「Windows 10」で“冷戦”終了、VMwareとMicrosoftの本当の仲は?:VMworld 2015で明らかに
米VMwareは、Windows 10アプリケーションの新しい配信・管理ソリューションのテクノロジープレビューを披露した。このソリューションでは同社の「AirWatch」と「App Volumes」が使われる。
米VMwareと米Microsoftは、「Windows 10」アプリケーションの企業利用を促進する新プロジェクトでついに手を組んだ。だがIT担当者がその成果を利用できるのは、まだ先のようだ。
両社は仮想化分野で長年のライバル関係にあったが、モバイル端末やPCでのWindows 10アプリケーションの展開と管理を容易にするエンドユーザーコンピューティング(EUC)ソリューション「Project A2」(プロジェクトエースクエア)の提供に向けて提携した。2015年9月1日(現地時間)、米国で開催されたVMwareの年次カンファレンス「VMworld 2015」でテクノロジープレビューが披露された。
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VMwareのEUC担当ゼネラルマネジャーを務めるサンジェイ・プーネン氏がVMworld 2015の2日目に行った基調講演では、MicrosoftのWindowsセキュリティ担当役員のジム・アルコブ氏もゲストとして登壇した。プーネン氏は「レーガンとゴルバチョフの初顔合わせのような瞬間だ」と、何度も首脳会談を行い冷戦の終結に貢献した米国と旧ソ連の指導者の名を引き合いに出した。
Project A2の“A2”とは、エンタープライズモビリティ管理(EMM)プラットフォーム「AirWatch」とアプリケーション配信技術「App Volumes」を表す。App Volumesの技術を使って仮想化されたアプリケーションをWindows 10 PCに配信・適用し、AirWatchを使ってこれらのアプリケーションを管理・更新する仕組みだ。PCとモバイル端末で同じように管理することが可能となる。
AirWatchとApp Volumesは、いずれもVMwareがこの2年間に企業買収で獲得した技術であり、これらを組み合わせることは、同社が進める製品ポートフォリオの強化において重要なステップだと、米調査会社GartnerのEUCリサーチディレクター、マーク・ロックウッド氏は語る。
「VMwareには、これらの製品を使ってアプリケーションを独自の方法で配信するというビジョンがあることが見えてきた」(ロックウッド氏)
VMwareの広報担当者は、Project A2の具体的なリリース時期は明らかにせず、この技術はまだ開発段階にあると述べている。
一部のIT担当者にとってProject A2は、デスクトップ管理とモバイル管理を統合する興味深い機会を与えてくれるものだ。コスタリカのあるソフトウェア開発会社は、既にWindows 10へのアップグレードを開始しており、Project A2が入手可能になったら評価しようとしている。
同社のITマネジャーはこう語る。「モバイルかデスクトップかを問わず、全てを1カ所から管理したい。『全てのアプリケーションをモバイル上でもデスクトップ上でも動作させることができるアプリケーションライブラリを持つ』というアイデアが気に入っている」
しかし、誰もがProject A2を楽しみにしているわけではない。VMworld 2015に参加した米南部のある大都市のIT担当者は、Project A2に関してはまだ十分な情報がなく、海のものとも山のものとも分からないと話した。
「App Volumesが人々に受け入れられるかどうかは未知数だ」とこのIT担当者は語り、同氏の勤務先ではまだWindows 7を使っていると付け加えた。また同氏は、VMwareが基調講演でMicrosoftとの取り組みを紹介した後で、「Microsoft System Center Configuration Manager」からアプリケーションを移行するデモを行ったのは興味深いと指摘している。
VMwareとMicrosoftが新たな提携でどれだけ協力し合えるかは、必ずしも明らかではない。例えば、AirWatchがネイティブモバイルOfficeアプリケーションを管理できるようになるのかは不明だ。これまでのところ、これらのアプリケーションは「Microsoft Enterprise Mobility Suite」でしか管理できない。
「サトヤ・ナデラCEOが率いるようになってから、Microsoftはよりオープンになっている傾向が見られる」(ロックウッド氏)
Horizonの新バージョンが登場、Project Enzoがβ段階に
VMwareはProject A2と併せて、EUCに関する他の幾つかの取り組みも発表した。2015年6月に発表された「VMware Identity Manager」は、「VMware Identity Manager Advanced Edition」というスタンドアロン製品として投入される。まずAirWatchの一部として提供されることになっている。VMware Identity Manager Advanced Editionは2015年9月にリリース予定で、1ユーザー当たり年額96ドルでクラウド製品として、または同額でオンプレミス展開用に永続ライセンスが販売される。サービスやサポートの利用には別途料金が掛かる。
またVMwareは、「Horizon 6.2」と「Horizon 6.2 for Linux」も同年9月にリリースする。これらの新バージョンでは、「Skype for Business」と米NVIDIAの最新の「NVIDIA GRID vGPU」のサポートが追加されている。Horizon 6.2の価格は250ドルからで、指定ユーザー単位と同時接続単位の2種類のライセンスモデルが用意されている。
さらに、数カ月前に発表された「Project Enzo」も、2015年秋にβ版が限定公開される。Project Enzoにより、IT部門はクラウドベースのWebポータルで仮想ワークスペースを構築、提供、管理できる。
なお、最近発表されたVMwareのモバイルに関する取り組みの中には、VMworld 2015ではニュースがなかったものもある。VMwareは2015年6月に、米AppleのiOSに対応するアプリケーションの新しい構成テンプレートを2015年にリリースし、企業におけるこれらのモバイルアプリケーションの“シングルタッチ”による展開を可能にする計画を打ち出した。だが、VMworld 2015でVMwareの広報担当者は、このテンプレートのリリース時期や詳細情報を明らかにしなかった。
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