない」という記載があった。メールの本文には、次の一文があった。「テレワークを希望する人は、最低でも(あくまで「最低」だ)週40時間、オフィスにいるか、あるいはTeslaを去るかしなければならない」
このメールは、短文投稿サイト「Twitter」にツイート(投稿)されていた。マスク氏は2022年5月31日、このツイートを引用。仕事のためにオフィスに出社することを時代遅れだと考える人に対して、「そうした考えの人は、どこかで働くふりでもしていればよい」といった趣旨のツイートをした。リークされたメールが本物だと認めた格好だ。同氏はツイートで、テレワークを許可する例外を設けることを表明した。ただし、こうした例外については直接調査して承認すると述べている。
テレワーク終了の決定は、Teslaにとって大きな代償となる可能性がある。アナリストなどの専門家は「スキルの高い労働者は、テレワークを選択できる仕事を『待遇が良い』と感じる」という見方を示す。そのためテレワークを廃止すると「従業員の定着と採用に影響が出る可能性がある」とみる。
マスク氏のテレワーク批判は、Teslaの人事部門にとって寝耳に水だった可能性がある。2022年6月1日の朝、Teslaの米国Webサイトのキャリアページには、勤務地の分類が「Remote」となっていたテレワーク求人が数十件掲載されていた。これらの求人の職種区分はエンジニアリング、採用、プロジェクト管理、不動産、プログラム管理などだった。出社とテレワークを組み合わせた勤務を指定する求人もあった。
Teslaのテレワーク求人は、主には頻繁な出張を伴うものだった。例えば地域衝突事故担当マネジャーは「必要に応じて、最大60%またはそれ以上の割合を占める出張が可能なこと」が、応募条件として定められていた。
2022年6月2日朝の時点では、Teslaのキャリアページに掲載されていたカナダや欧州の求人には、テレワーク求人が引き続き含まれていた。本稿公開時点では、カナダと欧州のほとんどの国でもテレワーク求人はなくなっている。
米国TechTargetはTeslaにコメントを求めたが、回答は得られなかった。一般的に、個々の求人情報は複数人を採用するために掲載される場合がある。そのためTeslaの米国でのテレワーク求人募集数は、少なくともテレワーク廃止宣言の前までは、掲載件数より多かった可能性がある。
後編はテレワークの廃止に伴う影響について、人材採用の専門家の見解を紹介する。
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