この連載は「いきなりIT部門に転属したら用語が全然分からん!」という担当者を救済するネットワーク入門企画だ。今回は「Wave 2の次」に登場する次世代無線LANについて紹介する。
この2016年7月にWi-Fi Allianceが、無線LAN規格「IEEE 802.11ac」に関する認証プログラム「802.11ac Wave 2」を正式にリリースしたばかりだが、無線LANベンダーはその次に向けて既に走り出しており、一部は実用化している。IEEE 802.11acと時期的にはオーバーラップするタイミングで標準化の作業が進んでいたのが「IEEE 802.11ad」だ。「WiGig」(Wireless Gigabit)という名称で知る関係者やユーザーも多い。
WiGigことIEEE 802.11adの検討は2007年にスタートした。目的は、既存のWi-Fiを超えるデータ伝送速度を、IEEE 802.11acよりも手軽に実現することだ。IEEE 802.11acは最大で6.9Gbps(理論値)の伝送速度を実現できるが、このためには8空間ストリームのMIMOやチャネルボンディング、あるいは256QAM(Quadrature Amplitude:直交振幅変調)といった複雑な技術をフルに利用する必要がある(空間ストリームやチャネルボンディングは連載第5回「無線LAN規格『802.11ac Wave 2』編──MU-MIMOとビームフォーミングを理解する」を参照)。
もっと手軽に、同程度の伝送速度を実現できないかというのがWiGigを開発する最初の動機で、その背景には、映像信号をワイヤレスで飛ばしたいという目的もあった。2007年当時の想定では、解像度1920×1080ピクセル(フルHD)の映像を「IEEE 802.11n」で何とか転送して表示できる程度で、遅延が大きいので映画鑑賞はともかくクライアントPCなどで作業をするには向かない(マウスを操作してからマウスカーソルが動くまでの間に体感できるほどのタイムラグがあるのはストレスになる)といった問題があった。
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