ITという武器でアナログな食品流通業界に切り込んだベンチャー、八面六臂の「覚悟」:生鮮食品eコマースのIT戦略(前編)
料理人向けに生鮮食品ネット通販サービスを提供する八面六臂。アナログで複雑な商習慣が定着していた食品流通業界を、徹底したIT化という“武器”で切り込んでいった同社の企業努力はどのようなものだったのか。
八面六臂(ろっぴ)はITで生鮮食品流通の在り方を革新したベンチャー企業だ。東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の配送エリア圏内における中小規模の飲食店を対象に生鮮食品を販売している。同社代表取締役社長の松田雅也氏は自社の事業を「仕入れて、売って、運んで、(代金を)回収する。シンプルな物販です」と説明する。漁業者や市場などから食材を直接仕入れ、Webサイトを通じて販売。自前の物流網で顧客の飲食店まで配達し、決済の申し込みもWebサイトでできるようなeコマースの仕組みを構築している。
同社のビジネスモデルの大きな特徴は、少数多品目の食材を取り扱っていることと、物流の仕組みを自社で賄っていることにある。取り扱う食材は水産品から始まり、今では精肉や野菜などへラインアップを広げている。冷凍品も扱うものの、同社が得意とする商品は生鮮食品が中心だ。2007年にエナジーエージェントとして創業し、2011年に八面六臂へと社名を変えてサービス提供を開始して以来、同社は地道に商品開拓を続けており、幅広い食材を扱っている。
生鮮食品は鮮度を維持できる時間が限られており、同じ種類の魚でも毎日値段も大きさも変わるため、扱いが難しい。同じ理由で、生鮮食品に統一的な商品識別番号などを付けようがなく、商品管理のためのデータベース構築は容易ではない。同社はどのようにビジネスを構築し、現状のITシステムを実現したのか。前編となる本稿では、創業からeコマースシステム立ち上げまでの経緯を追い、後編「料理人向けeコマースの八面六臂が考える『ビジネスをばくちにさせないIT活用』とは」では同社eコマースシステムの要――決済と物流のシステム構築について詳述する。
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