「待合環境を快適にするにはスマホが必須」とアイさくらクリニックが考える理由:将来は遠隔診療への取り組みも視野に
混雑する待合室を少しでも快適に――そう考えて「iPhone」「iPad」などのモバイル端末活用を中心としたIT環境を構築したアイさくらクリニック。どのような観点でシステムを選んだのか院長に聞いた。
お詫びと訂正(2017年4月21日)
「フリーアドレス制の導入」の章について、初出時、「Windows Serverの『移動ユーザープロファイル』という機能を使い」と記載しておりましたが、「Windows Serverの『フォルダリダイレクト』という機能を使い」の誤りでした。お詫びして訂正いたします(TechTargetジャパン編集部)。
アイさくらクリニックは福岡県福岡市の心療内科だ。患者はクリニック近隣の福岡市のみならず、諸島部も含めた九州一円から多数来院する。同クリニックは、予約手続きの簡便化や待合での混雑改善、待合環境の快適性の向上を目指したIT化に取り組んでいる。
導入したシステムは、
- 予約システム
- 無線LANアクセスポイント(来院者向けのインターネット用無線環境を用意)
- IPカメラ(院長が診察室や外出先からスマートフォンで待合の状況を確認可能に)
など、多岐にわたる。そのどれもがスマートフォンの利用をキーにしたシステムだ。ITを活用して業務効率を改善するとともに患者満足度を向上させている。
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スマートフォン予約システム導入により電話問合せ数が大幅減
アイさくらクリニックでは2016年9月に、イーハイブの「すまっぽん!」とメディカルフォレストの「診療予約2015」の2つを組み合わせて、患者がスマートフォンから診察予約ができるシステムを構築した。
すまっぽん!は月額300円で、簡易的なWebアプリ、より厳密にはアプリのようなインタフェースのWebサイトを制作するツールだ。店舗情報や予約サービス、メールや電話など、必要な情報へのリンクをボタンとして並べることができる。同クリニックの場合は、診療予約のための案内ページをすまっぽん!で作成し、分かりやすい申し込みシステムを構築した。
診療予約システムの基盤は診療予約2015が担っている。病院ごとの条件に合わせて予約管理や案内方法などを設定しやすいシステムだ。診療予約2015の初期費用は無料で、メインライセンスは月額税別1万円(60日間無料。61日目から課金)という料金設定となっている。同クリニックは、数社の診療予約システムを検討した上で診療予約2015を採用したという。
導入の成果として、院長の木村昌幹氏は「システム導入前には1日40件あった予約電話件数が、導入1カ月後には30件に、導入2カ月後には20件と、着実に減っていった」と話す。予約電話への対応件数は1カ月当たり約400件減少し、スタッフの電話対応時間を少なくとも約20時間削減できたと同クリニックは見込んでいる。
来院者向けに無線LAN環境を整備
同クリニックは診察予約システムを導入するとともに、来院者の満足度向上の目的での無料無線LAN環境を構築した(図1)。来院者が待合室でスマートフォンを利用できるようにするためだ。無線LAN導入により、患者が待合室でスマートフォンから次回の診察予約をできるようになり、来院者の診察待ち時間の快適性を向上させた。
待合室が混雑している場合に多数のスマートフォンが接続しても安定した通信を維持できるように、同クリニックは業務用の無線LANアクセスポイントを導入した。来院者向けの無線LANはインターネットに直接接続するように設定。業務用のネットワークには医療従事者しかログインできないよう設定しており、無線LANへの接続性とセキュリティを両立させている。スマートフォンの充電サービスも用意しており、来院者が快適に過ごせるように、アナログ面でもきめ細かい配慮をしている。
混雑緩和対策: iPhoneから待合室での来院者の待ち状況を確認
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