GDPRが定める「データ侵害通知義務」を順守するメリットに目を向けよ:誰しも罰金は御免被りたい
2018年5月25日に施行となる「一般データ保護規則」(GDPR)の要件に対応するため、1年以上前から水面下で準備を進めていた大手企業もあるが、それは一部にすぎないようだ。残る時間は少ない。
米国企業は、欧州連合(EU)における「一般データ保護規則」(GDPR)の準備に慌ただしい。だが、2018年5月25日の発効日に変更の実装が間に合うかどうかは疑問だとセキュリティの専門家は語る。GDPRではデータ侵害の発見後72時間以内に関係機関に報告するという要件が定められているが、それに適切に従うためのツールやプロセスを企業が用意しているかどうかは明らかではない。
「データ侵害の発見後72時間という期限は非常に短いと思う」と話すのは、コンサルティング企業Echelon OneのCEOボブ・ウエスト氏だ。「当社は複数の銀行からGDPRに関する相談を受けているが、その多くが後手に回っている。銀行でさえそうなのだから、他の企業は推して知るべしだ」
72時間以内の通知義務をセキュリティの専門家が懸念している理由は、米国にはデータ侵害通知について国が定める規則がないためだ。現存する48の州法での通知期限は一般的に30〜45日になっている。GDPRに違反した場合の制裁や罰金は、最大で全世界における年間売上高の4%、または2千万ユーロになる可能性があり、企業はこれを警戒している。
GDPRは、1995年制定の「EUデータ保護指令」を刷新するものだ。GDPRのデータ侵害通知義務は、2016年4月にGDPRが採択されて以来、最高情報セキュリティ責任者(CISO)の注目を喚起している。これによりデータのインベントリ、定義済みのリスク管理プロセス、データ保護機関への通知義務に高いハードルが課されるためだ。
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GDPRについてもっと詳しく
「データ侵害の通知は非常に大掛かりな作業で、組織の全従業員の力を必要とする」と話すのは、Forcepointの副CISOニール・サッカー氏だ。同氏は、2017年4月公開の動画「Main GDPR Challenges for CISOs」(GDPRがCISOに課す主な課題)で次のように語っている。「CISOはデータ侵害とデータ侵害通知義務を細部にわたって熟知しておく必要がある。そして理解を企業全体に広め、誰もがセキュリティインシデントに対応できるよう準備しておかなければならない」
GDPRは、EU圏内でビジネスをしていて、個人を特定できる情報をEU市民から収集する全ての企業に適用される。対象はグローバルな大企業だけではない。従業員が250人以上の中小企業もGDPRの要件を満たす必要がある。ただし「データ処理がデータ主体の権利と自由にリスクをもたらす可能性が低い場合、データ処理の実行が定期的である場合、またはデータ処理が刑事上の有罪判決と刑事犯罪に関連する特殊な種類のデータを含んでいない場合」中小企業は適用対象外となる。
世界各国で事業を展開する銀行にコメントを求めたが、大多数が回答を拒否した。
そんな中インタビューに応じてくれた米国のある大手銀行(匿名希望)は、GDPRへの準備を約1年前から続けているという。同行は、各部門の幹部レベルの人材から成るガバナンスチームを立ち上げた。
GDPRのデータ侵害通知義務について尋ねたところ、同行の広報担当者は不安視していないと答えた。この担当者によると、同行は金融機関として規制機関に通知する経験を多く積んでおり、対応するためのインフラも既に整っているという。これは銀行業界が2007〜2008年の金融危機をきっかけとして厳しく規制されるようになったのが一因だ。
企業の現状
国際銀行はリソース数が他の企業に比べて多いのが一般的だ。そのため、GDPRの規制の大半と72時間以内の通知義務に従うための人材やプロセスがそろっている可能性は高い。
だが、それが標準ではない。2017年秋にPricewaterhouseCoopers(PwC)が実施した調査では、調査対象企業のうち36%は評価プロセスを最近開始したばかりだと回答し、GDPRへの準備を始めたばかりということが浮き彫りになった。こうした企業の多くは、2018年5月の発効後でもGDPRを順守できる可能性がないというのが現状だ。
PwCによる活動「National Data Protection & Privacy Practice」のパートナーであるキャロライン・ホルコム氏は、EUがいかに本気であるかをCISOは理解しなくてはならないという。
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