スマートグリッド実現の鍵は無線通信、「IEEE 802.11s」が示す可能性AMI(高度メーターインフラ)を活用(1/2 ページ)

送電網のスマートグリッド化を実現するにはネットワークが鍵となる。注目されるのが、IEEE 802.11sを活用したワイヤレスメッシュネットワークだ。

2018年02月06日 09時00分 公開
[Keith TeichmannTechTarget]

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IEEE 802.11ac | Wi-Fi


 人類の歴史において、インターネットは、通信、教育、経済発達の勢力図に変化をもたらした最も斬新な世界規模の発展の1つだろう。インターネットの普及率は2000年から936%の成長率を遂げているが、全世界の約50%がインターネットにまだ接続されていない現状を考えると、インターネットがその範囲をさらに拡大するチャンスは大いにある。

 1950年代に誕生した初代電子計算機、Googleを始めとする検索エンジンの着実な進歩、Wi-Fiやワイヤレスデバイスの普及など、インターネットは、それを利用する個人、コミュニティー、企業に力を与える形で進化してきた。そして、今なお私たちの生活に関わり続けている。

 スマートグリッド(次世代送電網)機能の変化を後押しする要因は、一般消費者、コミュニティー、企業のIoT(モノのインターネット)への飽くなき注目だ。具体的な変化としては、電気、ガス、水道などのサービスを提供する公益事業が、従来のAMR(自動検針)からAMI(高度メーターインフラ)に移行することが可能になっている。AMIは、すぐに使えるリアルタイムのデータと、システムの可視性を公益事業に提供する。その結果、公益事業は、顧客の関与度合いを高め、消費電力などのエネルギーの使用について情報に基づいた選択を顧客が行って、光熱費を節約したり、ホームオートメーションの最適化を図ったりする手助けができるようになる。このトレンドを踏まえた上で、本当の意味でスマートグリッドのIoTを拡大するために採用すべきテクノロジーは何だろう。

 有線で接続されていた過去の世界から、ワイヤレス化が進んだ未来の世界へと変化している今、本稿では、つながりを拡大して、コネクテッド社会に影響を及ぼすAMIにおける次の大きな変化を掘り下げたい。

IEEE 802.11sベースのワイヤレスネットワークを再検討する

 AMIがグローバルな公益事業に大きなチャンスをもたらすのは明らかだ。AMIによって、公益事業はメーターの検針だけでなく、配管網や送電網の自動化、予測、監視、制御も行えるようになるだろう。だが、IEEE 802.15.4g、Zigbee(6LoWPAN)、BPL(電力線ブロードバンド)などのテクノロジーが、公益事業の足かせとなっている。これらのテクノロジーには、待ち時間やスケーラビリティの制限などの問題があり、低帯域幅という問題が生じる場合もある。

 例えば、現在AMIでは、一般的にZigbee(6LoWPAN)を使用するのが標準となっている。Zigbeeはワイヤレスの制御とアプリケーションの監視に関してデバイスのバッテリーを長持ちさせることに重点を置いている。だが、Zigbeeには課題がある。それは、待ち時間が長く、スケーラビリティが限られ、スループットが低いということだけでなく、最大250kbpsというデータ転送速度が遅いアプリケーションで一般的に使用されてきたという背景を持っている。そのため、Zigbeeを使用するのは、長いバッテリー時間と安全なネットワークが必要なアプリケーションに限られているのが実情だ。これに対して、BPLには、スマートユーティリティーネットワーク、スマートグリッド、スマートメーターに対してZigbeeと比べて幅広い用途がある。ただし、BPLは変圧器を監視できない。そのため、公益事業は、変圧器を軸にしたリアルタイムの診断機能に基づいて行動することが難しくなる。また、BPLの信号は変圧器を通過できない。そのため、BPLの信号が変圧器を通過できるようにして顧客に利益をもたらすには、ジャンパーなどの追加ハードウェアを使用することが条件となる。つまり、資産とシステムを監視する柔軟で総合的なアプローチなしには、システムが真のIoTを提供することはできないのだ。

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