クラウドファースト時代、プライベートクラウドへの投資はいまだ健在:「クラウドアーキテクト」を目指す人々へ(1/2 ページ)
自社のクラウド計画を構成する技術と管理の詳細を具体化しようと、多くのITプロフェッショナルが「Gartner Catalyst Conference」に集った。
最近の企業はデータとアプリケーションをクラウドに移行している。だが、その多くは、ビジネスの成果を明らかにしてガバナンスや統制を確立するクラウド戦略を策定していない。2017年8月、サンディエゴで開催された「Gartner Catalyst Conference」で講演したGartnerのアナリスト、ミンディ・カンシーラ氏はそう語る。
Gartnerの最新調査では、40%の組織が投資優先順位のトップにクラウドを挙げている。同時に、クラウド計画を実行に移すのに必要なスキルがないと答えた組織も42%に上った。
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「誰もが使おうと試み、明らかに既に使われているテクノロジーだが、誰もが思い通りに実装するスキルがないことも分かっている。それがクラウドだ」(カンシーラ氏)
この4日間のイベントの参加者のうち、アナリストや講演者は、クラウドに関する適切なスキル、テクノロジー、考え方を包括するクラウド戦略を形成、実装、前進させる重要性を強調した。これに対して参加したITアーキテクト、システムエンジニア、ソフトウェア開発者は、組織のニーズと機能に特化した問題を解決するために、質問に答え、知識を蓄えていた。
クラウドの未来を創る人々
米カリフォルニア州サウザンドオークスのバイオテクノロジー企業Amgenで主席ソフトウェアエンジニアを務めるジャヤパール・ブームパリー氏は、組織のクラウド感覚を磨くことを目的とする職種「クラウドアーキテクト」に関心を寄せている。クラウドアーキテクトとは、特別な理由がない限り新しい構想には必ずクラウドコンピューティングを採用すべきという「クラウドファースト」戦略を推し進める組織のITリーダーを指す。
Gartnerのアナリスト、カイル・ヒルゲンドルフ氏はクラウドアーキテクトの役割について語り、その主な義務は「組織の賛同を得て、社員がクラウドサービスを体験するよう促し、チャンスと自由を与え、失敗を奨励し、成長思考を育む。そうして、クラウドファーストという流れに多くの人々を少しずつ誘導していくことだ」と話した。
クラウドアーキテクトの役割は多い。かなり新しい職種であることを考えればなおさらだ。だがこのポジションへの求人はここ数年増加傾向にあり、2017年7月時点では777件の募集があったと同氏は述べる。このポジションは、効果があると組織が考えるクラウド戦略の立案に大きな違いをもたらすと予想される。
ヒルゲンドルフ氏はGartnerの調査結果を引用し、組織の39%が既にクラウドアーキテクトを採用しており、そのうち60%がクラウドサービスをフル活用する準備が整っている実感があると話した。逆にいえば、準備が整っていると感じていない組織は33%にすぎない。
Amgenには古くからのエンタープライズアーキテクト集団がおり、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPAA)で定められる規制を調べて、「AWSクラウドに移行できるもの」「できないものとその理由」を判断するために、Amazonのクラウド部門「Amazon Web Services」(AWS)のアーキテクトと協力している。
同社のエンタープライズアーキテクトは、クラウドアーキテクチャの開発など、クラウドアーキテクトの仕事も一部担っている。だがクラウドアーキテクトの肩書を持つメンバーはおらず、全社にわたるクラウド戦略の策定リーダーという役割が付加されているメンバーもいない。それでもブームパリー氏は、いつかはクラウドアーキテクトに任命されるメンバーが出てくると見ている。クラウドアーキテクトは、他のメンバーがクラウドに関して正しい決断を下すことを可能にするからだ。
「クラウドアーキテクトは社内、恐らくエンタープライズアーキテクトの中から生まれるだろう。エンタープライズアーキテクトはあらゆるシステムを熟知しているため、当社に適したツールの種類や戦略を簡単に指示できる」(ブームパリー氏)
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