DeepSeekが壊した常識は「最新GPUは使わない」だけじゃなかった：DeepSeekショックがもたらす影響【後編】

AIモデルの開発には、膨大な計算リソースとそれに伴う電力消費が欠かせないというのが常識だった。低コストで省エネルギー型のAIモデル「DeepSeek」が登場したことで、その常識は揺らぎつつある。

[Cliff Saran，TechTarget]

　2025年1月、中国のスタートアップDeepSeekが高度な回答精度を誇るAI（人工知能）モデル「DeepSeek-R1」を発表した。その開発費は600万ドルに満たなかったと報じられており、異例の低コストでの開発が注目を集めている。ただしDeepSeekの登場は、コストに限らずAI開発に関するさまざまな常識を変える可能性がある。

「DeepSeek」登場で“AIの常識”はどう変わるのか？

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　データサイエンスベンダーDomino Data LabのAI戦略責任者を務めるキエル・カールソン氏は、「DeepSeekは最新かつ高額なハードウェアを使わずに最先端のAIモデルを開発したことで、計算能力を戦略と技術が超え得ることを実証した」と語る。

　DeepSeekの成果はそれだけではない。AI市場で先行してきたベンダーの弱みを浮き彫りにした上、オープンソースであることが平等な競争をもたらし得ることを示した。新興企業が短期間のうちに大手ベンダーと肩を並べ、時には追い越すことさえ可能であることも証明した。

　DeepSeekの台頭によって、中国企業がシリコンバレー発のAIモデルに対抗できる実力を持っていることが明らかになった。それと同時に、AI開発のスピードが日々加速しており、その結果として開発にかかるコストや工数が引き下がっていることが浮き彫りになった。

　実際のところ、DeepSeekが廉価版の半導体製品で高性能なAIモデルを開発し、それを競争力のある価格で提供できているという事実が、AI技術に対する組織の考え方を根本的に変えつつある。つまり、AI開発において最新GPU（グラフィックス処理装置）への巨額投資は必ずしも必要ない。ひいては、投資コストをエンドユーザーに転嫁する必要はないということだ。

　従来、AI技術の発展は「際限のない電力消費」と結び付けられてきた。それがAI技術活用の障壁になっていた可能性も考えられるが、DeepSeekのような省エネルギー型のAIモデルが登場することで、AIモデルを使う企業や産業は増えると予測される。それは結果的に、エネルギー需要を持続的に増大させる可能性がある。

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