BI製品紹介:日本アイ・ビー・エム
「Cognos 10」に見た、ビジネスアナリティクス(BA)を成長戦略に掲げるIBMの本気度
Cognosは最新バージョンのリリースによって、従来のプラットフォームからビジネスアナリティクス(BA)にふさわしい意志決定システムへと進化した。
BAの目的はアクションにつなげる洞察を導くこと
急速なグローバル化や経済構造の転換などに伴い、迅速かつ大胆な経営判断を迫られる現在、日々蓄積し続けるデータを可視化してビジネスの確実性を高めたいと考えるところに、ビジネスインテリジェンス(BI)が求められている理由がある。しかし、単に蓄積したデータを分析し、現状の見える化の鮮度を高めることができても、戦略的に将来の予測を立て、ビジネス施策の実施から効果検証までを把握することは難しい。
IBMのBIブランドであるCognosシリーズは、その課題に真正面から向き合って、最新版となる「IBM Cognos Business Intelligence v10.1」(以下、Cognos 10)を2010年11月にリリース。過去のデータを対象とした集計や可視化といった従来のBIの枠を超え、リアルタイム情報のモニタリング、シナリオモデリング、予算計画、予測分析力の強化などを可能にしたビジネスアナリティクス(BA)へと機能を拡大した。
BI(インテリジェンス)からBA(アナリティクス)へのシフトはBIベンダーのトレンドとなっているが、IBMではアナリティクスを単に「情報を分析すること」と捉えるだけではなく、「ビジネスを把握・掌握すること」と定義している。
日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 ビジネス・アナリティクス事業部 Cognosクライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ 部長 京田雅弘氏は、「ビジネスプロセスを把握・掌握することで、次のビジネスアクションにつなげるための洞察を、できるだけ早く導き出すことがBAの目的です」と語り、それを実現するのがCognos 10だと強調する。
では、それを裏付ける各種の機能について見ていこう。前バージョンから引き継いだ機能もあれば、Cognos 10で新たに加わった機能もある。キーワードは、思考(Think)、連携(Connect)、そして実行(Do)だ。
自由な思考(Think):システムの制約からの解放
従来の一般的なBIは、「あたかもクルマのバックミラーで通り過ぎた風景を見ているに等しい」と表現されることがある。「Cognos 10は、クルマのインパネから時速や車体の状態を把握するように、ビジネスの状態をコントロールするための情報を収集します。それに加えて、ハイパワーなヘッドライトを備えるかのごとく、進むべきビジネスの方向性を可視化することで、過去・現在・将来を立体的に見るBAなのです」というのが京田氏の説明だ。
しかもそれらは別々に機能するのではなく、リポートを見る、ダッシュボードから現状を確認する、予測分析する、といった全ての作業が相互に連携可能なようにデザインされ、次のアクションや改善策を探ることが可能になっているという。
IBM Cognos Business Insight
社内外のあらゆる情報を横断して分析できるWebベースのダッシュボード、ポータル機能だ。参照ユーザーによる画面の自由なカスタマイズや高度な検索機能などにより、個々のビジネスに最適化された情報把握を可能にする。
従来のダッシュボード機能はエンドユーザーにとっては操作が難しく、また機能も限定的で自由度が不足していた。この統合ワークスペースでは、リポーティング、トレンド分析、What-if分析(仮説シナリオによるシミュレーション)、予測分析といった各種分析を一元的に実施できるようになっている。
IBM Cognos Real-time Monitoring(RTM)
必要な情報を最新の状態で表示するビューを搭載し、リアルタイム情報を履歴情報と関連付けて表示する。適切なアラートをリアルタイムで受け取る機能、リアルタイム情報に対して分析を随時実行する機能、トレンド分析を実行してより効果的な意思決定を行う機能などを持つ。
IBM Cognos TM1(TM1)
64ビットインメモリエンジンを採用し、予算編成から業績予測までさまざまな予測型経営を実現するプランニング機能。計画シミュレーション、ワークフロー、What-ifシナリオモデル作成、複数シナリオ比較の影響度分析、オンデマンドモデリング、EUD(エンドユーザー開発)などが可能となっている。
IBM Cognos Statistics
IBM Cognos Statisticsは、IBM SPSS Statisticsエンジンを搭載し、ファクトベースによる統計分析の結果をウィザードによって容易にビジネスリポートに組み込むことができるツール。幅広いビジネスコミュニティーに向けて簡単に配信できるようになっている。
また、Cognos 10では集計関数だけではなく、回帰分析や相関分析などの統計関数が利用でき、それを用いた予測ロジックで指標を導き出すことができる。なお、別製品となるが、データマイニングツールの「IBM SPSS Modeler」(旧製品名:PASW Modeler / Clementine)とも連動し、Cognos 10のプラットフォーム経由で情報の取得や、リポート・洞察の共有が可能だ。
枠を超えた連携(Connect):組織の壁からの解放
ダッシュボードやリポートを見て何かに気付いた場合、誰かにそれを簡単に伝えられたらと思ったことはないだろうか。しかし、会社組織では部門別・プロジェクト別の縦割り組織の壁が存在し、従来のBIはその壁に情報伝達や供給を阻害されることがあった。
