生鮮食品eコマースのIT戦略(後編)
料理人向けeコマースの八面六臂が考える「ビジネスをばくちにさせないIT活用」とは(1/2 ページ)
料理人向けに生鮮食品eコマースサイトを運営する八面六臂は、サービスの要を「決済と物流」だと考えている。アナログ作業による非効率要素を根絶するために、徹底したIT化を追求する同社のIT活用戦略を追う。
八面六臂(ろっぴ)は中小規模の飲食店を対象とした生鮮食品eコマースサイトを運営する企業だ。生鮮食品を扱うという点において一般的なeコマースサイトとは業態が異なり、仕入れや物流も自社で手掛ける独自のシステムが同社の強みとなっている。同社代表取締役社長の松田雅也氏は、「創業から数年間で、同時並行に3つくらいのベンチャー企業を作ったようなものでした」と語るほど、同社のビジネスが稼働する仕組みの整備やシステム構築を短期間のうちに推し進めてきた。
ITシステムの導入で徹底した効率化を目指す理由は、ひとえに「良質な食材を適切なスピードで届ける」というサービスの本質を磨くための企業努力だという。「高品質なサービスが八面六臂の確固たる競争力です」と松田氏は語る。八面六臂のITシステムの中でも、松田氏が重視し、近年大きな進歩を遂げた要素が決済と物流である。
前編「ITという武器でアナログな食品流通業界に切り込んだベンチャー、八面六臂の『覚悟』」では、八面六臂の創業からeコマースシステム立ち上げまでの経緯を紹介した。後編となる本稿では、同社eコマースシステムの要といえる決済と物流のシステム構築について詳述する。
ラクーンの決済サービス「Paid」を導入
八面六臂(リンク先:公式Webサイト)のサービス立ち上げ当初、システム構築よりもビジネスの仕組みを整えていくことに注力した松田氏は「生鮮食品流通についての経験と理解が深まるうちに、システム化すべき要点が明確になってきました」と話す。決済と物流のシステム化が重要だと気付いたのはここ数年のことだという。松田氏は「当社のビジネスを一言で表せば『物販』です。物販には、決済と物流の問題が必ず付きまといます」と強調する。
例えば、消費者が「Amazon.co.jp」や「楽天市場」などのeコマースサイトを通じて買い物をする時は、決済はクレジットカード、物流は宅配便を選ぶケースが一般的だろう。しかし飲食店が業務用食品をeコマースで購入するケースでは、必ずしも同じようにはいかない。
まずは決済について整理してみよう。国内では一般的に、飲食店が業務上必要な食材を購入(仕入れ)するときにクレジットカードを利用する場面はほとんどない。通常は、食材を購入した卸売業者が発行する請求書を受け取り、飲食店は期日までに銀行振り込みで支払いをするものだ。信販会社を経由して支払う方法もあるものの、審査に数週間かかる場合がほとんどで、すぐに利用開始はできない。この商習慣が業界内では一般的だとしても、B2C(消費者向け取引)のeコマースサイトと比較すれば不便だ。「Webサイトを見た当日にすぐ購入できる仕組みを作りたかった」と松田氏は話す。
そこで八面六臂は決済システムとして、ラクーンの「Paid」を導入した。Paidは法人や個人事業主を対象とした後払いの決済サービスだ。八面六臂の顧客に当たる飲食店は、初めての取引からPaidを利用できる。八面六臂からの購入実績に応じてPaidが請求書を発行し、飲食店は期日までに銀行振り込みをするか、指定口座からの引き落としで支払うことができる。
八面六臂はPaidを活用することで、八面六臂を利用しようとする顧客の心理的ハードルを下げ、利便性を高めている。同社にとっては、決済業務をラクーンに委託できるため、サービス運営上の労力を大きく削減できたという。オンライン決済の仕組みを実現したことが、労働時間など人的コスト削減に寄与している。
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