ビッグデータ活用の流れに乗ってDWHへの投資意欲が増している。しかし「データ分析システムを単独で構築するだけでは、ビジネス上の実効性はない」とアナリストは指摘する。
DWH(データウェアハウス)市場が活況を呈している。背景にあるのは、BI(ビジネスインテリジェンス)をはじめとしたデータ分析の手法を、企業の売り上げ拡大と収益改善のために積極活用しようという動きだ(関連記事:「売り上げ拡大のための戦略ツール」としてのBIに求められる条件)。DWHはそのためのデータ基盤として、一般の企業ユーザーにとってこれまでになく重要性を増しているのである。
アイ・ティ・アールが行った調査「IT投資動向調査2012」によれば、多くの企業が自社にとって重要なIT投資として「データ分析基盤の強化」を上位に挙げている。同時にこの調査では、既にデータ分析基盤に対して本格投資を行っている企業の割合は、2011年度時点ではまだ約20%と、それほど高くないことも示している。しかしアイ・ティ・アールでは、この値が2014年度には60.9%にまで上がる可能性があると予想している。同社 リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリストの生熊清司氏は、次のように述べる。
「全社的なDWHやBIの仕組みを構築するには、大企業では何十億円という規模の投資になってしまうこともある。また、基幹系システムのリプレースや法規制対応などは実施期限が決まっているので、どうしてもDWHやBIより投資の優先順位が高くなる。従って、DWHに対する投資が短期間の内に一気に増えることはないだろう。しかし、年々激しさを増す市場競争の中で生き残っていくためには、データ分析分野に投資しなくてはいけないという意識は、多くの企業の間で高まっている。よって、今後3年ほどの間で、徐々に投資額が増えてくると予想している」
また、アプライアンス型のDWH製品をさまざまなベンダーが提供するようになったことも、市場の活性化に一役買っているという。これまでは、大規模なDWHを構築するには極めて複雑なシステムを構成し、かつ運用開始後も定常的にパフォーマンスチューニングを施す必要があった。しかし、今日市場に出回っているアプライアンス製品は、あらかじめハードウェアとソフトウェアがDWH用途に最適化された形で提供されるため、DWH導入のハードルを大幅に低くしてくれる。また、多くの製品がパフォーマンスチューニングや運用の自動化機能の強化に取り組んでおり、運用管理作業も大幅に省力化される。
事実、各社のアプライアンス製品の好調な売れ行きが、市場全体の成長をけん引していると生熊氏は言う。
「IBM NetezzaやOracle Exadataの売れ行きが好調だと聞いている。また、DWHアプライアンスの先駆けであるテラデータも、ライバル製品の登場を受けてラインアップを充実させている。さらには、インメモリデータベースSAP HANAを搭載したアプライアンス製品も出てきている。こうしてアプライアンス製品が増えてくると今後は競争が激しくなり、単にアプライアンスだというだけでは売れなくなってくるだろうが、少なくとも今後数年間はアプライアンスの市場は活況を呈するだろう」
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