Cognos 10では新たにコラボレーション機能を備えることで、ToDoのようなスレッドを立ててそれを時系列で追っていくことが可能になった他、意志決定を行うに当たりその経緯をロギングし、過去のディスカッションやアクションを参照することで説明責任を果たすこともできる。
IBM Cognos Collaboration/IBM Lotus Connections
Cognos 10 のIBM Cognos Collaborationでは、新たにIBM Lotus Connectionsを組み込むことで、コラボレーション機能とソーシャルネットワーキング機能を連携。ビジネス状況の意思決定プロセスで発生するアイデアや知識のリアルタイムな共有を可能にした。
コメントを挿入する機能や、ディスカッションや会議招集するコミュニティー機能、他のメンバーと共同作業する際の進捗管理を行うアクティビティ管理機能、ファイル共有やWiki機能を用いた情報共有機能などを備える。
いつでも・どこでも・すぐに実行(Do):時間や場所の制約からの解放
Cognos 10ではモバイル対応を強化した。また、出先でネットワークに接続していないとリポートを見ることができない不便な状態を改善するため、オフライン環境でのリポーティングコンテンツにも対応させている。
IBM Cognos Active Report
ネットワーク接続していない環境でも参照できるMHTMLファイル形式の対話型リポートを生成できる。簡単な分析機能を利用してリポートのバースト機能やスケジュール機能、電子メールへの添付などポータブルなBAを実現する。既存のリポートやダッシュボードをそのまま変換することも可能だ。
「IBM Cognos Mobile」
iPhone、iPad、BlackBerry、Symbian、Windows Mobileなどのモバイル環境から情報取得を可能にするリッチクライアント環境。モバイル向けにBIをカスタマイズすることなく、ユーザーがスマートフォンなどから安全にリポートやダッシュボード、評価指標、分析結果などの情報を確認することができる、コストパフォーマンスに優れたツールだ。
業界向けに特化した19のソリューションを用意
日本アイ・ビー・エムでは、2010年10月に「ビジネス・アナリティクス事業部」を新設した。ワールドワイドのIBMにとって「アナリティクス」は、交通や環境、エネルギー、医療といった地球規模の課題を、地球がよりスマートになることで解決するというコーポレートビジョン「Smarter Planet」や、「クラウドコンピューティングと次世代データセンター」などと並ぶ成長戦略の1つとされている。
また、IBMは、膨大なデータを分析することで、経営の意思決定をする上での確実性・予見性を提示してビジネス最適化を支援するBAO(Business Analytics and Optimization)事業を展開している。BAOは、コンサルティング、システム構築、ソフトウェア、ハードウェア、リサーチの高度化された分析手法などを統合した形で、IBMの総合力を結集して提供される。これらを推進する機動力の1つが、2006年以降CognosやSPSSなど総額120億ドルを投じて行ってきた企業買収だ。BAOではこれらのハードウェアとソフトウェアを最適化した各種オファリング(サービスセット)を開発し、業種別ソリューションとして業種特化のナレッジを融合したアセットとして提供する。IBMのアナリティクス戦略を支えるのがBAOであり、それを形作る重要な鍵となるのがソフトウェアツールといえる。
| 業種・業務 | ソリューション |
|---|---|
| 製造業向け | グループ経営管理 |
| PSI見える化 | |
| 需給調整シミュレーション | |
| 原価管理 | |
| 流通・小売業向け | 店舗管理 |
| MD商品計画 | |
| 金融業向け | 統合リスク管理 |
| 支店別収益管理 | |
| 電力・ガス業界向け | 配電設備管理 |
| 原子力設備管理 | |
| 製薬業向け | 治験計画 |
| 製薬MR向け営業支援 | |
| 病院向け | 病院経営管理 |
| クロスインダストリー | 予算編成・統制 |
| 製品収益分析 | |
| イベントベースドマーケティング(EBM) | |
| ワークフォースマネジメント | |
| コンタクトセンターインテリジェンス | |
| IFRSソリューション |
プラットフォームから意志決定システムへ
「これからのBAは、ビジネス状況の変化に応じて分析・予測を作り変えることを前提にしなければなりません」と述べるのは、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 マーケティング&ストラテジー BI&PMマーケティング マネージャーの高澤正道氏だ。仮にBIが複数のツールで構成されるスイートであったならば、データ接続や連携に大きな負荷が掛かり、硬直化した使いづらいツールになるという。
「Cognosの場合は、Cognos 8の時代から各機能のメタデータの統一を実現してプラットフォーム化し、さらにCognos 10で各機能が業務プロセスに基づき連携する意志決定システムへと進化しています」(高澤氏)
BAの目的であるビジネスの把握・掌握とは、事実をとことん突き詰めていくことであるが、翻れば分析のためのデータ抽出や加工、集計処理などは当然複雑な作業となる。そのため、システム部門や専門家の手に委ねざるを得ず、バックオフィス化してしまう可能性もある。しかし、統合ワークスペースやRTM、TM1、IBM Cognos Statisticsなどがシームレスに連携するCognos 10なら、専門家に頼らずにちょっとした予測や分析、リポート作成が可能になる。セルフサービスBIを真に実現する有力なツールの1つといえるだろう。
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