AIや量子コンピュータといった技術は、生活や産業を大きく変える可能性を秘めている。しかし、それに伴うリスクも無視できない。何に注意すべきなのか。
AI(人工知能)技術や量子コンピューティングといった新興技術が目覚ましく進化する一方で、こうした技術の進化が新たなリスクを生んでいる。何に注意すべきなのか。本稿は、2025年のIT市場におけるトレンド10選のうち、3つを紹介する。
「2025年、アジア太平洋(APAC)地域における企業の約半数が、AI技術への投資を増額する計画だ」。こう話すのは、セキュリティベンダーAkamai TechnologiesでAPAC地域セキリティストラテジー部門のディレクターを務めるルーベン・コー氏だ。
一方で、AI技術の普及に伴い、セキュリティリスクが無視できない問題となっている。
企業が取り組むべきリスク対策は大きく2つある。1つ目は、自社で扱うAIシステムの脆弱(ぜいじゃく)性に対策を講じること。2つ目は、AI技術を悪用したサイバー攻撃を防御することだ。攻撃者はAI技術を悪用して、従来の方法では検出しづらく、回避が難しい高度な攻撃手法を開発している。企業はそのような進化し続ける脅威に立ち向かうためのセキュリティ対策を強化する必要があるという。
大規模言語モデル(LLM)も、今後その脆弱性が露呈することで、厳しい現実に直面すると予測されている。攻撃者が悪意のあるプロンプト(生成AIへの指示)を入力してデータを盗む「プロンプトインジェクション」などの脆弱性が既に明らかになっており、今後その頻度や深刻さは増すとコー氏は考える。
「LLMの脆弱性が明らかになるにつれて、企業はそのメリットと、潜在的なセキュリティリスクをてんびんにかけ、より慎重にAI導入を検討するようになるだろう」とコー氏は話す。
量子コンピューティングは、量子力学を用いて複雑なデータ処理を実施する技術だ。この技術が実用化すれば、現行の暗号化技術が破られてしまう恐れがある。
「データ盗難を防ぎ、重要なシステムを保護するためには、新たなセキュリティ標準を迅速に採用すべきだ」。こう警告するのは、セキュリティベンダーPalo Alto NetworksでAPACプレジデントを務めるサイモン・グリーン氏だ。
現時点で、量子コンピューティングを用いたサイバー攻撃は実現していない。しかし、国家の支援を受けた攻撃者が暗号化された機密データを収集・蓄積し、量子コンピュータが実用化されてから解読に着手する「Harvest now, decrypt later」(今収集して後で解読する)と呼ばれる攻撃が懸念されている。
量子コンピューティングがセキュリティに与える影響は深刻であり、政府機関および民間企業の機密情報の漏えい、重要インフラの弱体化、金融取引のセキュリティ崩壊などにつながる恐れがある。
こうした脅威に対抗するため、グリーン氏は量子耐性を備えた暗号技術の採用を推奨している。
米国立標準技術研究所(NIST)は、量子コンピュータ時代に対応する新しい暗号技術「ポスト量子暗号」(Post-Quantum Cryptography)の最終標準を発表しており、企業は移行を進める必要がある。
安全な通信を確保する手段として、量子力学を応用した暗号化技術「量子鍵配送」(Quantum Key Distribution:QKD)が有力な選択肢となる。
これらの対策を導入することで、量子コンピューティングのリスクに先手を打ち、重要な情報資産を守る体制を構築できる。
AI技術や量子コンピューティングを扱う場合、膨大な演算能力とストレージ容量が必要になる。計算処理で生じる熱により、冷却システムの負荷は増大し、データセンター全体のエネルギー消費量が増大する。
「データセンターの容量が限界に近づく中で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速はさらなる課題をもたらす」。こう指摘するのは、クラウドベンダーOVHcloudのAPAC地域バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるテリー・マイオーロ氏だ。
こうした課題に対する解消策の一つとして、水冷技術の導入が関心を集めている。従来の空冷技術に代わり、水冷技術を採用することで、水や電力の消費量を大幅に削減し、環境負荷を軽減できる。タイでは既に水冷技術を活用したデータセンターの運用が進められており、ベトナムでも今後数年以内に同様の取り組みが計画されている。
次回は、職場での働き方や、開発現場の在り方といった視点からITトレンドを紹介する。
米国Informa TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
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