中堅・中小企業向けクラウドERPに賭けるSAPジャパンの“本気度”とは:新規参入を強力に支援するパートナー施策(1/2 ページ)
SAPジャパンは中堅・中小企業向け市場における新たなパートナー戦略を打ち出した。同社にとっては、これまでなかなか存在感を示せずにいた領域へのチャレンジとなる。同社が目指すパートナービジネスの姿とは。
SAPは、大手企業向けERP(統合業務)パッケージの世界では知らぬ者がいないほどのベンダーだ。国内市場においても長らく、大手企業向けERPベンダーとして存在感を示してきた。だが競合ベンダーの多い中堅・中小企業向け市場では、なかなか存在感を示せずにいた。
同社もただ手をこまぬいて見ていたわけではない。大手企業向けの新規導入案件が一巡した1990年代頃から、次の収益源として中堅・中小企業向けビジネスのてこ入れを図ってきた。だが残念ながら大手企業向け市場にならぶような、芳しい成果を上げたとは言い難かった。近年ではインメモリデータベース「SAP HANA」という、大手企業向けのキラーシステムを主軸にした新たな成長戦略を打ち出す一方で、「SAP Business One」といった中堅・中小企業向け製品のビジネスでは苦戦していた。
図 導入済みの製品/サービス(いくつでも)および導入済みの製品/サービスのうち最も主要なもの(調査対象:年商50億円以上〜100億円未満:上位8社)。凡例:青(P1-1AS)は「導入済みの製品/サービス」、赤(P1-1BS)は導入済みの製品/サービスのうち最も主要なもの。出典:ノークリサーチ「2016年中堅・中小企業におけるERP活用の実態と今後のニーズに関する調査」リリースより引用
しかし2017年に入り、国内法人のSAPジャパンが中堅・中小企業向け市場における新たなビジネス戦略を打ち出した。SAPジャパンは国内の中堅・中小企業を、年商規模で「250億円以下」と「250億〜1000億円以下」の2つのレイヤーで定義して、それぞれに特化した組織を新設した。それとともに、これまで直販を主としてきた販売モデルにも大幅に手を入れて、特に中堅・中小企業向けにはパートナービジネスの強化に取り組んでいる。
同社が目指すパートナービジネスの姿とは。SAPジャパンのゼネラルビジネス統括本部で統括本部長を務める牛田 勉氏と、同社パートナー営業部部長の川崎嘉久氏に話を聞いた。
注
「ディストリビューター」「リセラー」という言葉の厳密な定義付けはないが、本稿では次のように位置付けている。
- ディストリビューター:幅広いベンダーから仕入れたIT商材を自社在庫として保有し、小売業者やユーザー企業に販売する卸業者。大規模な拡販、流通の役割に軸足を置く事業者
- リセラー:IT商材をベンダー、ディストリビューターなどから仕入れ、ユーザー企業に販売する、大規模な流通経路は持たない事業者。仕入れた商材をそのまま販売するのではなく、他のシステムと組み合わせたり機能を追加したりして付加価値を高めて販売するリセラーはVAR(付加価値再販業者)という
併せて読みたいお薦め記事
これからのクラウドビジネス戦略
- 600以上のアプリと共通基盤でクラウドへの移行を支援する日本オラクルが目指すもの
- IBMのクラウド戦略、開発リソースのエコシステムでSIパートナーの“窮地”を救えるか
- 直販ビジネスモデルからの大転換を果たした、デルのパートナー事業戦略
クラウドERPの最新事情
- 世界を攻める中堅・中小企業の経営に、クラウド型ERPが“効果あり”な理由を探る
- ファーストリテイリングが導入を決めた SaaS型人事・財務アプリ「Workday」の強みとは
- 第3の選択肢「ERP on パブリッククラウド」、その可能性を聞いた
中堅・中小企業向け市場への新たなチャレンジ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.